自動車保険や火災保険に特約として付加できる『個人賠償責任保険』は日常生活上のあらゆるトラブルに対応できます。
せっかく使えたのに、請求すること自体が漏れていたらもったいないです。そんなことがないように、個人賠償責任保険が支払われる場合と、支払われない場合を解説します。
もくじ
個人賠償責任保険とは?
個人賠償責任保険とは、被保険者が日常生活における偶然の事故により他人をケガさせたり、またはその他人の財物を壊したために、法律上の賠償責任を負担することによって被る損害をカバーする保険です。
示談代行サービスも付いているので、相手方との間に交渉のプロである保険会社が入って円満解決に向けて話を進めてくれます。万が一話し合いがこじれてしまった場合は心強い保険です。
対象となる範囲
個人賠償責任保険が適応される範囲は、記名被保険者本人のみでなく、記名被保険者の配偶者、同居の親族、別居の未婚の子も対象となりますので、一緒に住んでいるご家族も補償の対象となります。
例えば、離れて暮らしている下宿中の大学生の子どもの事故や、一緒に暮らしている子供(6歳)が石を投げて駐車中の車のフロントガラスを割ってしまったなどのトラブルなども補償の対象となります。
支払いとなる例
保険金の支払い対象となるポイントは次の①②のとおりです。
①住宅の所有・使用・管理に起因する偶然の事故
※住宅の敷地内で発生した事故に限ります。
②日常生活に起因する偶然の事故
※旅行や運動中を含む通常の生活で起きた事故に限ります。
これらを踏まえると、日常生活上で賠償責任が発生するような場面は意外と沢山あります。支払い対象となる代表的な例を紹介します。
子供が他人の物を壊した。
子供が未成年の場合は、責任能力はないとみなされ賠償責任を負う必要はありません。その代わり、親が監督義務者として、相手方への賠償責任を負わなければなりません。
・6才の子供がいたずらでバットを振り回し、隣の窓ガラスを割った。
自転車における事故
故意または過失によって他人に損害を加えた場合には、その事故の損害に対して法律上の賠償責任を負う必要があります。
事故発生を回避する措置を怠ったり、事故発生を予見できたのにもかかわらず不注意により回避しなかった場合には「過失」が認められてしまい、事故により発生した損害を賠償しなければなりません。
・自転車を運転中ブレーキが効かなくなって、歩行者に追突、けがをさせてしまった。
住宅の欠陥による損害
住宅の所有・使用・管理に起因する偶発的な事故が対象となります。ただし、被保険者が所有する財物の損害については対象外となりますので、自分の部屋に発生した損害や工事費用などは対象とはなりません。
・自宅の門扉が老朽化により倒れ、通行人をケガさせてしまった。
飼い犬が他人に噛みついた
動物の占有者もしくは保管者には、高い注意義務が課せられています。飼い犬が他人に損害を加えた場合、その飼い主が動物占有の責任者となり、飼い犬の加害行為による損害賠償責任を負わないといけません。
・自宅に遊びに来ていた友人が飼い犬に触ろうとして手を差し出したところ、噛みついてケガをさせた。
スポーツで他人にケガをさせた
スポーツのルールに著しく違反し他人に損害を加えた場合には、「違法性」があるとみなされ損害賠償責任が発生します。
なお、きちんとルールに則ったうえで相手方に損害を与えてしまった場合、加害行為自体はあるものの通常許容された行動での出来事である為、「違法性」がないとして賠償責任は発生せず保険金の支払い対象とはなりません。
・路上でゴルフの素振りをしていた際、そばを通った自転車にぶつかりケガをさせてしまった。
支払われない場合
保険金が支払われない場合のポイントは次の①~③です。
①被保険者が所有・使用・管理する物への損害
②職務遂行に直接起因する損害
③車の所有・使用・管理に起因する損害
これらを踏まえたうえで、支払われない場合の代表的な例を紹介します。
自動車運転中の損害
自動車の所有・使用・管理に起因する損害は、お支払いの対象外です。したがって、自動車の運行に起因する事故はお支払いとはなりません。
以下の例のように車のドアを開ける動作は「使用」に該当する為、対象外となります。
業務中の損害
個人賠償責任保険はそもそも日常生活の賠償事故を補償する保険であることからも、職務遂行に直接起因する損害はお支払いの対象外です。
なお、仕事の休憩中などは職務遂行中には該当しない為、支払対象となります。
同居の家族に対する損害
個人賠償責任保険は、偶然の事故によって他人をケガさせたり他人の物を壊してしまった場合の損害賠償を補償する保険です。
世帯を同じくする親族に対する賠償責任は、お支払いの対象外となります。その親族が「同居」しているか「別居」しているかがポイントとなります。
借りた物に対する損害
被保険者が所有・使用・管理する物の損害はお支払いの対象外です。したがって、他人から借りた物への損害は所有者が他人でも被保険者が管理している状態に当たる為、お支払いの対象とはなりません。
・友人から預かっている小鳥を不注意から逃がしてしまった。
不可抗力による損害
不可抗力による損害は、法律上の賠償責任が発生しないことから、お支払いの対象外です。不可抗力による損害は、阻止することが不可能であり、過失は発生せずその損害賠償責任を負う必要はありません。
・自宅の屋根に積もった雪が自然落雪で隣家の窓ガラスを割った。
自転車保険との違い
自転車運転中に事故を起こしてしまった際の損害賠償に備える為の保険として自転車保険がありますが、個人賠償責任保険でも自転車運転中の事故に備えることができます。そこで、どっちに加入したらよいのでしょうか。
個人賠償責任保険と自転車保険の違いは自転車運転中の「自分のケガへの備え」があるかないかです。
自転車保険は一般的に、自分のケガへの備えである傷害保険と、相手の損害賠償に備える個人賠償責任保険の2つの補償から成り立っています。
つまり、自転車保険では自転車事故における自分のケガと相手に対する損害賠償に備えることができます。保険商品によっては、保険料を抑えた個人賠償責任保険のみのプランや、自転車に起因する事故のみならずその他交通事故によるケガや、日常生活上の損害賠償まで幅広く補償する内容など保険商品によって様々です。
一方、個人賠償責任保険は、相手方に対して法律上の賠償責任が生じた場合にその損害に対して補償するものです。したがって、個人賠償責任保険の補償の範囲は、相手に対する損害賠償のみであり、自分のケガや損害については、賠償責任があるわけではないので、補償されません。
したがって、自転車事故やその他の交通事故におけるご自身のケガについても備えてきたいかどうかでどっちにするかを検討するとよいでしょう。
こんな人におすすめ!
自転車をよく利用する人
警察庁によると、死亡・重傷事故全体の件数は減少しているものの、自転車が関与する事故は毎年増加しています。そして、その自転車が関与する死亡・重傷事故の約7割超は自転車側の交通義務違反が原因となっています。
自転車は免許なしで誰でも利用できる身近な交通乗用具ですが、道路交通法上は「軽車両」に該当し、自動車と同じように様々な道路交通法の規定に従う必要があります。
自動車には自動運転や事故を防ぐ機能などがありますが、自転車にはありません。自分の操作で全て決まってしまいます。一時不停止、信号無視、ながら運転など、少しの油断や軽い気持ちから交通義務違反となり結果として重大な事故を引き起こすこともあります。
個人賠償責任保険の限度額は1億円と設定されているのがほとんどですから、多くの場合は、賠償しなければならない範囲内全額カバーすることができます。
自転車の賠償事故は高額になりやすい?!
2013年7月に小学生の男の子が自転車運転中に歩行中の女性(62歳)と正面衝突した事例があります。男子は距離10mになるまで女性に気付かず、時速20〜30キロで衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負いそのまま意識が戻らず植物状態となりました。
この被害女性への賠償金額は9,520万円です。
万が一の自転車事故で数千万円から数億円の賠償が命じられた場合、すぐに支払うことはできますでしょうか。
加害者が未成年の場合は、監督義務違反として保護者が支払いに応じないといけません。
子供の自転車事故でも被害者が亡くなった場合は、賠償金額が数千万円になる可能性があります。
重篤な後遺障害が残ってしまった場合だと、治療費、休業損害、慰謝料、だけでなく、将来の逸失利益、将来の介護費用などが損害として加わる為、被害者が亡くなるよりも損害賠償金が膨れ上がり、賠償金額が2~3億円以上となるケースもあります。
現在、ほとんどの都道府県で自転車保険の加入が義務もしくは努力義務化されています。加入義務化が進んだ背景として、自転車事故の発生件数増加と、賠償金の高額化が一因となっています。
もしも、高額賠償の判決を言い渡された加害者に支払能力がなかった場合、重大な「損害」を被った被害者は支払を受けることが難しくなります。そうなると、加害者はもちろん被害者にとっても個人賠償責任保険は重要になるのではないでしょうか。
子供がいる家庭
小さな子どもがいる家庭はいくら親が注意していても、目を話した隙に物を壊してしまうようなトラブルはよくありますよね。幼い子供は責任能力がないとみなされ、損害を与えた場合の責任を負う必要はありません。
しかし、親が監督義務者として責任を負う旨が法律で定められています(民法714条「責任無能力者の責任」)。
ペットを飼っている人
飼い犬においても、いくらリードを付けて散歩をしていても急に他人に噛みついてしまうなど、想定外のトラブルも考えられます。万一飼い犬が他人に損害を与えた場合は、占有者(飼い主)や保管者が賠償責任を負わないといけない旨が法律で定められています(民法718条「動物占有者の責任」)
親としての監督義務者の責任、飼い主としての占有者の責任をカバーできるのが個人倍賞責任保険です。
請求方法
個人賠償責任保険を請求する際は、まずは加入保険会社のフリーダイヤルへ電話してみましょう。
「これは請求できるの?」
「これって保険金おりるの?」
様々に思うかもしれませんが、思い当たる節があれば自己判断せずにまずは電話してみてください。請求の対象となるか、保険金が下りるのかは事故状況をヒアリングしてから保険会社が判断することです。
せっかく加入している保険ですから、請求漏れのないようにしましょう。
![]() | 賠償事故が発生したら、まずはご加入の保険会社のフリーダイヤルへ連絡しましょう。懇意にしている代理店さんがあれば、代理店さんに相談してみても良いでしょう。 |
![]() | 事故状況等の確認などのヒアリングが実施され、必要書類の案内が保険会社よりされます。 |
![]() | 提出された資料に基づき保険金額が算定され、 |
![]() | 保険金額を相手方もに保険金額が説明されます。 |