自動車の盗難は2003年をピークに大きく減少していますが、2022年においても5,734件※発生しており、まだまだ被害に遭う可能性はあります。もし車が盗まれてしまった場合、車両保険で補償を受けられるのでしょうか?また、補償される場合はいくら補償されるのでしょうか?
※出典:警察庁「自動車盗難等の発生状況等について」
もくじ
自動車の盗難は車両保険で補償される
自動車が盗難の被害に遭った場合は車両保険で補償されます。盗難被害については一般的に、エコノミー型の車両保険でも補償を受けられます。盗難で車両保険を使用した場合は翌年の契約で等級が1等級ダウン、事故あり係数適用期間が1年加算となります。
なお、盗難対象外特約などの特約を付帯している場合は補償の対象とはなりません。
車のパーツのみの盗難も対象
車両全体ではなく、ナンバープレートやタイヤ・ホイールなどの「部品ねらい」の盗難被害に遭う場合もあります。警察庁「自動車盗難等の発生状況等について」によると、2022年における「部品ねらい」の盗難の認知件数は13,301件と車両の盗難の倍以上発生しています。
車のパーツが盗難被害に遭った場合ついても車両保険で補償を受けることができます。注意が必要なのは、ポータブルナビのように持ち運びできるようなものについては車両の一部とは認められず、車両保険で補償を受けられない場合があるということです。タイヤについても車から取り外して保管してあるものを盗まれた場合は対象外となります。
車内やトランク内の身の回り品も補償される場合も
車内やトランク内に置いてあった身の回り品は車両保険では補償されませんが、「身の回り品補償特約」などの特約を契約している場合はそちらで補償を受けられる可能性があります。補償を受けられる金額の上限や補償を受けられる対象は保険会社によって異なる場合があるので、契約する保険会社に確認しておくとよいでしょう。
身の回り品補償特約とは?どんなものが対象?
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盗難に気づいたらまずは警察に届け出よう
車が盗まれていることに気がついたらまずは警察に通報し、盗難届を出しましょう。盗難届の受理番号が車両保険の保険金の請求や一時抹消登録に必要となります。車の盗難届には登録番号(ナンバープレートの番号)などが必要となるため、車検証のコピーを自宅などに保管しておくとよいでしょう。
警察に盗難届を出して受理されたら契約している保険会社に車が盗まれたことを連絡しましょう。調査ののち、保険金が支払われます。保険金が支払われるまでの大まかな流れは以下の通りです。
保険金支払いまでの流れ
1.保険会社へ連絡
契約している保険会社に車が盗まれたことを連絡します。事故の受付と状況の確認、今後の流れについて説明を受けます。
2.保険会社による調査
現場の状況や被害状況について調査が行われます。調査には早くても1カ月ほどかかるので、すぐに保険金が支払われるわけではないことを理解しておきましょう。
3.必要書類の用意・提出
調査が終了し、保険金が支払われることになったら、保険金を受け取るために必要な書類を用意・提出します。保険金を受け取ったら車の所有権は保険会社に移るので、名義変更のための書類が必要となります。
4.保険金の支払
手続きが完了したのち、保険会社より保険金が支払われます。
車両保険でいくら受け取れる?
車が盗まれて見つからない場合、「全損」の扱いとなります。つまり、契約時に設定した保険金額の全額が保険金として支払われます。免責金額の設定がある場合も、全損の場合は差し引かれずに全額を受け取れます。また、全損扱いとなるので、車両全損時諸費用保険金などの契約がある場合はそちらも支払われます。
項目 | 支払われる保険金 |
---|---|
車両保険 | 保険金額の全額 |
車両全損時諸費用保険金 | 車両保険金額の10%(20万円限度)など |
ホイールのみが盗まれた場合などについては「全損」ではなく「分損」となります。この場合、損害額(時価額)から免責金額を差し引いた金額が補償されます。
項目 | 支払われる保険金 |
---|---|
車両保険 | 損害額-免責金額 |
盗まれた車が見つかった場合は?
保険金が支払われた後
保険金が支払われた後に盗まれていた車が見つかる場合もあります。この場合、車の所有権は保険会社にあるので保険会社が車を売却するなど自由に処分することになりますが、思い入れのある車の場合は引き取って再び乗りたいと思うかもしれません。
保険金の支払を受けた翌日から60日など一定の日数以内に車が見つかった場合には、受け取った保険金を保険会社に返すことで車を引き取ることが可能です。もちろん、保険金を返還せずに所有権を保険会社に渡したままにすることも可能です。何日以内かは保険会社によって異なるため、契約する保険会社にご確認ください。
保険金が支払われる前
保険金が支払われる前に見つかった場合は、車を修理して引き続き乗るか、保険金を受け取って所有権を保険会社に移すか選択することができます。
盗難被害に遭わないための対策
紹介してきた通り、車を盗まれても車両保険で補償を受けることができます。しかし、そのためには書類の用意などで時間を割く必要もあるので、できることなら盗難被害に遭わないようにすることが大切です。
日本損害保険協会からも愛車を「盗難」「車上ねらい」から守る基本5箇条が発表されています。この5箇条が出されてから少し年月が経っていますが、基本となることばかりなので大切な車を守るために普段から心掛けておくとよいでしょう。
- イモビライザなどの盗難防止機器を装着する
- 車内に貴重品、カバン、服などを置かないようにする
- 見通しがよく照明設備の整った駐車場を利用する
- 短い間でも車から離れるときは必ずキーロックする
- カーナビの盗難対策をする
ちなみに、部品ねらいの盗難で現在多いのはナンバープレートで、全体の約半数を占めています。カーナビの盗難対策はもちろん大切ですが、ナンバープレートを取り付けているネジを盗難防止ネジに替えるなど、ナンバープレートの盗難対策を行うのも大切です。
まとめ
車が盗難された場合、車両保険で補償を受けられます。一般型でもエコノミー型でも補償対象です。盗難は全損扱いとなるため、契約時に設定した保険金額の全額が保険金として支払われます。また、全損時諸費用保険金などの契約があればそちらも支払われることになります。
車両保険をつけると保険料が高くなります。盗難やその他の車両への損害の備えのために車両保険は契約したい、しかし保険料はできる限り抑えたいという場合は自動車保険の一括見積もりサービスがおすすめです。1度の情報入力で複数の保険会社の見積もりを取ることができます。各社の保険料を比較して安い自動車保険を探しましょう。
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著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。