一般的に自動車保険は1年契約で行うことが多いですが、中には3年契約や5年契約といった1年を超える期間で契約できる保険会社もあります。1年で契約することが多い自動車保険ですが、長期契約で契約することのメリットには何があるのでしょうか。長期契約の注意点、メリット・デメリットを紹介します。
もくじ
自動車保険の長期契約とは?
自動車保険の長期契約とは、契約期間が3年、5年など契約期間を1年超で契約する保険契約です。保険料や等級の進み方、契約期間中に乗り換えすることはできるのかといったことなど、長期契約で行う自動車保険は1年契約で行う自動車保険と異なる点がいくつかあります。
長期契約を取り扱う保険会社
自動車保険には、大きく分けて「代理店型」と「ダイレクト型」(通販型やネット型などとも呼ばれる)があります。1年契約の自動車保険は、代理店型もダイレクト型のどちらも取り扱っていますが、長期契約の自動車保険に契約できるのは代理店型の自動車保険のみになります。
長期契約のメリット・デメリット
長期契約のメリット・デメリットについて紹介します。ここでは、長期契約に多い3年契約を例にして考えてみましょう。
長期契約(3年)のメリット
1.事故を起こしても契約期間中は保険料が上がらない
長期契約のメリットとして挙げられるのは、契約期間中は等級に影響する事故を起こしても保険料が高くならないという点です。
例えば3年契約を行った際の保険料は、3年間無事故であることを前提として契約時に3年間分の保険料を算出します。そして、3年間の契約期間中に事故を起こしてしまっても契約期間中の保険料は上がりません。翌年の保険料が高くなってしまう1年契約と比べると契約期間中の保険料が上がらないという点は大きなメリットでしょう。
契約時10等級(無事故)で1年目に事故を起こした場合の例
3年契約の場合:10等級→11等級→12等級と進むと仮定した保険料で変化なし
1年契約の場合:10等級の保険料→事故あり7等級の保険料→事故あり8等級の保険料
なお、契約期間中に起こした事故による等級ダウンの影響は契約期間満了後の保険契約に反映されることになります。上の例のように1年目に1件のみというような場合は低くなった等級の影響が小さくなるので、これもメリットといえるでしょう。
2.一括払いによる保険料の割引
長期契約を取り扱う保険会社では、長期契約の保険料一括払いによる割引を設けているところもあります。一度に大きな金額を支払う必要がありますが、割引が適用となれば1年あたりの保険料は安くなります。長期契約に関する保険料や割引に関しては、保険会社や代理店に確認してみましょう。
3.毎年の更新の手間が不要
1年契約で行う自動車保険は毎年更新の手続きが必要になります。更新の手続きは、契約中の自動車保険の満期が近づくと保険会社や代理店から届く案内に基づいて行います。長期契約であれば、契約期間中は毎年行わなければいけない更新の手続きに煩わされることがなくなります。更新の手続きを忘れていたため気づかないうちに無保険の状態になってしまうようなこともなくなるので安心です。
長期契約のデメリット(3年)
1.事故を複数回起こすと次回契約時に保険料が急に高くなる
長期契約では等級に影響する事故を起こしてしまっても契約期間中に保険料が高くなることはありません。しかし、一時的に保険料が高くなることを回避することができても、3年間の満期を迎えて更新するときには事故による等級ダウンが反映された等級と事故有係数適用期間になります。
例えば契約時に10等級で3年間に3等級ダウン事故を2回、1等級ダウン事故を1回起こしたとすると、更新時は3等級での契約となります。無事故10等級は46%の割引、3等級は38%の割増なので保険料が一気に高くなってしまいます。1年契約でも同じように使えば3等級となりますが、事故の翌年に保険料が上がるので心づもりができますし、それによって安全な運転を心がける効果もあるでしょう。
長期契約であれば契約期間中は保険料が上がらないからといって無理な運転はしないようにしましょう。
2.契約期間中は保険料を安くする影響も受けない
契約期間の途中で保険料が安くなる条件に該当するようになってもその適用が遅くなります。例えば、3年間の契約期間中に免許証の色がゴールド免許に変更になったとしても3年間の契約を満了するまではゴールド免許割引の適用は受けられないということになります。
また、3年間の長期契約期間中に保険料の改定や新たなサービスがスタートしても契約期間中は適用外となってしまいます。契約期間中の保険料が契約時に決まるというメリットは保険料の上昇を回避することはできますが、保険料が安くなる恩恵も受けられないということになります。
3.もともとの保険料水準が高い可能性がある
現在、長期契約の自動車保険を取り扱っている保険会社は、代理店型の自動車保険会社に限られます。代理店型自動車保険とダイレクト型自動車保険の保険料を比較するとダイレクト型自動車保険の方が安い傾向にあります。保険会社のホームページから直接申し込みすることができるなど、代理店型に比べ中間コストが圧縮されているためです。
そのため、代理店型でしか取り扱いがない長期契約の自動車保険料はその保険会社で1年契約を更新していくよりも安くなるとはいえ、もともとの保険料が高い可能性があります。長期契約で契約することはできませんがダイレクト型の自動車保険会社で1年契約を繰り返す方が保険料が安い場合もあります。
長期契約期間中に事故を起こしてしまったときの等級の扱い
メリット・デメリットを説明する中で一部例に挙げましたが、長期契約期間中に事故を起こしたときの等級はどのようになるのか例と計算式を紹介します。無事故のときと事故を起こしたときのそれぞれで契約期間満了後の等級はどのように反映されるのか確認しておきましょう。また、等級だけではなく事故有係数適用期間についても併せて紹介します。
長期契約を検討している人は、長期契約期間中に事故を起こしてしまうと保険料が跳ね上がってしまうリスクも把握しておきましょう。
等級の進み方の例
無事故の場合
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | |
---|---|---|---|---|
1年契約 | 10等級 | 11等級 | 12等級 | 13等級 |
3年契約 | 10等級 | 13等級 |
1年目に3等級ダウン事故を起こした場合
1年目(事故) | 2年目 | 3年目 | 4年目 | |
---|---|---|---|---|
1年契約 | 10等級 | 7等級(3年) | 8等級(2年) | 9等級(1年) |
3年契約 | 10等級 | 9等級(2年) |
()内は事故有係数適用期間を表します。
2年目、3年目に3等級ダウン事故を1回ずつ起こした場合
1年目 | 2年目(事故) | 3年目(事故) | 4年目 | |
---|---|---|---|---|
1年契約 | 10等級 | 11等級 | 8等級(3年) | 5等級(5年) |
3年契約 | 10等級 | 5等級(5年) |
()内は事故有係数適用期間を表します。
この事例の場合、10~12等級の保険料だったのが急に事故あり5等級の保険料となるので、3年契約終了後の保険料は大きく上がることになります。
等級と事故有係数適用期間の計算式
等級の計算式
前契約の等級+(前契約の保険期間の年数-3等級ダウン事故の事故件数-1等級ダウン事故の事故件数)- 3×3等級ダウン事故の事故件数 - 1×1等級ダウン事故の事故件数
※( )内がマイナスになる場合、( )内は「0」として計算します。
計算例1
- 前契約の等級:10等級
- 前契約の保険期間:3年
- 3等級ダウン事故:1回
- 1等級ダウン事故:0回
この場合、更新時の等級は
10+(3-1-0)-3×1-1×0=9
で、9等級となります。
計算例2
- 前契約の等級:10等級
- 前契約の保険期間:3年
- 3等級ダウン事故:1回
- 1等級ダウン事故:2回
この場合、更新時の等級は
10+(3-1-2)-3×1-1×2=5
で、5等級となります。
事故有係数適用期間の計算式
(前契約の事故有係数適用期間 - 前契約の保険期間の年数 / 2)+ 3 × 3等級ダウン事故件数 + 1 × 1等級ダウン事故の事故件数 - 前契約の保険期間の年数 / 2
※( )内がマイナスになる場合、( )内は「0」として計算します。
※事故有係数適用期間の計算結果に1年未満の端数が生じた場合は、その値の小数点以下第1位は切り上げとなります。また、計算結果がマイナスとなる場合は、0年となります。
※事故有係数適用期間の上限は「6年」、下限は「0年」です。
計算例1
- 前契約の事故有係数適用期間:0年
- 前契約の保険期間:3年
- 3等級ダウン事故:1回
- 1等級ダウン事故:0回
この場合、更新時の事故有係数適用期間は
(0-3÷2)+3×1+1×0-3÷2→0+3-1.5=1.5
で、小数点以下第1位を切り上げて2年となります。
計算例2
- 前契約の事故有係数適用期間:5年
- 前契約の保険期間:3年
- 3等級ダウン事故:1回
- 1等級ダウン事故:2回
この場合、更新時の事故有係数適用期間は
(5-3÷2)+3×1+1×2-3÷2=7
で、上限は6年なので6年となります。
長期契約を途中解約して保険会社を変更する場合の注意点
自動車保険で長期契約を行った場合でも、契約期間の途中で解約して保険会社の乗り換えをすることは可能です。ただし、いくつか注意点があるので紹介します。
等級の進みについて
長期契約を途中解約して乗り換えるのであれば始期応当日に解約するようにしましょう。始期応当日というのは、毎年の保険始期日と同じ月日の日のことです。例えば、保険始期日が2020年の9月1日の場合、2021年の9月1日や2022年の9月1日のことを指します。
始期応当日より前に解約した場合、1年契約で満期日前に解約したときと同じように、等級の進みが遅くなってしまいます。
例えば、保険始期日が2020年9月1日で契約時の等級が10等級だとして、始期応当日前の2021年7月1日に解約して別の会社に乗り換えた場合、11等級に上がるのは2022年7月1日になります。始期応当日である2021年9月1日まで解約をまてば、その時点で11等級に上がっていたので等級が進むのが遅くなってしまったことになります。
空白期間に注意
保険会社を乗り換える際、前契約の解約日と新契約の始期日は同日が望ましいです。空白期間があると、その期間中は補償を受けられません。また、8日以上間が空いてしまうと等級を引き継げず、6等級での契約となってしまいます。
※5等級以下のいわゆるデメリット等級については解約から13ヵ月は引き継いでの契約となります。
解約返戻金について
払い済みの保険料がある場合は、残りの保険期間分に対して保険料の返金があります。返還される保険料の計算は月割で計算される保険会社もあれば、短期率で割り当てられた保険料の返金を行っている保険会社もあります。どちらの方法にしろ、日割でピッタリと残りの期間分の保険料が返ってくるわけではありません。また、短期率で計算される場合は、月割で計算するよりもさらに少なくなります。契約する保険会社によって計算方法は異なるので、保険会社や代理店に確認してみましょう。
ダイレクト型への乗り換えについて
長期契約を途中解約してダイレクト型の自動車保険に乗り換える場合、インターネット上で見積もりや契約ができない場合があります。特に、解約日が始期応当日でない場合はネット上で完結できず、コールセンターに電話が必要となるような場合が多いです。その場合、基本的にインターネット割引の適用を受けられないのでご注意ください。
まとめ
1年契約と長期契約の自動車保険では契約期間の長さの他に異なる点があります。長期契約は多くの自動車保険会社が取り扱っている契約形態ではありませんが、長期契約の選択を希望する人はメリット・デメリットをしっかり押さえたうえで契約するとよいでしょう。
一般的に長期で契約すれば保険料は安くなるというイメージがないでしょうか。しかし、長期契約は代理店型の保険会社でしか取り扱いがなく、代理店型の保険会社はダイレクト型の保険会社より保険料が割高になっています。保険料の安さで考えるのであればダイレクト型の保険会社で1年契約で更新していく方が安いこともあります。保険会社選びは、代理店型とダイレクト型それぞれの保険会社の比較を行った上で慎重に選択しましょう。