車を買い替えたときに自動車保険の手続きをきちんと行わないと、万が一事故に遭ったときに保険金が適切に支払われないといったリスクが生じかねません。車の買い替え時にはどのような手続きをすればいいのか、しっかりと認識しておきたいところです。
ここでは、車買い替え時に必要な自動車保険の手続きとその方法のほか、手続きに必要なものと買い替え時の注意点について解説します。
もくじ
車買い替え時には自動車保険の手続きが必要不可欠
車を買い替えた際には、自動車保険の手続きが必要です。自動車保険には「自賠責保険」と「任意保険」があり、それぞれ手続きは異なります。
まずは、それぞれの手続きがどのようなものか見ていきましょう。
自賠責保険の手続き
自賠責保険は、正式には「自動車損害賠償責任保険」という名称です。すべての車やバイクが加入しなければならない保険であり、加入しないと車検を受けられず、公道走行ができません。このことから、「強制保険」と呼ばれることもあります。
自賠責保険は車にひもづく契約のため、車を買い替えた場合には新たに加入する必要があります。
また、買い替えに伴い、乗っていた車を廃車(永久抹消登録)や一時抹消登録にする場合には、その車の自賠責保険の解約をすることができます。解約時に保険の契約期間が1ヵ月以上残っている場合には、支払った保険料が払い戻されます。
任意保険の手続き
自賠責保険と異なり、車を所有・使用する人が任意で加入できるのが任意保険です。車を買い替えた場合、任意保険における手続きとしては、「車両入替」手続きが必要となります。車両入替手続きを行うと、現在の保険契約を、買い替えた車に適用させることが可能です。
この場合、現在の保険契約の等級や事故歴、事故有係数適用期間などは記名被保険者(主な運転者)にひもづくため、そのまま引き継がれます。長年無事故であれば、高い割引率が継続されるメリットがあるのです。
なお、車両入替の手続きが遅れたり、手続きを忘れたりしたまま買い替えた車を運転していると、万が一事故に遭った場合、適切な補償が受けられなくなる可能性があります。
車買い替え時の自賠責保険の手続き方法
車を買い替えた場合、すべての車に加入義務がある自賠責保険の手続きは、どのように行えばいいのでしょうか。ここでは、車を買い替えた際の自賠責保険の手続き方法について解説します。
車を販売店で購入した場合
車をカーディーラーや中古車販売店などの販売店で買い替える場合、一般的には自分で手続きを行う必要はありません。車の契約手続きの際に、販売店側でいっしょに自賠責保険の加入手続きも代行してくれるでしょう。販売店に任せられるので、手続きを行う手間が省けるメリットがあります。
また、買い替えの際に古い車を買取査定に出した場合、期間が残った分の自賠責保険料を査定額に上乗せしてくれる車買取店もあります。
車を個人間で譲受した場合
インターネットオークションや友人・知人など個人間で取引し、相手から車を購入したり譲り受けたりして買い替えた場合は、自賠責保険の手続きに関して、自分で行う必要があります。
個人間の取引で車を買い替えた場合の自賠責保険の手続きに必要なものは、主に下記のとおりです。
<個人間の取引で自賠責保険の名義変更に必要なもの>
- 自賠責保険承認請求書
- 自賠責保険証明書
- 自賠責保険を譲り渡したことが確認できる書類
- 自動車検査証のコピー(名義変更済みのもの)※
- 譲渡人の印鑑登録証明書(自賠責保険承認請求書に譲渡人の実印がある場合)
- 譲渡人の本人確認書類のコピー
- 譲受人の本人確認書類(自賠責保険証明書を紛失の場合)
- 自賠責保険料(追加保険料が必要な場合)
※電子車検証の場合、ICタグを「車検証閲覧アプリ」で読み取ることで確認できる「自動車検査証記録事項」の画面を印刷したもの、または電子車検証発行時や更新時に発行される「自動車検査証記録事項」を代わりに提出できます。
<個人間の取引で自賠責保険の新規加入に必要なもの>
- 自賠責保険料(現金)
- 車検証など車台番号等の分かる書類
- 満期を迎える自賠責保険証明書(現在有効な契約がない場合は不要)
手続きは、これらの書類を用意した上で保険会社の代理店などで行います。名義変更については郵送での手続きも可能です。自賠責保険の加入手続きが可能なのは、下記のとおりです。
<自賠責保険の加入手続きが可能な窓口>
- 保険会社の代理店
- カーディーラー、自動車販売店
- カー用品店
- 自動車整備工場
- 運輸支局・自動車検査登録事務所
なお、自賠責保険の契約期間は、車検の有効期間を補うように合わせるのが一般的です。
例えば、自家用乗用車の継続検査の場合は、24ヵ月(2年)で契約を行います。
車買い替え時の任意保険の手続き方法
車を買い替えた場合、自賠責保険だけでなく、任意保険の手続きも必要です。任意保険の手続きは、車の購入先にかかわらず、自分で行う必要があります。
車買い替え時の任意保険の手続きは、一般的に下記の流れで行います。
1.必要な情報の準備
任意保険の車両入替には、車両の登録番号など、いくつか必要な情報があります。これらの情報や記載された書類を準備します。詳細は後述します。
2.納車日が決まったら保険会社に連絡する
買い替える予定の新しい車が納車される日が決まったら、加入する保険会社に連絡して手続きを行います。手続きは電話やウェブサイトのマイページ、代理店の窓口などで行えます。手続きを納車前に行っておけば、納車日に新しい車を運転したときから保険の対象となる車が切り替わります。
3.保険料と補償内容の確認・申込をする
車両入替手続きをする際には、保険会社に保険料と補償内容について確認します。車種や型式が変わることで、保険料が変わる可能性があるのがその理由です。
加入している保険会社に詳細を問い合わせ、もし保険料が大幅に上がる場合には、複数の保険会社に見積もりをとって、比較・検討することも考えましょう。
保険料と補償内容に納得したら、車両入替の手続きを申込みます。
4.保険料の差額の精算をする
これまでの車と買い替えた新しい車のあいだで保険料が変わり、支払う金額が増えたり減ったりすることも想定されます。その際には、保険料の差額を精算します。
差額が返金されることもあれば、不足した分の保険料が追加で発生することもあるので注意してください。
これらの手続きをすべて完了すれば、買い替えた新しい車に対する任意保険の補償が、納車日から適用されます。
任意保険の車両入替の条件
車を買い替えた際、任意保険の車両入替手続きを行うには、大きく2つの条件があります。ここでは、任意保険の車両入替の条件について解説します。
車を買い替えた所有者に関する条件
任意保険の車両入替においては、車を買い替えた所有者に関して条件が設けられていることが一般的です。具体的には、買い替えた車の所有者が、下記のいずれかに該当する必要があります。
<車両入替に必要な、買い替えた車の所有者の条件>
- 買い替えた車の所有者が、車両入替前の車の所有者であること
- 買い替えた車の所有者が、車両入替前の記名被保険者であること
- 買い替えた車の所有者が、車両入替前の記名被保険者の配偶者であること
- 買い替えた車の所有者が、車両入替前の記名被保険者またはその配偶者の同居の親族であること
このほか、所有者がカーディーラーやカーリース会社になっている場合、使用者が上記4つの条件のいずれかに当てはまることを条件としている保険会社もあるので、事前の確認が必要です。
入れ替えた車に関する条件
任意保険の車両入替が可能となるのは、変更前の車と新しく購入して入れ替えた車が同一の用途・車種に該当する場合です。自家用8車種内であれば同一の用途・車種として入れ替えが可能です。自家用と営業用との間では用途が異なるので入れ替えはできません。
自家用8車種とは、下記の車種を指します。
<自家用8車種の内訳>
- 自家用普通乗用車
- 自家用小型乗用車
- 自家用軽四輪乗用車
- 自家用軽四輪貨物車
- 自家用普通貨物車(最大積載量0.5t以下)
- 自家用普通貨物車(最大積載量0.5t超2.0t以下)
- 特種用途自動車(キャンピング車)
同一の用途・車種の間で車を入れ替えれば、現在の任意保険の契約をそのまま引き継ぐことができます。
なお、新しく購入する車ではなく、すでに所有している車と入れ替えをすることもできます。その場合には、上記条件の他、契約車を廃車や譲渡、カーリース会社に返還した場合という条件が加わります(保険会社によって詳細の条件が異なる場合があります)。
任意保険の車両入替に必要なもの
任意保険の車両入替手続きにおいては、いくつか必要な書類や情報があります。ここでは、任意保険の車両入替に必要なものについて解説します。
車両入替後の車の情報(車検証など)
車検証は、車の所有者や車両の固有情報などを確認するために不可欠な書類です。保険会社へ新しい車の情報を伝える際には、これらの情報が正確であることが求められます。
具体的には、車検証に記載された車両の所有者名や車名、登録番号(ナンバープレートの番号)、型式のほか、車台番号、初度登録年月といった情報が必要です。
金融機関の口座情報
車両入替時には、保険料の支払いに使用する金融機関の口座情報も必要です。これは、保険料の引き落としや、保険料の差額が発生した際の精算時に必要となります。
保険証券・保険契約継続証
車両入替時には、現契約の内容がわかる保険証券や保険契約継続証が必要になることもあります。保険証券・保険契約継続証には、契約者や主に車を運転する人である「記名被保険者」の氏名のほか、等級や事故有係数適用期間などが記載されています。
車のオドメーターの数値(ダイレクト型の場合)
ダイレクト型自動車保険の場合には、車両入替後の車のオドメーターの数値が必要となることがあります。
オドメーターとは、「積算走行距離」を表す距離計のことです。これは、保険の適用開始時点での走行距離を確認するためにあります。正確な走行距離の値を保険会社に伝えれば、適切な保険料が算出されるでしょう。保険会社によっては、車両入替前の車のオドメーターの数値が求められることもあります。
なお、トリップメーター(区間走行距離計)とは異なりますのでご注意ください。
車両入替後の車の購入金額がわかる書類
代理店型自動車保険の保険会社の場合、車両保険加入の希望者には、車両入替後の車の購入金額がわかる書類の提出が求められることもあるので注意が必要です。
具体的には、注文書・領収書や売買契約書などが挙げられます。
車買い替え時の自動車保険の注意点
車を買い替えて自動車保険の手続きを行う際には、いくつか気をつけておきたいことがあります。最後に、車買い替え時の自動車保険の手続きにおける注意点について解説します。
車両入替の条件に合致しない場合は新規加入扱いになる
前述のとおり、車両入替の手続きを行うには、一定の条件を満たす必要があります。これらの条件に合致しない場合、任意保険は新規加入扱いとなるので注意しましょう。その場合、新規6等級からのスタートとなり、保険料が上がる可能性が高くなります。
これまでの保険契約の等級を引き継いで高い割引率を享受したい場合は、事前に保険会社に確認するようにしてください。
基本的には納車前に手続きを完了する
車両入替の手続きは、基本的には買い替えた新しい車の納車前に完了させましょう。納車前に行わないと、うっかり手続きを忘れてしまって保険契約が途切れてしまう可能性があり、万が一の事故時に補償を受けられないリスクが高まるからです。
納車前に行えば保険契約が中断することなく、補償が適用されます。
納車前に車両入替できなかった場合は、車買い替えから30日以内に行う
納車前に車両入替の手続きができなかった場合は、新しい車に買い替えてから30日以内に行うようにしましょう。期間内に車両入替手続きを行わないと、任意保険の適用が無効になる可能性があります。
なお、この30日以内というのは、多くの保険会社が設けている猶予期間です。猶予期間を過ぎると補償を受けられない、等級を引き継げないなどの不具合が生じる場合があるので、猶予期間があると油断せずに早め早めに手続きを行うことが大切です。
車両入替前に保険料と補償内容を確認する
車両入替手続きを行う際には、保険料と補償内容をよく確認しましょう。車両入替で車種や型式などが変わった場合、保険料が高くなることがあります。また、「これまで車両保険をつけていなかったけど、新車に買い替えるから車両保険を追加したい」、などのように補償内容を変更する場合もあります。
「これまでと同じ」と適当に流すのではなく、しっかりと確認することが大切です。
車買い替え時は、自動車保険の見直しのチャンス
車を買い替えた際には、自賠責保険や任意保険といった自動車保険の手続きが必要となります。任意保険の車両入替手続きは、代理店窓口や保険会社のウェブサイトで行うことになりますが、基本的に納車前に行うことが重要です。
車両入替を適切に行わないと補償期間に空白ができてしまい、万が一事故に遭った際に適切な補償を受けられないといったリスクが生じる可能性があります。
車両入替手続きのタイミングは、保険料や補償内容を改めて確認するタイミングともなります。満期で更新のタイミングだとよく確認しない人も多いですが、車を変えるタイミングでは手続きの際やその完了の際に改めて補償内容や保険料を確認することになります。もし不足する内容や余分な内容などがあれば合わせて補償内容の見直しを行うとよいでしょう。
また、補償内容や保険料に不満があるのであれば他の保険会社に乗り換える手もあります。各社の見積もりを取って比較してみるとよいでしょう。ただし、保険期間の途中で乗り換えるのは等級の進行や解約返戻金などの面でデメリットがあるので注意してください。待てるのであれば、保険会社の変更は満期日を迎えるタイミングで行うのがよいです。
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