裁判例に見られる交通事故の物損高額ランキングトップ30の集計を2014年3月12日付「保険毎日新聞」をもとにまとめました。
最高額は、平成6年7月19日に判決(神戸地裁)が出た物的損害額2億6,135万円の事案で、1億円を超える事案が5件となっています。ランキングトップ30の1件当たり平均損害額は4,335万円で、4年前の調査に比べて平均額で438万円上昇しました。
被害物件別では、トラックと積荷10件、トラック単独6件、建物5件、観光バス3件、積荷単独3件、電車・踏切2件、道路設備装置1件となっています。
物損事故による高額賠償TOP3
- 1位2億6,135万円積荷(呉服、洋服、毛皮など)
- 判決:平成6年7月19日 神戸地裁
損害を被った荷主が運送会社を訴えて、約4億円の賠償を求めた。
裁判所は、積荷の損害額を2億6,135万円と認定したが、荷主が運送会社に積荷価格を申告しなかった点に荷主の過失を認め50%過失相殺をしたため、運送会社が荷主に賠償する金額は、1億3,067万円となった。
- 2位1億3,450万円パチンコ店
- 判決:平成8年7月17日 東京地裁
大型トラックは、衝突時の衝撃でハンドル機構が壊れ、対向車線に入り、加害乗用車の後ろを走っていた車両と再び衝突し、その車両と一緒になって道路脇のパチンコ店に飛び込んだ。
パチンコ店がセンターラインを越えた加害乗用車に損害賠償金額の請求をした。加害乗用車に損害賠償請求の運転車はこの事故で死亡したため、両親が被告になったが、訴訟に欠席した。損害額は、加害乗用車側の反論がないままの判決額となっている。
- 3位1億2,036万円電車、踏切
- 判決:昭和55年7月18日 福岡地裁
その時、電車の接近に気付き早く通過しようと慌てたため、軌道敷地内で脱輪。そこへ6両編成の特急電車が突っ込んできた。
特急電車は衝突した後、コンクリート枕木の上を逸走、電柱に衝突し、線路そばに建つ家屋に飛び込んで停止した。1両目が横転、2両目から6両目までが脱線した。損害は、電車損害、復旧工事費、家屋損害などであった。
乗用車が起こした事故の判例
トップ30に入る高額の物損は、積荷の損害を伴うトラック絡みのものが多いようです。
我々のような一般ドライバーからしてみればあまり実感がわきませんが、【第3位】の踏切事故のように、乗用車が起こした事故に関係する判例もありますので、ご紹介します。
- 14位2,177万円ペットショップ店舗
- 判決:平成23年11月25日 東京地裁
損害を被った荷主が運送会社を訴えて、約4億円の賠償を求めた。
加害者は店舗修理費、什器設備修理費は認めたが、商品損害、休業損害、集客回復費用について争われた。
裁判所は売れ残った犬や猫は休業が原因で販売機会を逸し、商品価値を失ったとまでは言えないと否認、鼠害に遭ったペットフードはシャッター損壊のために防ぎきれなかったと認容、集客回復費用も認容した。
- 19位1,651万円美容室
- 判決:平成6年5月24日 横浜地裁
損害は、建物修理費、美容室什器備品代、営業損害のほか、美容室の休業を余儀なされるなどで被った精神的苦痛に対する慰謝料の合計額である。
- 27位1,422万円乗用車と建物、商品
- 判決:平成11年2月5日 東京地裁
訴訟は、乗用車側が加入していた保険会社が保険金として支払った乗用車修理費、スポーツ店の修繕費、商品・備品損害などを特殊自動車側に保険求償したものである。乗用車側の過失は20%と認定された。
交通事故による物損額は、死亡・後遺症賠償額と比べると全体的に金額は低いですが、休業補償や慰謝料なども認定されるケースがあります。万一加害者となってしまった場合にも、負うべき経済的負担が補填され安心できる補償内容になっているか、更新時には必ず確認をしてください。
出典:2014年3月12日付「保険毎日新聞」
順位 | 認容総損害額 | 裁判所・ 判決日 | 被害物 | 損害額内訳(万円) | 過失 (%) | |||
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1 | 2億6,135万円 | 神戸地裁 平成6.7.19 | 積荷 | 呉服 14,940 | 洋服 1,935 | 毛皮 9,260 | 50 | |
2 | 1億3,450万円 | 東京地裁a欠 平成8.7.17 | パチンコ店 | 建物損害 10,904 | 逸失利益 2,248 | パチンコ台 255 | 自販機利益 43 | 0 |
3 | 1億2,036万円 | 福岡地裁 昭和55.7.18 | 電車・踏切 | 電車損害 8,728 | 電気関係 597 | 線路復旧費 1,131 | 家屋損害 1,581 | 0 |
4 | 1億1,798万円 | 大阪地裁 平成23.12.7 | 積荷 (おむつ製造機) | 積荷損害 11,679 | 輸送費 119 | 0 | ||
5 | 1億1,197万円 | 千葉地裁 平成10.10.26 | 電車・踏切 | 電車損害 8,890 | 人件費 1,658 | 代行輸送費 274 | 諸経費 375 | 0 |
6 | 6,074万円 | 岡山地裁 平成12.6.27 | 積荷 (婦人服等) | 積荷損害 6,124 | 損害品売却 -50 | 80 | ||
7 | 4,141万円 | 大阪地裁 平成20.5.14 | 大型トラックと積荷 | 筆ペン損害 2,870 | 車両損害 520 | 第三者車両 550 | ガードレール他 201 | 40 |
8 | 3,391万円 | 名古屋地裁 平成16.1.16 | 大型トラックと積荷 | 積荷損害 2,813 | 車両修理費 438 | 休車損 115 | レッカー代他 25 | 20(※) |
9 | 3,156万円 | 東京地裁(1)欠 平成13.12.25 | 4階建ビル | 建物修理費 3,156 | 0 | |||
10 | 3,002万円 | 横浜地裁 平成23.9.27 | 大型トラックと 普通トラック | 車両修理費 3,002 | 0 | |||
11 | 2,841万円 | 東京地裁(2) 平成14.12.25 | 普通トラックと積荷 | 積荷損害 2,553 | 休車損 166 | 車両積替費 99 | 車両取引費 23 | 40 |
12 | 2,696万円 | 高松地裁a 平成9.8.14 | 大型トラック3台と 積荷 | 車両損害 1,600 | 積荷損害 450 | 休車損 638 | レッカー代 8 | 20 |
13 | 2,509万円 | 名古屋地裁 平成6.9.16 | 観光バス | バス修理費 1,625 | 休車損 867 | レッカー代 17 | 0 | |
14 | 2,177万円 | 東京地裁 平成23.11.25 | ペットショップ店舗 | 店舗修理費 893 | 什器備品 122 | 商品損害 320 | 休業損害、 集客回復費他 842 | 0 |
15 | 2,082万円 | 東京地裁 平成7.11.14 | 観光バス | 修理費他 2,082 | 0 | |||
16 | 1,877万円 | 東京地裁 平成5.6.24 | トラック2台と積荷 | 車両損害 1,235 | 積荷損害 552 | 休車損 90 | 0 | |
17 | 1,758万円 | 宇都宮地裁・足利 平成11.1.29 | 大型トラックと積荷 | 休車損 588 | 積荷損害 1,170 | 0 | ||
18 | 1,739万円 | 大阪地裁 平成11.1.29 | トラクター・トレーラー と積荷 | トラクター全損 600 | トレーラー全損 300 | 休車損 553 | 積荷他 286 | 50 |
19 | 1,651万円 | 横浜地裁 平成6.5.24 | 美容室 | 建物修理費 1,138 | 什器備品 241 | 営損害損 42 | 慰謝料 30 | 0 |
20 | 1,605万円 | 大阪地裁(2) 平成9.4.25 | 普通トラック | トラック全損 513 | 積荷損害 888 | 休車損 138 | レッカー他 66 | 10 |
21 | 1,580万円 | 大阪地裁 平成22.7.29 | 普通トラック | 車両損害 656 | 休車損・側壁 476 | 買換諸費用 26 | 保険求償 | 20 |
22 | 1,536万円 | 東京地裁(2) 平成15.9.8 | タンクローリー | タンク時価 800 | 車両修理費 346 | 休車損 435 | スクラップ売却 -45 | 20 |
23 | 1,533万円 | 広島地裁 平成9.9.17 | 大型トラックと積荷 | トラック修理費 826 | 休車損 589 | 積荷運送者 63 | レッカー代 55 | 10 |
24 | 1,522万円 | 東京地裁欠 平成9.11.28 | 端末中継装置 | 装置時価 1,216 | 工事費 306 | 10 | ||
25 | 1,472万円 | 札幌地裁 平成8.11.27 | 観光バス | バス修理費 1,250 | 車両運搬費 55 | 営業補償費 81 | その他 86 | 20 |
26 | 1,468万円 | 大阪地裁 平成6.11.17 | 大型トラック | 車両修理費 1,226 | 休車損 227 | 無線機損害 15 | 0 | |
27 | 1,422万円 | 東京地裁(1) 平成11.2.5 | 乗用車と建物、 商品 | 車両修理費 184 | 商品・備品 1,021 | 建物損害 242 | 損害品売却 -25 | 20 |
28 | 1,419万円 | 大阪地裁b 昭和63.3.17 | 大型トラックと積荷 | 車両修理費 673 | 休車損 172 | 積荷損害 574 | 90 | |
29 | 1,396万円 | 東京地裁(2) 平成9.3.25 | タンクローリー | トラクター全損 801 | トレーラー修理 103 | 休車損 486 | レッカー代 6 | 0 |
30 | 1,395万円 | 福岡地裁 平成11.10.25 | トラック | トラック全損 625 | 訴外車全損 383 | 公演中止補償 200 | 道路補修他 187 | 70 |