運送貨物

運送保険と貨物保険の違いってなに? 

2024年4月8日

運送業者は荷主から預かった貨物を無事に安全に運送して受荷主に引き渡す責任があるため、荷主に対して法律上・契約上の賠償責任を負います。
そのため、貨物を輸送しているとき、作業ならびに保管しているときの損害に備える「貨物保険」は運送業者にとって必須の保険です。「貨物保険」は更に「運送保険」「貨物海上保険」に枝分かれして、保険の対象、補償内容、どういったリスクがある時に付けておくべきかのポイントが異なります。それぞれの保障内容の特徴、違いを確認しておきましょう。

貨物を輸送中の様々なリスク

運送業者が荷主から貨物を預かって保管場所等から搬出されてから輸送過程を経て、仕向地で搬入作業するまでの輸送中・保管中もしくは加工中には様々なリスクがあります。それらのリスクに備えるのが貨物保険です。

輸送中のリスク

荷下ろしの際の衝撃
フォークリフトでトラックから荷下ろし中、誤って受託貨物を落下させ破損してしまった。

車両運転時の衝撃
受託貨物を搬送中に衝突回避のため、急ブレーキを踏んだところ、荷崩れしてしまい、受託貨物を破損させてしまった。

水濡れによる破損
トラックで輸送中の貨物が雨により、水浸しになってしまい破損させてしまった。

損害賠償
搬入先でフォークリフトを借用して荷下ろし中、搬入先の従業員を引いてケガをさせてしまい、その衝撃で貨物も破損させてしまった。

保管中のリスク

盗難
荷物の積み下ろし中や倉庫に保管中の受託物が盗難被害に遭った。

汚損
給排水管から水濡れがして、倉庫に保管中の貨物が水浸しになってしまった。

損害賠償
倉庫で火災や爆発が発生し、貨物の損害賠償請求が発生した。

貨物保険と運送保険の違い

運送業者が貨物を輸送・保管する際の火災、破損、汚損、盗難など様々なリスクをカバーするのが貨物保険ですが、同じ意味合いとして「運送保険」も聞いたことがあるのではないでしょうか。
2つは似ているようで位置づけが異なっており、貨物保険のうちの1つとして運送保険は成り立っています。

そもそも損害保険は自動車保険のノンマリン、海上保険のマリンに枝分かれしており、海上保険が更に貨物保険と船舶保険に分かれています。そしてその貨物保険は貨物がどこで輸送されるかによって「貨物海上保険」と「運送保険」に分かれています。

・貨物海上保険・・・海上輸送のリスクにさらされている貨物が保険の目的。
・運送保険・・・陸上輸送のリスクにさらされている貨物が保険の目的。

そしてさらに貨物海上保険は日本国内で輸送される貨物か、国際間で輸送される貨物かによって「内航貨物海上保険」と「外航貨物海上保険」に分かれています。

・内航貨物海上保険・・・日本国内で陸上・航空・海上輸送される貨物を対象
・外航貨物海上保険・・・海上または航空輸送される国際貨物を対象

それぞれ保険の目的と輸送される場所によって位置づけが異なりますが、共通していることは「輸送中のリスク」をカバーすることです。

運送保険とは

日本国内の陸上で貨物が「運送中のリスク」が前提

運送保険における保険の目的ならびに目的の範囲は主に、日本国内の陸上を運送される貨物およびこれに準ずるものとしています。
つまり、運送保険では日本国内の陸上で貨物が「運送されている間のリスク」を前提としています。
したがって、運送保険では運送中だけでなく運送に付随する加工中、保管中、作業中などのリスクもカバーすることができますが、加工中や保管中のリスクのみなど限定して補償することはできません。
なお、加工中は貨物が加工工場にある間であり、保管中は貨物が保管場所にある間のことをいいます。

貨物が敷地外へ運ばれることが前提

運送保険における「運送」とは、貨物がA地点からB地点へと異なる地点へ運ばれることを言い、敷地内から敷地外へ出ることを意味します。
したがって、一輸送ごとの契約である一輸送契約においては、同一建物内の1階から4階への輸送や、同一敷地内のC棟からD棟への輸送は異なる地点への輸送ではないので、運送保険で引き受けることはできません。

なお、年間を通じて継続的に輸送され、貨物の輸送中、保険中、加工中のリスクを1保険証券で一括かつオールリスクで担保する期間建の運送保険であれば、保管中・加工中・作業中を担保している契約の場合は、上記のケースに含まれることとなり、一貫して補償の範囲内となります。

補償範囲

日本国内をトラック・鉄道等による陸上輸送、航空輸送または自動車航送船(フェリー)輸送される貨物の輸送中において、不測の事故によって生じた損害を補償する保険です。
てん補の範囲はほぼすべての偶発的な事故によって生じた損害をてん補するオールリスク担保(※)があります。また、特定の事故によって生じた損害にのみお支払いする特定危険担保(※)がありますが、補償の範囲は会社によって異なっていたり、特約を付加することによってカバーできることもあります。
※保険会社によって名称は異なります。

てん補範囲


※以下「△」は保険会社によって補償対象外もしくは特約によってカバーできる場合があります。

事故・危険の種類 オールリスク担保 特定危険担保
火災・爆発
トラックなどの輸送用具の衝突・転覆・墜落
トラックなどの輸送用具が他の輸送用具に搭乗中の沈没・座州・座礁・衝突・転覆・脱線・墜落・不時着
汚損・天候による潮濡れ
擦損・かぎ損
雨・雪等の濡れ
虫食い・ねずみ食い
盗難・紛失・不着
破損・まがり・へこみ
漏出・蒸発・混合

外航貨物海上保険とは

日本と外国間または外国相互間(それに不随する国内輸送を含む)を船舶、航空機、国際郵便などにより輸送されるあらゆる貨物が貨物海上保険の保険の対象となります。そのうち外航貨物海上保険は、海上または航空輸送される貨物が偶発的な事故によって、滅失したり、損傷した際にその損害をてん補する保険であり、輸送中における海上危険、ストライキ危険、戦争危険による事故によって、貨物に生じた損害を補償します。

貿易と外航貨物海上保険

多種多様な貨物が国際間を輸送される貿易取引においては、‟外航貨物海上保険を売手・買手のどちらが手配するか”‟どこからあるいはどこまで危険を負担するか”等を当事者間であらかじめ決めておく必要があります。
こういった貿易取引条件を類型化し、標準的な取引条件として世界各国で広く貿易関係者に活用されているのが国際商業会議所で作成されたインコタームズ(INCOTERMS)です。

インコタームズ(INCOTERMS)では、売手と買手の間で輸送中の貨物のリスクが移る「危険移転の分岐点」と、商品代金に付随する輸送、保険、通関などの「費用の分担」が取り決められています。
よく用いられる定型取引条件には、FOB条件、CFR条件、CIF条件があり、日本と相手国でどちらが外航貨物海上保険を手配するかはそれぞれ以下のように定めています。

保険期間

外航貨物海上保険では、自動車保険や火災保険のような 「〇年〇月〇日から一年間」といった期間建ではなく、「A地点からB地点まで」という輸送区間、いわゆる航海建となっています。
外航貨物海上保険が補償する海上危険ならびにストライキ危険の保険期間は、保険証券記載の仕出地の倉庫または保管場所において、この保険の対象となる輸送の開始のために輸送車両またはその他の輸送用具に保険の目的物を積込む目的をもって、保険の目的物が初めて動かされた時に開始され、保険証券記載の仕向地の最終倉庫または保管場所において、輸送車両またはその他の輸送用具から荷下しが完了した時に終了します。

なお、本船から荷卸された後の期間は60日間(航空機の場合は30日間)を限度としています。
ただし、「通常の輸送過程にあたらない保管または仕分け等のために倉庫において荷卸しされたとき」や「通常の輸送過程以外の保管のため、輸送車両もしくはその他の輸送用具またはコンテナを使用した場合」は、たとえ輸送の途中であっても保険は終了します。

戦争危険については、原則として外航本船に積載されている間にのみの補償であり、いかなる場合も貨物が本船に積み込まれたときに始まり、仕向港で本船から荷下ろしされたときに終了します。また、仕向港到着後15日間が終了すると、貨物が本船より荷下しされなくてもその時点で終了となります。

補償内容

外航貨物保険は日本だけでなく世界各国で流通する必要があります。
どこの地域においても使用可能であることが前提となるため、世界的に広く使用されているのが協会貨物約款(Institute Cargo Clauses:以下ICC)です。ICCは海上危険における基本的な条件としてA、B、Cの3種類あり、てん補される範囲が異なっています。

てん補範囲


※以下「△」は保険会社によって補償対象外もしくは特約によってカバーできる場合があります。

主な損害の種類 保険条件
A B C
火災・爆発
船舶・はしけの座礁・乗揚・沈没・転覆
陸上輸送用具の転覆・脱線
船舶・はしけ・輸送用具の、水以外の他物との衝突・接触
避難港における貨物の荷卸
投卸
波ざらい
地震・噴火・雷
海水・湖水・河川の水の船舶・はしけ・船倉・輸送用具・コンテナ・保管場所への侵入
船舶・はしけへの積込またはそれらからの荷卸中の水没・落下による梱包1個ごとの全損
その他の損害(濡れ損・破損・曲がり・へこみ・盗難・漏出・不足・汚染・混合等)
共同海損・救助料・継搬費用・損害防止費用
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インズウェブ

「保険(Insurance)」とインターネット「ウェブ(Web)」の融合から、サイト名『インズウェブ(InsWeb)』が誕生しました。自動車保険の見積もりを中心として2000年からサービスを提供しています。現在の運営会社はSBIホールディングス株式会社となり、公正かつ中立的な立場で自動車保険のみならず生命保険に関する様々なお役立ち情報も提供しています。