自転車事故と高額賠償
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多発しています!自転車関連事故
環境にやさしい乗り物として自転車通勤が注目されるなど、近年自転車の存在感が増しています。しかし、それと同時に自転車が関わる交通事故が多発しているのも事実です。
西尾 公伸
弁護士法人法律事務所オーセンス
日本交通法学会所属 弁護士
西尾 公伸
自転車関連事故の相手当事者別交通事故件数の推移(各年12月末)自転車関連事故の相手当事者別交通事故件数の推移(各年12月末)

数字で見ますと、平成25年の自転車関連事故の件数は、12万1040件で、これは交通事故全体の約2割と高い割合を占めています。
この10年の推移をみると、自転車関連事故が、交通事故全体に占める割合は約2割であまり変わっておりません。しかし、相手当事者別にみると、自動車と自転車の事故は平成15年で15万3343件であるのに対し、平成25年で10万2118件と約3割減っています。
一方、歩行者と自転車の事故は、平成15年で2276件から平成25年で2605件と約1割増加しています。自転車関連事故全体に対する比率でみると、平成15年が約1.25%であるのに対し、平成25年が約2.15%と増えています。

また、自転車同士の事故(自転車相互事故)は、平成15年で3246件に対し、平成25年で3037件とわずかに減っていますが、ほぼ横ばいです。ただ、自転車関連事故全体に対する比率でみると、平成15年が約1.78%であるのに対し、平成25年が約2.51%と増えています。

自転車といえば子供からお年寄りまで乗れる身近で手軽な乗り物であることから、ともすれば交通事故の被害者であるというイメージが強いかもしれません。しかし、この10年で歩行者と自転車の事故、自転車同士の事故の割合が増えているとすれば、むしろ自転車が加害者となるケースが増えているかもしれません。たとえ自転車であっても、交通事故加害者となり、多額の損害賠償を請求されるという事態が十分に考えられるのです。
自転車は車両の一種(軽車両)

自転車は、練習さえすれば免許がなくても気軽に乗れますから、交通ルールは信号以外あまり意識しないで運転しがちです。しかし、自転車は道路交通法上「軽車両」にあたり、基本的には車両としての交通規制を受けます。以下、自転車が従うべき交通法規の一部を紹介します

例えば、自転車は車両ですから、歩道と車道の区別のある道路では基本的には車道を通行しなければなりませんが、自動車と違って、道路の左側端を通行しなければなりません。歩道を通行できるのは、道路標識によって歩道通行が許される場合や、自転車の運転者が13歳未満、70歳以上の者などの例外的な場面に限られます。
自転車も飲酒運転は禁止!!

自転車も飲酒運転は禁止されています。さらに、自転車が事故を起こしたときは、自動車の場合と同様に自転車運転者も救護義務や事故報告義務を負います。もしこれらの義務を怠った場合、いわゆる「ひき逃げ」として処罰されることもあり得ます。
このように、自転車もあくまでも車両の一種として、道路交通法上従うべき交通規制が多いのです。

刑事責任

自転車が交通事故の加害者となった場合、自転車運転者に過失があれば、民事上、損害賠償責任を負います。また刑事責任も負う可能性があります。ただし、自動車と異なり自動車運転死傷処罰法の適用はなく、刑法上の過失致死傷罪や(重)過失致死傷罪などが適用されます。

刑事責任・民事責任
自転車事故で9521万円の損害賠償責任

上述のように自転車運転中に交通事故の加害者となってしまった場合、過失があれば損害賠償責任を負います。損害額は、事故と相当な因果関係が認められる範囲の損害全てです(ただし、過失割合等に応じて減額されることがあります)。自転車は人力ですが、歩行者よりもはるかにスピードが出ますし、衝突時の衝撃も大きいので、相手に大きなけがを負わせる可能性は十分に考えられ、その場合には高額の損害賠償責任が発生することとなります。

例えば、小学5年生の男の子がスイミングスクールから帰宅するために自転車を運転していたところ、現場付近を歩いていた62歳の女性と正面衝突し、女性に急性硬膜下血腫等の傷害を負わせ、意識が戻らない状態に陥らせてしまった事故で、男の子の母親に対し、約9521万円の支払義務を負わせた神戸地裁平成25年7月4日判決など、高額の賠償を認める判決が出されています。

自転車交通事故の高額裁判例
賠償額 判決日 事故内容
約9500万円 神戸地裁
平成25年7月4日
小学5年生の男の子が女性と衝突。被害者女性は意識が戻らない状態。
約9300万円 東京地裁
平成20年6月5日
男子高校生が車道を斜めに横断し、男性と衝突。
被害者男性は障害が残るけがを負う。
約6800万円 東京地裁
平成15年9月30日
男性が片手運転で交差点に進入し、横断中の女性と激突。被害者女性は死亡。
約5400万円 東京地裁
平成19年4月11日
男性が信号無視をして、横断中の女性と激突。被害者女性は死亡。
約4700万円 東京地裁
平成26年1月28日
男性が信号無視をして、横断中の女性と激突。被害者女性は死亡。
自転車事故に遭った場合の損害賠償請求

裁判例によれば、自転車が加害者となった交通事故の場合でも、損害賠償額の計算方法は、自動車の交通事故の場合とあまり変わりません。すなわち、人身事故の場合には、治療費や休業損害、傷害慰謝料、後遺症が残れば後遺症慰謝料や逸失利益、重度の後遺症の場合には、被害者の余命期間にわたる介護費用の請求も認められます。

自動車の場合と大きく違うのは、自動車損害賠償保障法が適用されないことです。これにより、自転車運転者に賠償責任を負わせるには、民法の原則に基づき被害者の側で自転車運転者の故意・過失を立証しなければなりません。また、自賠責保険のような強制加入保険がないため、実際に賠償を受けられるかどうかは、賠償責任を負う者に資力があるかどうかによって左右されます。

したがって、自転車事故に遭った場合に損害賠償請求を確実にするためには、警察による現場保存や、目撃者の有無、加害者である自転車運転者の連絡先の確保等がより重要となります。また自賠責保険はないものの、近年は自転車保険が販売されるようになっていますし、何らかの保険の特約として個人賠償責任保険に入っている場合もあるので、加害者の加入している保険の調査も重要です。

自動車の場合と同様に重い責任

以上のように自転車といっても、車両として道交法の規制を受け、交通事故の加害者となれば自動車の場合と同様に重い責任を負います。一方で、強制保険がないなど、まだまだ自転車事故に対する手当ては不十分な部分が多いのも現実です。
 自転車だからと気軽に考えず、もしもの時に自分自身を守るためにも、相応の準備をしておくことが重要です。また、万一事故に遭ってしまった場合には、弁護士等に相談して適切な対応をしていく必要があるでしょう。

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