2020年10月23日菅義偉内閣総理大臣は、就任後初の所信表明演説で「我が国は二〇五〇年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち二〇五〇年カーボンニュートラル、脱炭素社会を目指すことを、ここに宣言いたします。」と表明しました。これまで日本の自動車業界はハイブリッド車など環境に優しい車を開発してきましたが今後一層、CO2を排出しない電気自動車(EV)などの技術革新が進んでいくものと思われます。ここでは、そんな電気自動車(EV)についてメリットや税金や補助金、割引制度について紹介します。
※カーボンニュートラルとは、環境用語で二酸化炭素排出量と吸収量がプラスマイナスゼロになる事を言います。
もくじ
電気自動車のメリット
メリット1:環境に優しい車である
電気自動車は電気で走る自動車です。電気自動車は走行中には、二酸化炭素(CO2)を排出しません。電気は発電所で作られるため発電する時にCO2を排出しますが、今後太陽光や風力などで発電される電気が増えると考えるとCO2の排出は更に削減できると考えられます。電気自動車は、CO2排出量が少ないため地球温暖化対策への貢献度は高い車となり普及が進んでいます。
メリット2:ランニングコスト(電費)が安い
環境に優しい車という面だけでなく、電気自動車はお財布にも優しいとされています。電気自動車の動力源は電気の為、ガソリンの高騰などのような原油価格の影響をさほど受けずに済みます。電気自動車は、ガソリン代の代わりに電気代がかかりますが、ガソリン代より安く、ランニングコストもガソリン車より安く抑えられるという点もメリットに挙げられます。車の充電を自宅で出来るという点も魅力的でしょう。自宅の電気代は電気料金プランの見直しや電力会社を見直すことで、今よりも安いプランに切り替えることが可能です。走行性能については、車種にもよりますがガソリン車を上回るともいわれています。ただ、まだ航続距離はガソリン車より短いとされています。しかし、今後推し進められる技術促進でより一層改善されていくでしょう。
メリット3:静かで振動・騒音が少ない
電気自動車は、バッテリーに蓄電した電気をモーターを使って回し走行するため振動や騒音が少なく静かです。ガソリン車は、エンジンの中でガソリンを燃焼させることで発生するエネルギーで走行するため、走行時に音や振動が発生し、高速道路で音楽の音量をあげないと聞こえないことがあったり、後部座席の人と会話が難しかったりといった経験がある人もいるでしょう。その点、電気自動車は比較的静かで振動・騒音が少なく加速時もスムーズです。
メリット4:非常用電源として利用できる
電気自動車は、災害時に非常電源として使用することができます。災害などで自宅が停電した時に電気自動車が非常用の電源になる(ハイブリッド車などの電気で動く車であれば可)という要素は災害の多い日本では重要視される要素であり電気自動車のメリットです。実際に2019年の台風15号による記録的な暴風雨で停電した一帯に電気自動車やハイブリッドカーが非常用電源として活躍しました。
メリット5:電気自動車は、補助金・減税・割引制度がある
電気自動車は、環境に優しいという側面から次世代の車として普及が進んでおり、補助金や減税・割引制度を設け国や地方自治体も購入の後押しをしています。どのような補助金や減税・割引制度があるのかは次項で紹介していきます。
電気自動車の補助金・税金・割引制度
家庭用電気自動車の補助金・税金・割引制度について紹介します。
補助制度
電気自動車は、クリーンで環境に優しい車ですが、ガソリン車に比べると高いのが現状です。そのため、ガソリン車との負担額の差を縮めるために、国や自治体は補助金の交付や税優遇制度等を設けています。
国の支援制度
【普通自動車<3ナンバー車>】
補助金額 = 一充電走行距離1㎞当たりの補助単価 2千円/㎞ × (一充電走行距離 - 200)
【普通自動車<3ナンバー車以外>・小型自動車・軽自動車】
補助金額 = 一充電走行距離1㎞当たりの補助単価 1千円/㎞ × 一充電走行距離
※補助金額は、一充電走行距離に応じて算定されます。
※給電機能が標準装備、又はメーカーオプション設定で装備した車両は、上限額にかかわらず一律で20千円の増額となります。
※電気自動車の補助金上限額は、400千円です。
地方自治体の支援制度
全国の各地方自治体でも電気自動車の補助金制度を設けています。自治体によっては、融資や税制の特例措置を行っているところもあります。自分の住む自治体にどのような制度があるかは、一般財団法人 次世代自動車振興センターの全国の地方自治体の補助制度・融資制度・税制特例措置で確認することができます。若しくは、同サイトの自治体など補助金など情報 検索で検索することも可能です。どれだけ補助を受けられるのか確認してみるとよいでしょう。
税制について
2019年10月1日に自動車に関する税制度が大きく変わりました。自動車の購入時に課税される自動車取得税は廃止され、環境性能割が導入されています。新しい制度の環境性能割では、電気自動車を購入した場合は、取得した時の税金は非課税であるたため、税金はかからないことになります。自動車重量税に適用されていたエコカー減税も見直されています。エコカー減税と同様に排出ガス性能及び燃費性能に優れた自動車に対して適用となるグリーン化特例に係る減税についても対象となれば維持費が軽減できます。
環境性能割の税制度
燃費性能等 | 税率 | ||
---|---|---|---|
自家用 | 営業用 | ||
登録車 | 軽自動車 | ||
電気自動車等 | 非課税 | 非課税 | 非課税 |
★★★★かつ2020年度燃費基準+20%達成車 | |||
★★★★かつ2020年度燃費基準+10%達成車 | 1% | ||
★★★★かつ2020年度燃費基準達成車 | 2% | 1% | 0.5% |
★★★★かつ2015年度燃費基準+10%達成車 | 3% | 2% | 1% |
上記以外 | 2% |
自動車重量税に適用となるエコカー減税(2021年4月30日まで)
自動車重量税に適用となるエコカー減税は、燃費性能に応じて、新車の初回車検の際か2回目車検を受けるかの1回に限り特例措置の適用を受けることができます。
軽減税率 | ||
---|---|---|
初回車検時 | 2回目車検時 | |
電気自動車等 | 免税 | 免税 |
2020年度燃費基準+90%達成 | ||
2020年度燃費基準+80%達成 | なし | |
2020年度燃費基準+70%達成 | ||
2020年度燃費基準+60%達成 | ||
2020年度燃費基準+50%達成 | ||
2020年度燃費基準+40%達成 | ||
2020年度燃費基準+30%達成 | 50% | |
2020年度燃費基準+20%達成 | ||
2020年度燃費基準+10%達成 | 25% | |
2020年度燃費基準達成 |
自動車税及び軽自動車税に適用となるグリーン化特例に係る減税
燃料性能等 | 軽減税率 | |||
---|---|---|---|---|
2019年4月から2021年3月までの間に購入した場合 | 2021年4月から2023年3月までに間に購入した場合 | |||
登録車 | 軽自動車 | 登録車 | 軽自動車 | |
電気自動車等 | 概ね75% | 概ね75% | 概ね75% | 概ね75% |
★★★★かつ2020年度燃費基準+30%達成車 | 概ね50% | なし | ||
★★★★かつ2020年度燃費基準+10%達成車 | 概ね50% | 概ね25% |
自動車保険料の割引について
電気自動車であっても自動車保険への契約の必要性は変わりません。ただし、保険会社も環境問題への取り組みの一つとして電気自動車をはじめとしたハイブリッドカーや低燃費車などを対象とした「エコカー割引」を導入する保険会社が増えており、エコカー割引の適用となれば自動車保険に安く契約できます。自動車保険を販売する保険会社も環境問題に配慮した車の普及に保険料を割り引くという形で貢献しています。自動車を運転する人にとって、自動車保険料の支払いは必要不可欠な車の維持費です。電気自動車は、自動車保険料の割引も受けられるためガソリン車より保険料を安く抑えることも可能です。対象車種や割引条件などは保険会社によって異なります。実際に適用となる条件については保険会社に確認しましょう。
まとめ
日本も2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする、という目標が注目されています。私たちには遠い未来のような印象もありますが、「脱炭素社会」に向けた取り組みは既に始まっています。これから、私たち一人ひとりが取り組む課題でもあり、環境に配慮したライフスタイルは当たり前になっていくかもしれません。
自動車業界では、環境に優しい車の開発が進んでいます。「電気自動車は高い」と思っている人も多いでしょう。しかし、国や地方自治体の様々な制度を利用すればガソリン車と変わらないコストで所有できるかもしれません。更に電気自動車はこれからますます技術改革が進んでいくでしょう。