2021年3月15日に日本損害保険協会から「第22回自動車盗難事故実態調査」の発表がありました。2020年11月1日~11月30日までの調査期間に全国で発生した自動車本体盗難事故および車上ねらい(部品盗難含む)事故で調査期間内に車両保険金の支払いを行った事案を損害保険会社18社(損保協会非会員会社を含む)に調査したものです。
もくじ
車名別盗難状況「ランドクルーザー」1位
日本損害保険協会では、2000年度から自動車盗難防止対策の一環として、自動車本体盗難事故や車上ねらい事故の実態調査を実施しています。22回目の今回の調査では、21回目の調査に引き続き一番多く盗難にあっている車は、トヨタの「ランドクルーザー」という結果になっています。
2020年11月調査 | |||
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順位 | 車名(車種) | 件数 | 構成比 |
1 | ランドクルーザー | 25 | 15.8% |
2 | プリウス | 22 | 13.9% |
レクサスLX | 22 | 13.9% | |
4 | レクサスLS | 12 | 7.6% |
5 | クラウン | 9 | 5.7% |
6 | アルファード | 5 | 3.2% |
レクサスIS | 5 | 3.2% | |
レクサスRX | 5 | 3.2% | |
9 | ハリアー | 4 | 2.5% |
スカイライン | 4 | 2.5% | |
11 | ヴェルファイア | 3 | 1.9% |
ハイエース | 3 | 1.9% | |
マーク | 3 | 1.9% |
トヨタが展開している高級車ブランドのレクサスも盗難被害が多いことが分かります。レクサスブランドでは、「レクサスLX」「レクサスLS」「レクサスIS」「レクサスRX」とランクインしています。合計すると44台となり、レクサスだけで盗難が多い車種13車種の中で36.1%を占めていることになります。
トヨタ「プリウス」は、過去3回の調査で3回連続2位です。「プリウス」も盗難にあいやすい車種のようです。
「ランドクルーザー」は2年連続のワースト1位、「レクサス」はレクサスブランドでの盗難を考えると最も盗難にあいやすく、「プリウス」も過去の調査3回連続でワースト2位になるなど盗難にあいやすい車種が特定の車種に集中しているということが分かります。
車両盗難事故の支払保険金は、平均406.2万円
車両本体盗難1件当たりの平均保険金は、406.2万円となっているようです。これは、前回調査の平均支払保険金401.4万円を上回っており、近年、比較的高額な車両が狙われることが増えてきているためだと思われます。
22回目の今回の調査では、盗難発生後に盗難車両が発見されたケースでも、車の多くの部品がとられてしまっていたなど、発見時の車両の状態が悪く支払保険金が増加することに影響しているようです。高額な車両が狙われやすいこと、盗難車が発見されても状態が悪く修理費用が高額になるなどにより、支払保険金が増加していると考えられています。
なぜ、「ランドクルーザー」は盗難にあいやすいの?
トヨタ車は、日本国内ではもちろんですが、海外でも人気が高いことで有名です。トヨタブランドの中においても特にランドクルーザーは、悪路走破性能に優れ、機械的信頼性を備えています。そのため、ランドクルーザーの盗難は、「自分が乗りたいから」というよりは海外へ不正に輸出するなどして資金を得るために盗難が行われていることが多いと考えられます。
各パーツにおいても、フレーム構造やサスペンション、エンジンなど高性能で耐久性に優れており、世界的に信頼性が高い車です。ランドクルーザーはクロカン「クロスカントリー(道を通らずに山道等を横断)」走行するような場合においても壊れにくいことから世界中のどのような環境でも走行するタフさが人気であり、盗難車として不正に輸出されているのかもしれません。
車の盗難は「夜間」「屋外駐車場」で行われている!
車の盗難の多くは夜間に行われています。盗難の発生時間帯は、「深夜~朝(22時~9時)」が66.5%と最も多く深夜から朝にかけての薄暗い場所で盗難に及んでいるようです。
また、盗難の発生場所は、屋外の契約駐車場が今回の調査全体の40.5%と最も多いようです。さらに、自宅の駐車場であっても屋外の場合は盗難被害の場所として挙げられる割合は37.3%にも及んでいます。自宅の駐車場であっても屋外の場合は、屋外の契約駐車場と同程度のリスクで盗難が発生していることが分かります。
ですから、夜間、屋外に車を駐車している人は、特に、盗難防止対策を行っておく事を検討しておくとよいでしょう。
車の盗難事故にあわないために
日本損害保険協会からも愛車を「盗難」「車上ねらい」から守る基本5箇条が発表されています。基本となることばかりなので大切な車を守るために普段から心掛けておくとよいでしょう。
1.盗難防止装置を装着する
ハンドルロック、タイヤロック、イモビライザー、OBDガード、アラームなど盗難防止のための装置を利用しましょう。
重要なのは、「この車は盗むのに手間がかかる」と感じさせて盗む対象に入らないようにすることです。
2.車内に貴重品、カバン、服などを置かない
車内に貴重品やカバン、服などが置きっぱなしになっていると車上ねらいにあいやすくなります。「わずかな間」でも車のなかには盗みやすいもの(財布やバックなど)を放置しないようにしましょう。一見して「物が置いてある」と分からないようにしておくことが大切です。
3.人目の届かない駐車場は避ける
駐車場は不審者の動きが人目に付きやすい場所を選ぶようにしましょう。人目のつかない駐車場では、犯行に時間をかけやすく盗難の被害に遭いやすくなります。見通しがよく、照明設備が整った駐車場を利用しましょう。
4.車から離れるときは、短時間でも必ず施錠
車から離れるときは、「すぐ戻る」という時でも必ず施錠する習慣をつけてください。また、スペアキーも車内に放置しないようにしましょう。
自動車盗難の実態として、4台のうち3台はドアロックをしていたにもかかわらず盗まれていますが、施錠していないとロックを解除するというひと手間がいらなくなるので窃盗の被害を防ぎにくくなります。
5.カーナビの盗難にも気をつけましょう!
カーナビの盗難件数は減ってきていますが、盗難したカーナビをネットオークションなどで転売されている犯罪はゼロにはなっていません。カーナビも盗難防止ネジなどで盗難防止対策をしておくとよいでしょう。また、カーナビのユーザー登録を行っておく事で盗まれてしまっても製造番号などで盗難品が見つかる可能性が高くなります。
さらに、警備保障会社の盗難防止装置を採用する
綜合警備保障株式会社(ALSOK)、セコム株式会社などの警備保障会社がGPS(全地球測位システム)衛星を利用した自動車盗難防止装置を提供しています。日本損害保険協会が発表する基本5箇条以外にもこれらを採用するのを考えてみてもよいでしょう。
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車の盗難は車両保険で補償
今回の自動車盗難事故実態調査は、実際に自動車保険会社が盗難事故や車上ねらいにより車両保険金の支払をおこなった事案を集計したものとなります。そのため、車両保険に加入していなかったために実際に車の盗難被害にあっていても件数には入っていません。
車両保険の契約がなく、車が盗難にあってしまったような場合、犯人がみつかり損害賠償請求を行ったとしても犯人に資金力がなければ犯人からの賠償が受けられない可能性が考えられます。また、犯人が見つからないような場合には、自己資金で新たに車を購入したり、修理したりしなければいけないリスクもあります。車両保険には、そのような車の盗難や車へのいたずら、落書きの被害も補償範囲となっているため盗難のリスクに備えることができます。愛車が盗難や車上ねらいのリスクが高いとされている場合で車両保険に加入していない人は、車両保険について確認してみるとよいでしょう。
車両保険の補償範囲
車両保険は、補償範囲が広い一般型と補償範囲が限定される代わりに一般型より保険料が安いエコノミー型の2つの種類から選べるようになっていることが多いです。盗難・いたずら・落書きの被害は、車両保険の一般型、エコノミー型どちらに契約していても補償を受けることができます。
一般 | エコノミー | |
---|---|---|
車やバイクとの事故 (相手が判明している場合) | ○ | ○ |
当て逃げ(相手不明) | ○ | △※ |
自転車との衝突・接触 | ○ | × |
電柱・建物などとの衝突や接触 (単独事故) | ○ | × |
転覆・墜落 | ○ | × |
火災・爆発・台風・洪水・高潮など | ○ | ○ |
盗難・いたずら・落書き | ○ | ○ |
窓ガラスの損害・飛び石による損害 | ○ | ○ |
地震(津波や地震起因の火災含む)・噴火 | × | × |
※あて逃げについて、保険会社によってエコノミー型でも補償対象となる場合とならない場合とに分かれています。
一般やエコノミーといった名称や補償内容については保険会社によって異なります。必ず契約前に保険会社の資料等をご確認下さい。
ランドクルーザーの車両保険について
自動車保険の保険料を決める要素には、自動車保険において車の型式ごとのリスクを1、2、3などのクラス別に設定した「型式別料率クラス」が関係しています。型式別料率クラスは、「対人賠償」「対物賠償」「人身傷害」「車両保険」の4つの項目があり、車の型式ごとに4つの項目それぞれで1~17の数字(自家用軽四輪乗用車は1~3の数字)で区分されています。
型式別料率クラスは、数字が大きいほど保険料が高くなりますが、ランドクルーザーの「車両保険」の型式別料率クラスは盗難のリスクが高いことからも高い傾向があります。そのため、特にダイレクト型の自動車保険会社では車両保険をつけられないことが多いです。また、車両保険は型式が古い場合も加入できないことがあります。型式が古い車に関しては、大体、15年~20年ほど経過していると難しそうです。
ランドクルーザーは耐久性が高く、性能が良いため「盗難」にあいやすい車ですが、そのため、車両保険料が高くなる、車両保険に加入できないというのは「人気の車種であるが故の苦労」のようです。しかしながら、各保険会社も保険金支払リスクの高い保険契約の受付は、保険会社の経営にも影響する問題となるため仕方がない部分もあります。ただし、必ずしもダイレクト型の保険会社で加入できないというわけではありません。車両保険の契約を受け付けている場合もありますので契約することが可能か確認してみるとよいでしょう。ダイレクト型の保険会社での契約が難しい場合は、代理店型の保険会社や販売店に相談してましょう。
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まとめ
自動車の盗難認知件数は2003年をピークとして減少傾向が続いています。しかし、盗難被害にあいやすい特定の車種があるというのは、日本損害保険協会の自動車盗難事故実態調査によって分かっています。
今回の調査では、トヨタのランドクルーザーが盗難被害ワースト1位となり、これは、前回の調査に引き続き2回連続ワースト1位の結果でした。ランドクルーザーは高性能な車で人気の車種ですが、盗難被害にあいやすいということから車両保険の加入が難しい、もしくは保険料が高額になる車種です。盗難被害をなくし、ランドクルーザーが車両保険に加入しやすい車になるためにも、ランドクルーザーユーザー1人1人の防犯意識でランドクルーザーを「盗めない車」にしていきましょう。