自動車保険は事故率が高い10代や20代の保険料が高くなっています。実際のところ、10代や20代は他の年齢代と比べてどの程度事故率が高いのでしょうか?また、最近は高齢ドライバーによる事故の報道も増えています。高齢ドライバーの事故率と若者の事故率はどちらが高いのでしょうか?
もくじ
年齢層別の交通事故率
原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たりの交通事故件数を警察庁「令和5年中の交通事故の発生状況」より紹介します。なお、「原付以上運転者」とは、自動車、自動二輪車および原動機付自転車の運転者のことをいい、「第1当事者」とは、最初に交通事故に関与した事故当時者のうち最も過失の重い者をいいます。
上図の通り、免許所有者10万人当たりの事故件数は16~19歳が1025.3件と飛びぬけて多く、次いで20~24歳の589.5件、85歳以上の519.9件が多いです。35歳~69歳はほぼ横ばいですが、70~74歳から事故率が上昇しています。
高齢者の事故が増えているように感じるのはなぜ?
高齢者の交通事故について報道の影響から増えているように感じている人も多いと思います。確かに直近の2、3年はコロナ禍で大きく下落した反動で若干交通事故件数が増えていますが、それは高齢者に限ったことではありません。長期的なトレンドとしては高齢者の交通事故件数は減少しています。
高齢者人口の増加の影響を除くために免許保有者10万人当たりの事故件数の推移をみると10年前と比べて大きく下落していることが分かります。直近2、3年はコロナ禍による外出自粛で大きく下がった2020年の反動もあって若干増加していますが、2019年の件数より低いか同程度です。
それでは、なぜ高齢者の事故が実態よりも増えているように感じるのでしょうか?その理由としては次の2点が考えられます。
高齢化で全事故に占める割合が増加している
日本は高齢化により高齢者人口が全人口に占める割合が増えています。それに伴い、全事故に占める高齢運転者による事故の割合も増えています。それゆえ、高齢者による事故が増えていると感じるのだと考えられます。
出典:警察庁「令和5年中の交通事故の発生状況」を加工
死亡事故に限定すると高齢者事故率が高く印象に残りやすい
死亡事故に限った場合、免許保有者10万人当たりの事故件数は高齢者が若年層を若干上回ります。報道の取り上げ方としても報道を見聞きしたときの印象の残り方としても死亡事故の方が大きいことが考えられ、高齢者の事故件数が実態以上に多く感じられるのではないかと考えられます。
出典:警察庁「令和5年中における交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」
出典:警察庁「令和5年中における交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」
自動車保険では26歳以上の中を6区分に細分化
自動車保険において、運転者年齢条件で全年齢補償よりも21歳以上補償、21歳以上補償よりも26歳以上補償の方が保険料が安くなるということは広く知られています。事故率の高い年齢層を補償対象から外すことでリスクが減り、保険料を安くすることができるのです。しかし、上で紹介してきた通り、高齢者になると事故率が上昇します。こうしたリスクの違いを反映させるために、自動車保険では運転者年齢条件の26歳以上補償について、記名被保険者(契約車両を主に運転する方)の年齢に応じてさらに6区分を設けています。
※本内容は参考純率に関するもので、保険会社により取り扱いが異なる場合があります。
まとめ
高齢者の事故が多いような印象を持っている方もいると思いますが、データから見ると10代や20代前半の方が免許保有者10万人当たりの事故件数は多くなっています。高齢者の事故が多いような印象があるのは、高齢化に伴い全事故に占める高齢者による事故件数が大きくなっていること、死亡事故に限ると若年層よりも高齢者の方が免許保有者10万人当たりの事故件数が多く、印象に残りやすいことが考えられます。いずれにせよ大切なことは交通事故を起こさないことです。交通事故件数は年々減っていますが、それを途切れさせることなく継続させていけるようにしましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。