自動車保険は、車1台につき、1つの自動車保険契約を結ぶのが原則です。親から子供に車を譲った場合、親子で自動車保険の名義変更を行う必要があります。
しかし、親子間で保険の名義変更を行うとどのようなメリットがあるのか、反対にどのようなデメリットがあるのか、よく知らない人も多いのではないでしょうか。また、一人暮らしをしている子供に車を譲った場合、これまでの保険契約の引き継ぎは可能なのか、気になっている人もいるかもしれません。
この記事では、自動車保険の名義の種類と名義変更のメリットのほか、等級の引き継ぎと別居している親子の場合の名義変更について解説します。
もくじ
自動車保険の名義の種類
自動車保険において、「名義」は3種類あるので注意が必要です。まずは、自動車保険の名義の種類について解説します。
記名被保険者
記名被保険者は、自動車保険契約において車を主に使用する人を指します。自動車保険の補償の中心となる人で、補償範囲の中心となったり、記名被保険者の年齢や免許証の色などで保険料が決まったりします。
保険料の算出において重要な要素であり、運転の実態と異なる場合、契約が解除されたり補償を受けられなかったりすることもありえます。子供が最も多く運転するようになるのであれば、記名被保険者は子供に変更するようにしましょう。
自動車保険の「記名被保険者」とは?契約者とは違う?
自動車保険の契約時などに「記名被保険者」という言葉に出くわすことがあります。普段の生活ではなじみのない言葉だと思いますが、記名被保険者は自動車保険の契約において非常に重要な要素の一つです。記名被保険者 ...
契約者
自動車保険における契約者は、保険契約を結ぶ当事者のことであり、保険料を支払う人を指しています。契約者の変更は、車の所有者が変わったときや、保険料を支払う人が変わるときなどに行われます。
記名被保険者と同一である必要はありません。例えば最も多く運転するのが子供、保険料を支払うのが親の場合、記名被保険者:子供、契約者:親となります。
契約者が親から子供へと名義変更される場合、保険料の負担や契約内容に関する管理権が子供に移ることを意味するので、注意しましょう。
所有者
自動車保険の「所有者」とは、車検証(自動車検査証)に所有者として記載された人のことで、車の所有権を持つ人を指します。ローン会社などになっている場合は使用者を所有者とみなします。
自動車保険が適用される車の名義変更(所有者変更)は、車を売買するタイミングや、親から子供への車の譲渡時などに必要です。なお、所有者変更は保険契約の見直しを伴うため、事前に保険会社に相談することをおすすめします。
親子間で自動車保険の名義変更をするメリットと注意点
親から子供に自動車保険の名義を変えた場合、どのようなメリットと注意すべき点があるのでしょうか。親子間で自動車保険の名義変更(記名被保険者変更)を行う際のメリットと注意点についてご紹介します。
メリット:子供の保険料が安くなる
自動車保険の名義(記名被保険者)変更により、子供が新規で契約するよりも保険料が安くなるという大きなメリットがあります。これは、親がこれまで積み上げてきた等級を子供が引き継ぐことにより、最初から高い等級(安い保険料)の適用を受けられるからです。
通常は、初めて自動車保険に加入する際、6等級からのスタートとなります。しかし、高い等級を持つ親から子供へ記名被保険者を変更した場合、下記のとおり、新規に加入するよりもかなり低い保険料で契約できる可能性があります。
等級 | 割引率 |
---|---|
6等級(新規) | +3% |
20等級 | -63% |
参照:損害保険料率算出機構「自動車保険参考純率改定のご案内」
特に10代や20代前半は事故率が高く、保険料が高く設定されているため、高い等級による割引を受けられるのは大きなメリットといえます。
注意点:等級引き継ぎは同居の親族に限られる
自動車保険の記名被保険者の名義変更と、名義変更による等級の引き継ぎは、「配偶者あるいは同居している親族」に限定されます。
これは、親子間でも同様であり、基本的にどの保険会社でも同一の条件です。なお、この場合の親族とは、「6親等以内の血族」および「3親等以内の姻族」を指しています。
親子間で等級引き継ぎを考えている場合は、子供が同居しているうちに行っておきましょう。
自動車保険の名義変更をするタイミング
自動車保険の名義変更は、ライフステージや車の使用状況が変わった際に行う重要な手続きです。ここでは、記名被保険者に限らず、契約者や車両所有者も含めて、名義変更をする主なタイミングについて解説します。
主に運転する人が変わったとき
車を主に運転する人が変わった場合、記名被保険者の名義変更が必要です。
例えば、車の運転者が親から子供に移行した際、子供を新たな記名被保険者として変更することで、万一の際に適切な保険の適用を受けることができます。
保険料を支払う人が変わったとき
自動車保険の保険料の支払いを行う人が変わる場合には、保険の契約者の名義変更を行う必要があります。例えば、子供が就職して家を出て、保険料を自分で支払えるようになったケースです。これにより、保険料の請求や契約に関する通知は、契約者である子供を対象に行われます。
結婚して姓が変わるとき
結婚・離婚などで姓が変わった場合には、保険契約の情報を最新の状態に保つために自動車保険の契約者の名義変更(改姓手続き)を行います。
将来的な保険金の請求や、保険契約の更新時の手続きをスムーズに終わらせるためにも、姓が変わったら速やかに改姓手続きを行うようにしましょう。
親子間などで車を譲渡したとき
親から子供へ、またはほかの同居の親族間で車が譲渡された場合には、車の所有者に関しての名義変更が必要です。
また、所有者と自動車保険の契約者の名義が違ったとしても、保険への加入は可能ですが、自動車保険の契約者および記名被保険者についても、名義変更を同じタイミングで行っておきましょう。
保険の契約者や記名被保険者が亡くなったとき
契約者や記名被保険者が亡くなった場合、車を引き継いで保険契約を継続するためには、契約者や記名被保険者の名義変更が必須です。この手続きにより、車の引き継ぎと自動車保険の継続が可能となります。
このような自動車保険の名義変更は、保険適用が適切に行われるために、またスムーズな保険金支払いのために重要です。いずれも変更しなければならない場合は、早めに保険会社に相談し、必要な手続きを行いましょう。
親子間の自動車保険の名義変更手続きの方法
親と子供のあいだで自動車保険の名義変更を行う際には、「自賠責保険」と「任意保険」の両方で手続きが必要です。ここでは、親子間の保険の名義変更手続きの方法について解説します。
自賠責保険の名義変更の場合
自賠責保険とは、すべての車に加入が義務付けられている自動車保険であり、保険契約は車に紐付いています。ですから、親子間で車を譲渡するといった場合、自賠責保険の契約者の名義変更をしなければなりません。
自賠責保険の名義変更を行うには、「契約権利譲渡通知書」と「自賠責保険承認請求書」のほか、車検証と本人確認書類などが必要です。手続きは加入する保険会社の窓口で行うか、書類を郵送して行います。
任意の自動車保険の名義変更の場合
任意の自動車保険における名義変更が求められる理由は、車の所有者の変更や主に車を運転する記名被保険者の変更、または保険料の支払いをする契約者が変わる場合などです。
名義変更をするには、加入する保険会社に直接連絡し、変更手続きを依頼します。手続きには、現在の保険証券と車検証、場合によっては本人確認書類の提示を求められるので注意してください。
なお、同居の親子間での保険契約の譲渡には、等級引き継ぎが可能な場合があり、その場合、新規で加入するよりも保険料が割引される可能性があります。
別居の親子間で自動車保険の名義変更をする際の注意点
親から子供への自動車保険の記名被保険者の変更は、別居の場合、いくつか気をつけておきたいことがあります。最後に、別居の親子間で自動車保険の名義変更(記名被保険者変更)を行う際の注意点について解説します。
別居の親子では名義変更と等級引き継ぎができない
自動車保険の親から子供への記名被保険者の名義変更と等級の引き継ぎは、同居している場合にのみ可能です。この場合の「同居」とは、廊下や階段などでつながっていて、行き来が可能な同一家屋に住んでいることを指します。厳密に同一家屋とは、建物の主要構造部のうち外壁、柱、小屋組、はり、屋根のいずれも独立して備えている住居のこと。
もし、子供が実家のあるマンションの隣の部屋に暮らしていた場合は、別居としてみなされます。その場合、名義変更と等級の引き継ぎは認められないので注意しましょう。ただし、二世帯住宅は保険会社によって判断が分かれるため、加入する保険会社に確認するようにしてください。その際に、同一生計や扶養関係の有無は問われません。
また、同居・別居は、あくまで実態ベースで判断されます。子供が一人暮らしをしていて住民票を移していない場合でも、生活拠点が別にあることは明白なので別居扱いです。
自動車保険の「同居の親族」はどのような範囲?
自動車保険では補償の範囲や等級の引継ぎなどでよく「同居の親族」という言葉が出てきます。何となくどのような範囲を指すのか分かると思いますが、具体的にどういう範囲なのでしょうか?勘違いや思い込みで補償を受 ...
別居の場合は新規の保険契約が必要になる
別居している親子間で車を譲渡した場合、車は譲渡できても自動車保険の契約は譲渡できないため、子供は新たに自動車保険に加入する必要があります。
新規契約は、通常6等級からのスタートとなり、長く無事故で等級が上がっている自動車保険よりも、保険料は高くなります。
そのため、将来的に進学・就職する別居の子供に車を譲渡することを考えている場合は、同居しているあいだに車と保険契約が譲渡できないかを検討することをおすすめします。
車の譲渡や購入の際には、自動車保険も比較・検討しよう
子供が進学・就職によって車が必要になるなどの理由で、親が所有していた車を譲り渡すことを検討している人も多いでしょう。車を譲渡する場合、自動車保険の記名被保険者の変更が必要であり、等級引き継ぎも可能です。
等級を引き継げば、トータルの保険料を安く抑えることができます。ただし、記名被保険者の名義変更と等級引き継ぎは、同居の親子間に限定されます。保険料を抑えるためにも、車と保険契約の譲渡は同居しているうちに行っておきたいところです。
なお、子供に車を譲渡したり、親が新たに車を買ったりするタイミングは、自動車保険の保険料やサービス内容をあらためて見直す良い機会といえます。
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