日本には数多くの損害保険会社がありますが、実際に何社存在するのかご存知でしょうか?インズウェブでも最大20社の見積もりができますが、実はそれ以上に自動車保険を提供している会社は多く存在しています。これだけたくさんあると、何を基準に選んだらよいのか迷うのは当然だと思います。もちろん、実際は個々人の置かれている状況により、選び方は全く異なるのも事実です。
そこで、今回は一つの見方として、自動車保険業界を「規模」という切り口で、ファイナンシャル・プランナーの工藤清美さんに解説してもらいました。
エフピー ブラッサム 代表
ファイナンシャル・プランナー
工藤 清美 早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。シンクタンク、出版社を経て、メガバンクに勤務。ディーリングルームでデリバティブ取引のリスク管理等を担当。現在は独立系FPとして、個人相談、執筆、セミナー、DC導入企業コンサル等、子育て経験のある生活者の目とMBAホルダーとしての専門性を活かして、幅広く活動中。2012年 論文「ドルコスト平均法の有効性の分析~リスクの視点から」で日本FP学会賞を受賞。 NPO法人 相続・成年後見相談センターとらすと代表理事。
もくじ
自動車保険業界を代表する3つの企業グループ
3メガ損保だけで全体の売り上げの90%以上を占める
まずは、日本国内における自動車保険の収入保険料のトップ3を見てみましょう。
1位:MS&ADインシュアランスグループ (1兆3,371億円)
2位:東京海上ホールディングス (1兆1,122億円)
3位:SOMPOグループ (1兆335億円)
※2012年度正味収入保険料ベース(内部取引相殺後)
※出所:各社公表数値および日本損害保険協会統計)
日本国内における自動車保険の収入保険料は、全体で3兆6,147億円です。
自動車保険を提供する保険会社はたくさんありますが、実はこれら「3メガ」と呼ばれる3つのグループだけで、全体の売り上げの90%以上を占めているのが現状です。
ここで少しだけ歴史を振り返ってみましょう。1996年に保険業法が改正され、生命保険と損害保険の相互参入が可能となりました。さらに、2001年には保険商品の銀行窓販も解禁されました。これらの影響もあり、2000年以降、日本の保険会社の間では吸収や合併が積極的に繰り返され、現在の「3メガ損保体制」が確立され今に至っています。
それでは、1位のMS&ADインシュアランスグループについて詳しく見ていきましょう。
自動車保険業界の雄、MS&ADインシュアランスグループ
3社が経営統合してできたのがMS&ADインシュアランスグループ
MS&ADインシュアランスグループは、以下のように3つの独自の強みを持った会社が集まってできたホールディングスカンパニーとなっています。
- 三井住友海上グループホールディングス
三井グループと住友グループを中心とした、強固な営業基盤を持つグループホールディングスです。
傘下の損害保険会社には、「三井住友海上」と「三井ダイレクト損保」があります。 - あいおい損害保険
トヨタグループを営業基盤に持つ損害保険会社です
- ニッセイ同和損害保険
日本生命グループを営業基盤に持つ損害保険会社です
三井住友海上グループホールディングスには、三井住友海上や三井物産と共同出資する三井ダイレクトなどが含まれています。また、あいおい損害保険とニッセイ同和損害保険は今では合併し、あいおいニッセイ同和損害保険となっています。
よって、MS&ADインシュアランスグループの損害保険の分野は、実質、「三井住友海上」、「あいおいニッセイ同和損保」、及び「三井ダイレクト」の3社で成り立っているといえるでしょう。
それぞれの3社について、簡単に歴史を調べてみました。
三井グループと住友グループが融合した三井住友海上
三井住友海上は、その名の通り、三井グループの損害保険会社である三井海上と、住友グループの損害保険会社である住友海上とが合併してできた損害保険会社です。両社の歴史はとても古く、住友海上は100年以上前の1893年(明治26年)、関西の銅業、貿易関係の有志により大阪市西区に設立された大阪保険を祖としています。一方の三井海上は、1918年(大正7年)、三井物産を中心に設立された大正海上火災保険が祖となっています。
最近はスポーツにも力を入れており、陸上競技部(1991年設立)や女子柔道部(1989年設立)などが有名です。陸上競技部には、アテネオリンピックで5位入賞した土佐礼子さんが所属しており、実業団駅伝では最多の7回の優勝を数えています。女子柔道部では、アテネオリンピック、北京オリンピック共に金メダルの上野雅恵さんやアテネオリンピック銀メダルの横澤由貴さん、そして、北京オリンピック銅メダルの中村美里さんらが所属しており、実業団の中でも強豪中の強豪チームとのことです。また、サッカー日本代表のオフィシャル協賛スポンサーでもあるので、その名前を見たり、聞いたりした人も多いのではないでしょうか。
トヨタや日本生命を営業基盤に持つあいおいニッセイ同和損保
こちらも名前を見ると分かるように、元々はあいおい損害保険とニッセイ同和損害保険とが合併してできた会社です。両社の歴史も三井海上や住友海上と同様に古く、ニッセイ同和損保は1897年(明治30年)の横浜火災海上保険を祖とし、あいおい損保は1897年(明治30年)の小樽貨物火災保険を祖としています。
あいおい損保とニッセイ同和損保において特徴的なのは、両社とも日本有数の企業であるトヨタ自動車や日本生命を主たる営業基盤に持っているということです。そのため、非常に安定した経営体制を築けているといえます。
三井の品質をリーズナブルな価格で提供する三井ダイレクト
MS&ADインシュアランスグループの中で唯一の通販型保険会社が、三井ダイレクトです。他の会社が契約者と保険会社との間に代理店が入り契約する「代理店型」であるのに対し、三井ダイレクトは契約者と保険会社が直接契約する「通販型(ダイレクト型)」となっています。一般的に「通販型(ダイレクト型)」は、人件費などを抑えることで割安な保険料を実現できることが強みでもあります。三井ダイレクトの始まりは、1995年の金融ビッグバンの時代です。このとき三井物産により準備会社が作られ、2000年から損害保険業の免許を取得し営業を開始しています。
三井住友海上などと同じMS&ADグループの一員でありながら、保険料がリーズナブルなこともあり、自動車保険の正味収入保険料は、通販業界2位の347億円となっています。
インズウェブでも三井ダイレクトについての紹介ページがありますので、詳しくは以下をご覧ください。
MS&ADインシュアランスグループの後を追う2つの企業グループ
2位も3位も複数の保険会社が集まったグループ会社
次に、自動車保険の収入保険料2位の東京海上グループと3位のNKSJグループについても見ていきましょう。
2位の東京海上グループは、その名の通り東京海上が主体ですが、実は「日新火災」も同じグループの一員です。また、通販会社としては最後発ながらNTTファイナンスと合同で設立した「イーデザイン損保」を2009年6月よりスタートしています。
3位のSOMPOグループは、「日本興亜損保」と「損保ジャパン」が合併してできたグループ会社です。MS&ADインシュアランスグループと同様、こちらも通販会社である「SOMPOダイレクト」を傘下に持っています。
これらの会社以外にも外資系を含め20社以上がひしめき合う自動車保険業界。
自動車保険選びのポイントには様々な視点がありますが、一つの見方としてこのような情報も参考にしてみてはいかがでしょうか?
※MS&ADインシュアランスグループに関する記述については、2013年12月時点のホームページの情報を元に作成