自動車を運転していて交通違反を犯すと、軽微なものであれば反則金の支払い、重大なものであれば罰金または懲役が科されます。こうした反則金や罰金の支払いが必要となった場合、自動車保険料についても高くなってしまうのでしょうか?
ゴールド免許でなくなれば次回の更新から高くなる
自動車保険は交通違反を起こし、反則金や罰金を支払うことになったからといって直ちに保険料が高くなるということはありません。しかし、多くの会社では記名被保険者がゴールド免許の場合は保険料を割引しています。違反によってゴールド免許でなくなったらその次の自動車保険の契約からゴールド免許割引が適用されずに保険料が高くなります。ゴールド免許からブルー免許になるのは免許証の更新のときなのでそれまでは安い保険料で契約できます。
なお、人身事故を起こして賠償責任を負ったので自動車保険を使ったという場合は、翌年度から等級が下がって保険料が高くなります。
反則金と罰金の違い
日常の会話では反則金のことも罰金と言ってしまいがちですが、この2つは明確に異なるものです。違いを詳しく見ていきましょう。
反則金
反則金を支払うのは比較的軽微(違反点数6点未満)の違反を犯し、交通反則告知書(青キップ)が交付された場合です。軽微であっても違反ではあるので刑事上の責任が発生しますが、行政罰である反則金を支払えば刑事上の責任は問われません(前科も付きません)。納付を行わない場合は刑事訴訟手続に移行し、裁判で有罪となると刑事罰が科されます。
軽微な違反でも裁判を行っていては業務がひっ迫してしまうため、このような制度になっています。
罰金
違反の内容が重い(違反点数6点以上)場合は交通反則通告制度の適用外となり、「道路交通法違反事件迅速処理のための共用書式」、通称、赤キップが交付されます。この場合、反則金により刑事罰が免れるということはなく、罰金刑や懲役刑などの刑事処分を受けることになります。また、青キップで収まる範囲の違反であっても反則金の納付をせず、裁判で有罪となった場合にも罰金刑が科されることがあります。
このように罰金は刑事罰であり、前科がつくことになります。
交通事故加害者の3つの責任
反則金と罰金の違いの説明の中で行政罰や刑事罰などと書きましたが、一般的に交通事故の加害者は刑事上、行政上、民事上の3つの責任が問われます。それぞれの内容について紹介します。
刑事上の責任
事故の状況や違反の程度によって罰金刑、禁固刑、懲役刑などの刑罰を科されます。前述の通り、違反点数6点未満の比較的軽微な交通違反の場合は反則金を納めれば刑事罰を科されないという制度もあります。
物損事故については事故自体についての刑事処分や行政処分はありません。しかし、その場から逃げてしまった、飲酒運転をしていた、大きく速度超過していたなど他に違反があればそのことに対して刑事罰や行政罰が科されることになります。
行政上の責任
交通違反をしたり人身事故を起こしたりした場合、内容に応じた点数が付けられ、その累積点数が一定の基準に達した場合は運転免許の停止や取消などの処分が行われます。軽微な交通違反については行政罰である反則金を納めることで刑事上の責任は問われませんが、点数については反則金を納めても加算されます。
また、刑事上の責任で書いた通り、物損事故はそれ自体に対して刑事処分や行政処分はありませんが、他に違反があればその違反に対して刑事上の責任や行政上の責任が生じます。
民事上の責任
交通事故の加害者は被害者に対して損害を賠償する責任を負います。自賠責保険や任意保険は加害者の民事上の責任に備えるためのものです。当然ながら罰金や反則金を保険で賄うということはできません。自賠責保険では対物賠償が補償されず、対人賠償も金額が限られるので任意保険にも加入することが大切です。
なお、自賠責保険未加入で運転した場合は違反点数6点で赤キップの対象となり、免許停止の行政処分の他に1年以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰が待っています。
まとめ
交通違反や人身事故で反則金や罰金を支払っても直ちに自動車保険料が高くなるということはありません。違反によってゴールド免許ではなくなったら、免許証の更新でブルー免許になった後の契約からゴールド免許割引が適用されずに保険料が高くなります。もちろん、人身事故で民事上の責任を負って賠償金の支払いのために自動車保険を使ったという場合は翌年度から等級が下がって保険料が高くなります。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。