車を走らせるのであればだれでも事故のリスクとは隣り合わせです。そしてトラックでの運送業務を行うのであれば走行距離や走行頻度、事業の継続の観点などから事故のリスクについてより強く考えておくべきでしょう。
事故時のリスクに備えるのであれば自賠責保険だけでなく任意保険にも入っておきたいところです。トラックの自動車保険はいったいどのようにするのがよいのでしょうか?
自賠責保険と任意保険
自動車保険には加入が義務付けられている自賠責保険と自賠責保険では不足する補償を追加できる任意保険とがあります。それぞれについて説明します。
自賠責保険
トラックに限らず、公道を走行する車は自賠責保険への加入が義務付けられています。未加入で走行した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。また、違反点数6点が付され、前歴がなくても免許停止処分となります。
自賠責保険の補償内容
自賠責保険は被害者救済のための最低限の補償内容となっています。補償されるのは対人賠償のみで支払われる保険金にも上限が設けられています。
損害の範囲 | 支払限度額(被害者1名あたり) | |
---|---|---|
傷害による損害 | 治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料 | 最高120万円 |
後遺障害による損害 | 逸失利益、慰謝料等 | 神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい障害を残して介護が必要な場合 常時介護のとき:最高4,000万円 随時介護のとき:最高3,000万円 後遺障害の程度により 第1級:最高3,000万円~第14級:最高 75万円 |
死亡による損害 | 葬儀費、逸失利益、慰謝料(本人および遺族) | 最高3,000万円 |
死亡するまでの傷害による損害 | (傷害による損害の場合と同じ) | 最高120万円 |
自賠責保険の保険料
自賠責保険の保険料は保険期間と地域のほかに自家用(白ナンバー)か事業用(緑ナンバー)かで異なります。業務に使用していたらすべて事業用というわけではなく、自動車運送事業、つまり、荷物や人を運送して運賃を受け取る事業に使用している車が事業用の扱いとなります。自社製品の運搬に使用しているだけの場合は自家用の扱いです。
自家用普通貨物車の自賠責保険料(令和3年4月1日以降始期)
12か月 | 13か月 | 24か月 | 25か月 | |
---|---|---|---|---|
最大積載量が2トン超 | 21,130円 | 22,430円 | 36,710円 | 37,980円 |
最大積載量が2トン以下 | 19,120円 | 20,250円 | 32,730円 | 33,840円 |
事業用普通貨物車の自賠責保険料(令和3年4月1日以降始期)
12か月 | 13か月 | 24か月 | 25か月 | |
---|---|---|---|---|
最大積載量が2トン超 | 28,380円 | 30,270円 | 51,070円 | 52,930円 |
最大積載量が2トン以下 | 20,580円 | 21,840円 | 35,630円 | 36,860円 |
※沖縄県や離島など一部地域は上記の保険料とは異なります。
任意保険
自賠責保険は対人賠償に限られ、保険金額にも制限があるため、事故の際に自賠責保険の補償だけでは賠償金を全額賄えないケースも多くあります。また、自分側の死傷や車両の補償も受けられません。そうした自賠責保険では補償されない内容の補償を受けられるのが任意保険です。
任意保険の補償内容
任意保険の補償内容は保険会社との契約によりますが、相手への賠償である対人賠償保険や対物賠償保険のほか、自分側の死傷への補償である人身傷害保険、自分側の車両の補償である車両保険、その他さまざまな特約が用意されています。特約については法人向けならではの特約もあり、また保険会社によって用意されているものも異なっているので、複数の保険会社を比較してみることをおすすめします。
フリート契約とノンフリート契約
任意保険の契約はフリート契約とノンフリート契約に分かれます。契約者が所有・使用する自動車のうち、契約期間が1年以上の自動車保険を契約している自動車の合計台数が10台以上の場合はフリート契約、9台以下の場合はノンフリート契約となります。
フリート契約では保険契約が契約者単位で一本化されるのに対し、ノンフリート契約では自動車1台単位での契約です。割増引率の適用範囲や決定方法などが以下の表のように異なってきます。所有・使用する自動車が10台以上でフリート契約になる場合は個人で自動車保険を契約するときと感覚が大きく異なるので注意しましょう。
フリート契約 | ノンフリート契約 | |
---|---|---|
保有台数 | 10台以上 | 9台以下 |
契約対象 | 契約者(法人、経営者)単位 | 自動車1台単位 |
保険料 | 契約台数、支払われた保険金、 前年の割引率などにより変動 |
前契約の契約期間、等級、 年齢条件、事故件数などにより変動 |
年齢条件 | なし | 最大35歳まで段階的に年齢条件あり |
保険証券 | 1枚 | 自動車ごと、台数分 |
任意保険に加入していない運送会社も
任意保険に加入しないのをすすめるわけではありませんが、実際のところ任意保険に加入していない運送会社もあります。トラックは普通車と比べて保険料が高くなりがちなので、多くの台数を保有している会社では保険料の分をプールしておいて事故時にそこから支払う自家保険の方が経済的と判断しているのです。また、自家保険できるほどの資金がない中小の運送会社では任意保険の加入率が上がりますが、保険料の高さから任意保険に入っていない会社もあります。
しかし、自家保険で対応する場合はプールしている資金も限られるため、事故相手への賠償金の支払いも必要以上に抑えようとしてしまうことがあります。そうすると被害者側の感情も悪化し、周囲に悪い評判をばらまかれるリスクも生じます。最近はSNSで個人でも手軽に情報を発信できるので、被害者近辺だけでなく日本中から非難される可能性も増加しているのです。会社の評判を守るためという意味でも任意保険加入の必要性は高まっています。
事故防止が保険料を安くする
フリート契約であってもノンフリート契約であっても事故防止が保険料を安くするポイントの一つです。フリート契約の割増引率を決める要素の一つとして損害率(保険金÷保険料×100)があり、事故で多くの保険金が支払われると翌年度の保険料が高くなってしまいます。逆に損害率が改善していくと最大で70%~80%もの割引を受けることができます。ノンフリート契約でも事故で保険を使うと翌年度の等級が下がって保険料が高くなります。逆に保険を使わなければ等級が上がり、最大の20等級では63%の割引を受けることができます。
ノンフリート契約では1台ごとの割増引率ですが、フリート契約では全体の割増引率に影響してしまうので事故にはより注意が必要です。法人向けに任意保険を販売する保険会社の中には事故防止のためのe-ラーニングやレポート、ツールを提供しているところもありますので、そうしたものも活用して事故防止に努めていくのがよいでしょう。
一括見積もりで最適な保険を探そう!
保険料を下げるために他に重要なこととして契約する保険会社選びがあります。フリート契約では割増引率が保険会社によって異なるところがあるので各社比較することが大切です。また、フリート契約でもノンフリート契約でも、当然ながら契約する補償内容や特約によっても保険料が変わってくるので、より自社に合った契約をできる保険会社の方が保険料の無駄がありません。法人向けの自動車保険の特約はさまざまにあるので、複数の保険会社を比較・検討することが肝要です。
しかし、保険会社の比較は大切とはいえ、多くの時間を使って検討するのは難しいところだと思います。そこで便利なのが一括見積もりサービスを利用することです。見積もりする情報を入力していただいたら弊社から保険会社・代理店に情報を伝達します。その後、保険会社・代理店から電話やメールで連絡が届きますので、効率的に自動車保険を検討することが可能です。最適な保険会社選びのためにも一括見積もりを利用しましょう。