日本損害保険協会による「第24回自動車盗難事故実態調査」で2020年1月1日~2022年12月31日までの2年間に発生した自動車盗難事故の調査結果が発表されています。2000年度から自動車盗難防止対策の一環として実施されている同調査ですが、トヨタ車の盗難が多いことが分かります。トヨタ車は海外でも人気が高く、盗難された車は主に海外に不正輸出されているものと考えられます。
車の盗難被害は自動車保険の車両保険で補償を受ける事ができますが、車両保険を付けると保険料が高くなってしまいます。車両保険を付けた場合の保険料相場はどのくらいなのかについて紹介します。盗難を防止する方法と合わせて確認しておきましょう。
もくじ
盗難車ランキングの上位をしめるトヨタ車
自動車盗難事故実態調査の盗難車ランキングをみると、トヨタ車が上位を占めていることが分かります。盗難が多いということは人気が高い車ということが言えるでしょう。
ランドクルーザーは悪路走破性能に優れ、機械的信頼性を備えており、フレーム構造やサスペンション、エンジンなど高性能で耐久性に優れた世界的に信頼性が高い車です。プリウスは夜間でも住宅街を移動する際など静かな車で有名です。その走行が静かという特徴が犯罪者の足として使われるともいわれています。このようにトヨタ車は車種によっても優れた性能と特徴を持っています。その点が犯罪者にとっても人気の理由となってしまうのでしょう。
出典:一般社団法人 日本損害保険協会「第24回 自動車盗難事故実態調査結果」より
車名別に見た盗難車のランキングでは2020年~2022年だけを見ても盗難車全体の半数がトヨタ車です。車両本体の盗難だけでなく、部品の盗難事件なども多く、これらは海外に不正に輸出されていると考えられます。盗難が多い車ということは、人気の車ということでもありますが、愛車が被害にあってしまうと多額の損害を負ってしまうという心配があります。
被害にあわないような対策が重要ですが、盗難にあってしまった時の補償は自動車保険の車両保険があれば補償を受けられます。
愛車を盗難から守る
盗難の被害にあいやすい車、どこの場所で盗難の被害にあいやすいのかといったことは被害状況から分かっています。自分の愛車が当てはまっているという人は特に盗難防止対策を行っておきましょう。
盗難が多い都道府県
都道府県別では、2021年、2022年と2年連続愛知県での盗難が一番多く2022年の2位は大阪府、3位千葉県、4位埼玉県、5位茨城県でこれらの県は2020年から盗難の多い上位5県です。これらの府県には、不正輸出のための作業場などが多いとされており、犯罪の温床となっているようです。
盗難多発都道府県-車両本体盗難(2022年) | ||
---|---|---|
順位 | 都道府県名 | 支払件数 |
1 | 愛知県 | 576件 |
2 | 大阪府 | 370件 |
3 | 千葉県 | 296件 |
4 | 埼玉県 | 233件 |
5 | 茨城県 | 210件 |
6 | 栃木県 | 123件 |
7 | 神奈川県 | 122件 |
8 | 群馬県 | 93件 |
9 | 岐阜県 | 90件 |
10 | 三重県 | 80件 |
- | その他 | 463件 |
※支払件数は、損保協会非会員会社を含む損害保険会社21社による保険金支払件数です。
被害車両の年式
次にどの年式の車が盗難被害にあっているのかを紹介します。2022年の調査では、2019年式の車両の盗難が一番多かったようです。2020年は2018年式の車が最多で2021年も2019年式の車が最も盗難の被害にあっています。狙われやすいのは新車登録が行われてから5年以内の車の盗難が多いようです。
新車をローンを組んで購入した場合では、基本的に車が盗難にあってしまってもローンの返済をストップすることはできないため、愛車が盗難被害にあってしまうとオートローンだけが残ってしまうというリスクも考えておいた方がよさそうです。
盗難車両の年式-車両本体盗難(2022年) | |
---|---|
年式 | 支払件数 |
2022年式 | 58件 |
2021年式 | 219件 |
2020年式 | 215件 |
2019年式 | 228件 |
2018年式 | 190件 |
2017年式 | 145件 |
2016年式 | 150件 |
2015年式 | 104件 |
2014年式 | 65件 |
2013年式 | 70件 |
2012年以前 | 1,212件 |
合計 | 2,656件 |
※支払件数は、損保協会非会員会社を含む損害保険会社21社による保険金支払件数です。
盗難は深夜から早朝に行われている!
盗難が多く発生する時間帯は、深夜から朝にかけてです。盗難の発生時間帯は、「深夜~朝(22時~9時)」が57.1%で夜間の人のいない時間帯に犯行が行われているようです。
期間 | 車両本体盗難(2022年) | |
---|---|---|
支払件数 | 構成比 | |
日中(9-17時) | 754件 | 28.4% |
夜間(17-22時) | 208件 | 7.8% |
深夜~朝(22-9時) | 1,517件 | 57.1% |
不明 | 177件 | 6.7% |
合計 | 2,656件 | 100.0% |
※支払件数は、損保協会非会員会社を含む損害保険会社21社による保険金支払件数です。
車の盗難事故にあわないために
日本損害保険協会からも愛車を「盗難」「車上ねらい」から守る基本5箇条が発表されています。基本となることばかりなので大切な車を守るために普段から心掛けておくとよいでしょう。
1.盗難防止装置を装着する
ハンドルロック、タイヤロック、イモビライザー、OBDガード、アラームなど盗難防止のための装置を利用しましょう。
重要なのは、「この車は盗むのに手間がかかる」と感じさせて盗む対象に入らないようにすることです。
2.車内に貴重品、カバン、服などを置かない
車内に貴重品やカバン、服などが置きっぱなしになっていると車上ねらいにあいやすくなります。「わずかな間」でも車のなかには盗みやすいもの(財布やバックなど)を放置しないようにしましょう。一見して「物が置いてある」と分からないようにしておくことが大切です。
3.人目の届かない駐車場は避ける
駐車場は不審者の動きが人目に付きやすい場所を選ぶようにしましょう。人目のつかない駐車場では、犯行に時間をかけやすく盗難の被害に遭いやすくなります。見通しがよく、照明設備が整った駐車場を利用しましょう。
4.車から離れるときは、短時間でも必ず施錠
車から離れるときは、「すぐ戻る」という時でも必ず施錠する習慣をつけてください。また、スペアキーも車内に放置しないようにしましょう。
自動車盗難の実態として、4台のうち3台はドアロックをしていたにもかかわらず盗まれていますが、施錠していないとロックを解除するというひと手間がいらなくなるので窃盗の被害を防ぎにくくなります。
5.カーナビの盗難にも気をつけましょう!
カーナビの盗難件数は減ってきていますが、盗難したカーナビをネットオークションなどで転売されている犯罪はゼロにはなっていません。カーナビも盗難防止ネジなどで盗難防止対策をしておくとよいでしょう。また、カーナビのユーザー登録を行っておく事で盗まれてしまっても製造番号などで盗難品が見つかる可能性が高くなります。
さらに、警備保障会社の盗難防止装置を採用する
綜合警備保障株式会社(ALSOK)、セコム株式会社などの警備保障会社がGPS(全地球測位システム)衛星を利用した自動車盗難防止装置を提供しています。日本損害保険協会が発表する基本5箇条以外にもこれらを採用するのを考えてみてもよいでしょう。
車の盗難に車両保険で備える
実は、今回の自動車盗難事故実態調査で紹介した盗難件数は、実際に自動車保険会社が盗難事故や車上ねらいにより車両保険金の支払をおこなった事案を集計したものとなります。そのため、車両保険に加入していなかった場合は実際に車の盗難被害にあっていても件数には入っていません。
車の年式が古くそもそも車両保険を付けられないといったケースもありますが、自動車盗難事故実態調査では、車の盗難は新車登録を行ってから年数がさほど経過していない新しい車が多いです。車が盗難にあってしまった時に、犯人が見つかり、犯人に損害賠償請求を行ったとしても犯人に資金力がなければ賠償を受けられない可能性も考えらえます。新車を一括で購入しているのであれば数百万円の損害、オートローンが残っているのであればローンの返済だけ残るといった心配もあります。新たに車を取得するとなると取得費用も必要となります。盗難といった犯罪は決して許されるものではありませんが、被害者が損害を背負ってしまうリスクを避けるためにも盗難対策や車両保険で備えておくことも考えておきましょう。
車両保険の判断基準
盗難の心配だけを考えて車両保険に加入するのは保険料を考えると判断が難しいという人に車両保険をつけるか、つけないかの判断基準を紹介します。
1.車の時価額が高いか否か
車両保険の保険金額(支払われる保険金の上限額)は契約時の車の時価相当額によって決められています。中古車や10年を超えて同じ車に乗っている場合は車の時価相当額が下がっているので、車両保険を使うことになっても支払われる保険金が十分でないということもありえます。
2.貯蓄が十分にあるか否か
車が盗難にあい失ってしまうようなことがあっても貯蓄で新しい車を調達できるといった人は車両保険で備えておく必要はないかもしれません。
3.ローン残高が残っているか否か
自動車をローンで購入した場合で多額のローン残高が残っている場合は車両保険に加入したほうがよいでしょう。盗難で車を失ってしまってもローンの支払いは残ります。
4.車を日常的に使うか否か
車を日常的に使う、公共交通機関などの代替交通手段が使いにくいという場合は車両保険の必要性が高まります。新たに車を取得する費用を用意できず、いつまでも車がつかえない状況が続くのは相当の不便を強いられます。
車両保険を付けるとどのくらい高くなる?
では、車両保険を付ける場合と付けない場合ではどのくらい保険料が変わるのでしょうか。
どのくらい高くなるかの例として、当サイト「保険の窓口インズウェブ」の自動車保険一括見積もりサービスで「現在、自動車保険に加入していない」と選択の上、お見積もりを取得された方の保険料を調査した結果を紹介します。下記は6等級の調査結果となり、保険料は等級以外にも年齢条件や運転者限定、車種、使用目的などによって保険料は変わるため参考データとして保険料の違いを確認ください。
ランドクルーザー(FJA300W)
車両保険あり | 車両保険なし | |
---|---|---|
最高値 | 199,341円 | -円 |
平均値 | 157,533円 | -円 |
最安値 | 83,353円 | -円 |
※車両保険なしのデータがありませんでした。
2022年4月~2023年3月の保険料調査
プリウス(ZVW55)
車両保険あり | 車両保険なし | |
---|---|---|
最高値 | 207,102円 | 78,825円 |
平均値 | 185,362円 | 69,252円 |
最安値 | 163,528円 | 57,225円 |
2022年4月~2023年3月の保険料調査
アルファード(GGH30W)
車両保険あり | 車両保険なし | |
---|---|---|
最高値 | 199,201円 | 72,810円 |
平均値 | 173,424円 | 62,948円 |
最安値 | 147,242円 | 53,615円 |
2022年4月~2023年3月の保険料調査
ここで紹介している保険料は、保険の窓口インズウェブで「現在、自動車保険に加入していない」と選択の上、お見積もりを取得された方の保険料を独自調査したものです。実際の保険料は契約車両のほかにも「運転者限定」などの各種特約、車の使用目的、車両保険の協定保険価額など、様々な条件で保険料を算出しています。あくまで参考値としてご参照ください。
著者情報
インズウェブスタッフI
SBIホールディングス株式会社インズウェブ事業部で年間100本近くの保険に関するコンテンツを制作。コンテンツ制作5年。
統計データと実体験をもとに、難しい内容をわかりやすく紹介します!