交通事故の死亡・後遺症賠償額の高額ランキング

裁判例に見られる交通事故の死亡・後遺症賠償額の高額ランキングトップ30の集計がまとまりました。
最高額は、平成23年11月1日に判決(横浜地裁)が出た人身総損害額5億843万円の事案で、3年前の平成22年に発表された最高額と比べ、一気に1億4,087万円上昇しました。高額例の特徴としては、事故当時の被害者の年収の高さ、年齢の若さと後遺障害状態(脳に外傷性の損傷を受け、介護の必要となる期間が長い)等が挙げられます。

死亡・後遺症による高額賠償TOP3

1位5843万円死亡
判決:平成23年11月1日 横浜地裁/被害者:41歳男性、眼科開業医
歩行者横断禁止規制のある国道を酩酊して横断を開始し第一車線中央付近で立ち止まっていた被害者に走行中のタクシーが衝突し、死亡させた。
被害者は、病院勤務を経て5年前に眼科クリニックを開設した41歳の眼科医。事故前4年間の平均所得が5,500万円を超える高額所得者であったため、逸失利益が4億7,850万円と高額となった。
被害者側は、医師は一般会社員のような定年もなく、70歳まで稼働できると主張したが、裁判所は、眼科開業医の就労可能年齢が70歳であることや所得水準が事故時と同程度であることの立証もないとして就労可能期間を67歳までとした。
事故状況から被害者に60%の過失を認定した。
2位37,829万円後遺症
判決:平成23年2月18日 名古屋地裁/被害者:21歳男性、大学3年生
大学の授業終了後、別の駐車場に駐車している被害者等を送り届けるため、加害者の乗用車に5人が搭乗する際、被害者が自らボンネット上にうつ伏せになって乗った。加害者は乗用車を発進させゆっくりした速度で走行していたが、ハンドルを左に切った際、被害者がボンネットから転落して路面に頭部が打ちつけられた。
被害者は遷延性意識障害の後遺症を残す重篤な症状となった。
ボンネットに乗るという危険な乗車方法に対し、被害者に20%の過失を適用した。
3位36,756万円後遺症
判決:平成17年5月17日 名古屋地裁/被害者:33歳男性、会社員
第一車線の右寄りを走行していた被害者運転のバイクと、第二車線から第一車線に車線変更し交差点を左折しようとした乗用車が衝突し、被害者が高位頸髄損傷を被り、四肢完全麻痺と呼吸器系に重大な障害を残した。
呼吸管理を含めた介護を家族で行うのは困難であり職業介護人の介護を基本とし、近親者が補助する形態の介護費用が認められた。3階建ての福祉対応家屋新築費の50%、エレベーター設置費用の90%、浴室・トイレの段差解消機費用の65%が認められた。
両親の慰謝料は合計200万円が認められたが、事故後結婚した妻は請求していない。被害者の過失は5%が適用された。

賠償金額の算定にあたっては、よく「逸失利益」という言葉を耳にしますが、英語では「Lost Profit」と言い、「本来得られるべきであるにも拘らず、不法行為や債務不履行で得られなかった利益」を指します。
人損事故などでは、怪我の治療費や苦痛に対する慰謝料のほか、本来事故が無ければ得られたであろう給与・収入などが「逸失利益」として損害賠償の対象となります。
ただし、あくまで予測に基づくものであり、本当にそれだけの利益が事故が無ければ得られたのか、あるいはそれだけしか得られなかったのか(事故が無ければもっと利益を得られたのではないか)についての立証は困難であり、各個人の事情などをどれだけ考慮するか、どのように利益額に反映させるかは難しい問題となっています。
金額の算定にあたっては、「ライプニッツ係数」を用いることが多いです。
「ライプニッツ係数」とは、将来受け取るはずの金銭を前倒しで受けたるために得られる利益(中間利息)を控除する係数です。
(例)後遺障害(14級:喪失期間3年)の逸失利益(年収550万円の場合)
550万円×2.723(※1)×5%(※2)=748,825円

(※1)喪失期間3年に相当するライプニッツ係数
(※2)後遺障害14級に相当する労働喪失率

なお、中間利息を控除する係数については、「新ホフマン係数」も用いられていました。
「ライプニッツ係数」が利息を複利計算するのに対し、「新ホフマン係数」では単利計算をします。よって、「新ホフマン係数」を用いた方が控除される金額が少なくなり、被害者側には有利ではありますが、現在は「ライプニッツ係数」にほぼ統一されているようです。

認定された賠償額自体は高額となっていますが、ケースバイケースで被害者側の過失も適用されています。
被害者過失割合の大きいものとしては、平成23年11月1日横浜地裁の判決(高額ランキング第1位)の被害者過失割合60%(歩行者横断禁止規制道路の横断)、平成19年1月31日の判決(同第7位)の60%(赤点滅信号で原付進入)、平成18年6月21日大阪地裁の判決(同第5位)の40%(酩酊状態で高速道路側道にしゃがんでいた)、平成23年2月4日仙台地裁の判決(同17位)の40%(事故態様より)などがあります。

最近、保険会社の自動車保険(対人賠償)の保険金支払い額の増加をよく耳にします。
損害保険料率算出機構の資料によれば、平成19年と平成23年の被害者1人当たりの自賠責保険の平均保険金額を比較すると、死亡、傷害ともにほぼ横ばいの推移となっています。
また、後遺障害等級の構成比を比較すると、「介護を要する後遺障害」の第1級の構成比は、平成19年が1.64%であるのに対し、平成23年は1.29%と比率を下げています。
これらを見る限り、一概に高額な賠償事例が増えていることはうかがえません。
一方で、裁判で扱われる事例の統計的データ(東京地裁民事第27部(交通部))の例を見てみると、平成19年の新受件数が1,384件であったものが、平成23年では1,593件と、5年間で15%以上も増えており、高額賠償事例が裁判例という形で顕在化しています。
実際には、自動車保険(対人賠償)から支払われる保険金額は、損害賠償額から過失相殺、自賠責保険金が控除されたりした後の金額となりますが、高額化している背景を考えて、万一加害者となってしまった場合にも、負うべき経済的負担が補填され安心できる補償内容になっているか、更新時には必ず確認をしてください。
出典:2013年12月9日付「保険毎日新聞」の一部を抜粋

交通事故民事裁判例に見る人身総損害(死亡・後遺症)高額ランキング 30
順位 人身総損害額
(※)
裁判所・
判決日
被害者
性   別
固定時
年  齢
被害者職業等 事故時状態 事故形態 裁判所認定
後遺症等級
過失(%)
1 5億  843万円 横浜地裁
平成23.11.1
41 眼科開業医 横断歩行中 酩酊して道路横断中、タクシーにひかれた 死亡 60
2 3億7,829万円 名古屋地裁
平成23.2.18
21 大学3年生 乗用車ボンネット
に伏臥
乗用車ボンネットに伏臥乗車中に走行乗用車から転落負傷した 1級1号 20
3 3億6,756万円 名古屋地裁
平成17.5.17
33 会社員 バイク運転中 第1車線に変更した乗用車と第1車線直進のバイクが接触 1級3号 5
4 3億5,936万円 大阪地裁
平成19.4.10
23 会社員 原付運転中 渋滞する交差点で直進原付と対向右折乗用車の衝突 1級1号 30
5 3億5,250万円 大阪地裁
平成18.6.21
38 整形外科・
内科開業医
路上にしゃがん
でいた
夜間、路上しゃがみ込みの酩酊歩行中に大型トラックが衝突 死亡 40
6 3億3,163万円 仙台地裁
平成21.11.17
16 中学生 歩道上佇立中 酒酔い運転のトラックが暴走し歩道上の中学生に衝突 1級1号 0
7 3億2,955万円 大阪地裁
平成19.1.31
23 高校3年生 原付運転中 赤点滅の原付と黄点滅の乗用車が出合頭に衝突 1級3号 60
8 3億2,950万円 東京地裁
平成16.6.29
27 大学院生 乗用車助手席
同乗中
高速道路中央分離帯に乗用車が乗り上げ転覆 併合1級 0
9 3億2,448万円 仙台地裁
平成19.6.8
26 会社員 歩道歩行中 車同士が衝突し、逸走した乗用車が歩道上の歩行者に衝突 1級1号 0
10 3億2,392万円 千葉地裁
佐倉支部
平成18.9.27
38 郵便局雇用予定
期間中の勤務者
車両誘導佇立中 車誘導のため路上に佇立中、中央線を越えた対向車にはねられた 1級3号 0
11 3億2,181万円 千葉地裁
平成17.7.20
20 高校3年生 自転車運転中 片側2車線道路を自転車に乗って横断中に、トラックに衝突された 1級3号 60
12 3億1,411万円 名古屋地裁
平成24.3.16
25 ヘアサロン店長 バイク運転中 青信号交差点をバイクで直進中に、対向右折乗用車と衝突 1級1号 15
13 3億1,320万円 東京地裁
平成16.12.21
34 銀行員 乗用車運転中 青信号交差点直進の乗用車と、赤信号を見落としたトラックとの出合頭衝突 1級3号 0
14 3億1,231万円 大阪地裁
平成17.3.25
45 団体職員 乗用車運転中 信号のない交差点で直進加害乗用車と右折進入被害乗用車との衝突 1級3号 40
15 3億  759万円 横浜地裁
平成20.8.28
42 ITコンサル
タント業
代表
大型バイク運転中 交差点直進の大型バイクと一時停止道路から進入の乗用車が衝突 6級 10
16 3億  601万円 大阪地裁
平成18.4.5
19 高校2年生 原付傍らに佇立、
会話中
原付の傍らで佇立中、路側帯に逸出してきた乗用車が衝突 1級3号 0
17 3億  417万円 仙台高裁
平成23.2.4
20 飲食店
共同経営者
乗用車運転中 右折乗用車と対向直進トラックの衝突 1級1号 40
18 3億  111万円 大阪地裁
平成17.9.27
46 電機メーカー
研究員
横断歩道歩行中 交差点を青信号横断の歩行者に右折トラックが衝突 1級3号 0
19 2億9,677万円 横浜地裁
平成23.12.27
21 大学生 乗用車後部同乗中 被害者同乗の乗用車が、中央線を越えて対向乗用車に正面衝突 1級1号 10
20 2億9,369万円 京都地裁
平成24.10.17
35 有職者
(職種不明)
バイク運転中 交差点で直進バイクと対向右折タクシーが衝突 1級1号 10
21 2億9,138万円 東京地裁
平成17.10.27
27 新聞記者 停止車両に搭乗中 停止車両搭乗中、後続大型トラックが対向車両出現のため衝突 1級3号 0
22 2億9,005万円 さいたま地裁
平成21.2.25
54 生保外交員 自転車運転中 横断歩道を自転車に乗って横断中の被害者に、左折車両が衝突 1級1号 0
23 2億8,819万円 大阪地裁
平成19.7.26
8 小学1年生 自転車運転中 信号のない交差点で、自転車と乗用車の出合頭衝突 1級1号 30
24 2億8,663万円 広島地裁
平成17.9.20
45 競艇A1級選手
兼会社役員
バイク運転中 道路左端から右折のバイクに、後続トラックが衝突 2級3号 25
25 2億8,509万円 大阪地裁
平成23.10.5
30 会社員 タクシー乗車中 赤信号無視の乗用車とタクシーが出合頭に衝突し、乗客が負傷 1級1号 0
26 2億8,210万円 名古屋地裁
平成22.12.7
27 ホテルの
アルバイト
自転車運転中 同一方向進行中の自転車が、右折道路横断して後続乗用車と衝突 1級1号 30
27 2億8,191万円 大阪地裁
平成15.4.18
18 有職者
(職種不明)
自転車運転中 青信号横断中の自転車に、赤信号無視のトラックが衝突 1級3号 0
28 2億7,979万円 大阪地裁
平成20.10.20
14 小学生 下校歩行中 横断歩行中、脇見運転の乗用車に衝突される 1級3号 0
29 2億7,885万円 広島地裁
福山支部
平成16.5.26
38 会社員 軽乗用車運転中 軽乗用車が青信号で直進中、赤信号看過の乗用車に衝突される 1級3号 0
30 2億7,647万円 名古屋地裁
平成19.10.16
24 会社員 自動車運転中 赤信号無視のレンタカーと、青信号直進の酒気帯び乗用車の衝突 1級3号 5
出典:2013年12月9日付「保険毎日新聞」
(※)人身総損害額には弁護士費用、遅延損害金は含まず、過失相殺前、既払い金・自賠責保険金控除前の金額  5年以内の判例

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