自動車保険の保険料はさまざまな要素から算出されていますが、その中の一つに車の使用目的があります。多くの保険会社では「日常・レジャー使用」、「通勤・通学使用」、「業務使用」に分かれていますが、業務使用は3つの中で一番保険料が高くなってしまいます。業務使用でも保険料を抑えることができるのでしょうか?
業務使用だと保険料が高い
車の使用目的が業務の場合、日常・レジャー使用や通勤・通学使用と比べて保険料が高くなる傾向にあります。車を業務に使用する場合、車を運転する時間や走行距離が長くなる傾向にあり、事故に遭うリスクも高くなるからです。
使用目的 | 基準 | リスク | 保険料 |
---|---|---|---|
業務 | 年間を通して週5日以上もしくは月15日以上業務に使用する場合 | 高い | 高い |
通勤・通学 | 業務使用に該当せず、年間を通じて週5日以上もしくは月15日以上通勤・通学に使用する場合 | 中 | 中 |
日常・レジャー | 業務使用にも通勤・通学使用にも該当しない場合 | 低い | 安い |
※保険会社によって基準が異なる場合があります。詳細は保険会社にご確認ください。
自動車保険は契約者間で公平になるように、事故のリスクが高い人は保険料が高く、事故のリスクが低い人は保険料が安くなるようになっているので、業務使用の場合は保険料が高くなる傾向にあるのです。
虚偽の使用目的を申告してはいけない
業務使用だと保険料が高くなるからといって契約時に保険料の安い日常・レジャー使用などと偽って申告してはいけません。車の使用目的は告知事項の一つであり、虚偽の申告を行った場合は事故時に保険金が支払われないことがあります。
また、使用目的は契約時の告知義務だけでなく、保険期間中に内容の変更があった場合に保険会社に連絡する通知義務もあります。保険期間の途中で使用目的の変更があった場合には保険会社に遅滞なく連絡するようにしましょう。
業務使用と通勤・通学使用のどちらを選ぶ?
社用車のない会社に車で通勤して、たまに業務でも自分の車を使用しているというような場合など、業務使用と通勤・通学使用のどちらを選ぶべきか迷うことがあります。この場合に選択する基準となるのが、「年間を通じて週5日以上もしくは月15日以上車を業務に使用しているか」です。
※保険会社によって基準が異なる場合がありますので、詳細は契約する保険会社にご確認ください。
例として、業務使用にあたるのか、通勤・通学使用にあたるのか、3つの事例で紹介します。
毎日通勤に車を使用していて、業務にも月に数日、自分の車を使用している場合
業務に使用しているのが月に数日なので業務使用を選ぶ基準には達していません。毎日通勤に車を使用しているので、通勤・通学使用の基準は満たしているため、車の使用目的は通勤・通学使用となります。この場合、たまにの業務中に事故を起こしてしまった場合も補償を受けることが可能です。また、普段の買い物や旅行などに車を使用して事故を起こした場合も補償を受けられますのでご安心ください。
毎日通勤に車を使用していて、業務にも月に20日ほど自分の車を使用している場合
業務に月20日ほど自分の車を使用しているので業務使用の基準を満たしており、車の使用目的は業務使用となります。業務使用を選択した場合、業務中ではなく通勤中に事故を起こした場合も補償を受けることができます。また、普段の買い物や旅行などに車を使用して事故を起こした場合も同様に補償を受けることが可能です。
普段はマイカー通勤のみで業務に車を使用しないものの、ある月のみ20日ほど業務に自分の車を使用する場合
普段は業務に車を使用しないものの、仕事の都合上などで、ある月のみ20日ほど業務に自分の車を使用していたという場合についてです。この場合、年間を通じて継続的に業務に車を使用しているわけではないので業務使用にはあたりません。そのため、通勤・通学使用を選ぶことになります。
業務使用でも安くする方法はある?
業務使用の場合、日常・レジャー使用や通勤・通学使用と比べて保険料が高くなってしまいます。保険料を安くするためにどのようなことができるのか、いくつか方法を紹介します。
年齢条件を厳しくする
自動車保険を契約する際にあらかじめ契約対象の車を運転する人の年齢を制限することで保険料を安くすることができます。10代や20代前半などの若年層は事故率が高いという統計データがあり、そうした年齢代の人を補償対象外とすることで保険料を安くすることができるのです。また逆に、全年齢を対象とすると保険料は高くなります。
自身が20歳以下という場合などには年齢条件を厳しくすることはできませんが、そうでない場合には21歳以上補償や26歳以上補償など、車を運転する人の中で最も若い人の年齢で設定するようにしましょう。なお、年齢条件が適用される範囲は基本的に以下の通りなので、それ以外の人の年齢については考慮に入れる必要はありません。
- 記名被保険者(車を主に運転する方)
- 記名被保険者の配偶者
- [記名被保険者またはその配偶者]の同居の親族
- 上記1~3に該当する方の業務(家事を除く)に従事中の使用人
※記名被保険者が法人の場合には、業務に従事する使用人も含めて最も若い方の年齢に合わせて設定する必要があります。
保険会社を比較する
自動車保険は保険会社によって補償内容や保険料などが異なります。そのため、保険料を安くしたいのであれば保険会社を比較することが大切です。
走行距離区分を比較する
注目したいポイントの一つに走行距離があります。保険料が安い傾向にあるダイレクト型(ネット型)の自動車保険では走行距離が多いほど保険料が高くなるようになっている場合が多いですが、業務に使用している場合は走行距離が多くなってしまうケースも多いのではないでしょうか。
そこで使える一つの手として、各保険会社の走行距離区分を比較して、自分に有利な走行距離区分を採用している保険会社を探すという方法があります。もちろん、走行距離以外の内容でも保険料は変わるので他の条件も考えると高くなってしまうこともありますが、保険料を安くするための一つの考え方として覚えておくとよいでしょう。
一括見積もりサービスを利用する
保険会社を比較するうえでもう一つ押さえておきたいのが一括見積もりサービスを利用することです。上で走行距離区分を比較する例を紹介しましたが、その他の項目の内容も含めて保険料を比較するには結局、各社の見積もりを取る必要があります。
しかし、日本には保険会社が何社もあるので一社一社個別に見積もりを取っていくのは面倒で時間がかかります。そこで便利なのが自動車保険の一括見積もりサービスです。車の情報や運転者の情報、希望する補償内容などの情報を入力することで一度に複数の会社に見積もりを請求することができます。ぜひ利用して自分に合った保険会社を見つけましょう!
まとめ
車の使用目的は告知事項でもあり、正確に申告する必要がありますが、業務使用の場合は保険料が高くなってしまいます。適切な年齢条件を設定する、一括見積もりサービスを利用して保険会社を比較するなどして保険料を安くしましょう。また、月に数日しか業務に使用していない場合は使用目的を業務にする必要がないので、心当たりがある場合は車の使用目的を見直してみましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。