自動車保険の等級は保険会社を乗り換えても引き継ぐことができます。また、一定の条件を満たせば家族間で等級の引き継ぎをすることができます。ただし、等級の引き継ぎにはいくつかの注意事項があります。引き継ぎに失敗すると再び6等級から始めないといけないので、無事故で進めた等級を無駄にしないようにしましょう。
もくじ
等級とは
改めて自動車保険の等級について説明しておきます。等級とは保険会社各社が導入して共同で運用している、契約者の事故歴に応じた保険料の割引・割増を適用する制度です。
等級は1等級から20等級まであり、20等級に近づくほど割引率があがります。新規契約時は基本的に6等級から始まりますが、セカンドカー割引が適用される場合は7等級からスタートします。1年間事故を起こさなければ翌年に1等級上がり、逆に事故を起こして保険を使うと1事故につき3等級または1等級下がります。なお、起こした事故の内容によっては事故の件数としてカウントされず、等級が下がらない場合もあります(ノーカウント事故)。
自動車保険の等級制度とは?無事故で保険料が安くなる!
自動車保険には等級制度というものがあり、保険料を決めるうえで重要な役割を果たしています。事故を起こさない人の保険料が安く、事故を起こした人の保険料が高くなるようになっています。保険料を安く抑えたいので ...
家族間の等級引継ぎ方法
自動車保険の等級はいくつかの条件を満たせば家族間でも引き継ぐことができます。条件について確認しておきましょう。
等級を引き継げる続柄
等級を引き継ぐことができるのは、「記名被保険者の配偶者」「記名被保険者の同居親族」「記名被保険者の配偶者の同居親族」です。友人や知り合い、会社の後輩などには引き継ぐことはできません。ちなみに、親族とは、「6親等以内の血族」および「3親等以内の姻族」を指します。配偶者は内縁関係でも認められますが、保険会社に内縁関係であることを証明する必要があります。
同居であることが重要
一つ注意が必要なのは、親族が等級を引き継ぐには記名被保険者または配偶者と同居している必要があるということです。子供が車を購入したので等級を引き継ごうとしたが、進学や就職のために別居していたので引き継げなかったということがよくあります。進学、就職、結婚などを機に別居となる予定があるのであれば、同居しているうちに等級の引き継ぎをしておきましょう。
※配偶者については別居でも引き継げます。
等級を引き継げるタイミング
等級の引き継ぎができるタイミングも限られる場合もあります。車の状況が変わらず、その車の記名被保険者だけが変わるのであればタイミングは問いませんが、他の車と等級をかけ替える場合はいつでもよいというわけではありません。
この場合は、家庭で利用する車を増車するか、自動車保険に加入中の自動車を廃車・譲渡・返却するタイミングであれば等級の引き継ぎができます。これは、車両入替を利用して等級の引き継ぎを行っているからです。
等級引き継ぎの手順
等級の引き継ぎでよくあるパターンとしては、同居する子供が車を購入するので、等級が進んだ親から子供に等級を引き継ぎ、等級を譲った親は新規契約するというものです。
この、同居の子供が車を購入する場合の等級の引継ぎ手順については以下の通りです。
親の車をA車、子供の車をB車、もともと親が契約していた自動車保険の等級を20等級として説明します。
- 親の契約で子供の車に車両入替をする。
(A車:親・20等級、B車:契約なし→A車:契約なし、B車:親・20等級) - 記名被保険者を子供に変更する。必要に応じて契約者も変更する。
(A車:契約なし、B車:親・20等級→A車:契約なし、B車:子供・20等級) - 親の元の車が無保険状態になっているので、記名被保険者を親として新規契約する。
(A車:契約なし、B車:子供・20等級→A車:親・6または7等級、B車:子供・20等級)
等級の引き継ぎでトータルの保険料が安く
自動車保険は、事故率が高い10代や20代の保険料が高くなっています。さらに子供の契約では年齢条件は厳しくできず、ゴールド免許割引の適用なども難しいです。そこで、親の等級を子供に引き継いで、親は「年齢条件」の設定を厳しくするなどして新規契約することで、子供が新規加入するよりも保険料の総額を安くすることができます。
簡易的なシミュレーションとして、等級による割引の適用前の保険料が親:10万円、子:20万円だったとして、20等級の63%割引と新規7等級の38%割引をそれぞれ当てはめてみます。
子供が新規加入の場合 | 親の等級を引き継いだ場合 | ||||
---|---|---|---|---|---|
親 | 20等級 | 10万円×(1-0.63) =3万7000円 | 親 | 7等級 | 10万円×(1-0.38) =6万2000円 |
子供 | 7等級 | 20万円×(1-0.38) =12万4000円 | 子供 | 20等級 | 20万円×(1-0.63) =7万4000円 |
合計:16万1000円 | 合計:13万6000円 |
以上のように、元の保険料の高い子供に高い等級を割り当てた方が保険料の合計は安くなります。親の保険料は高くなってしまいますが、トータルで考えるのであれば等級を子供に引き継いだ方がお得になることが多いです。
自動車保険一括見積もりでさらに節約
親の等級を子供に引き継ぎ、親が再び新規契約する場合、親が新規契約する保険会社は今までと同じ保険会社である必要はありません。そこで、自動車保険の一括見積もりで保険料をさらに節約しましょう。
自動車保険の一括見積もりは、一度の情報入力で複数の保険会社から自動車保険の見積もりを取ることができるサービスです。これを使うことで、少ない労力でより保険料が安い保険会社を見つけることができます。譲渡前の保険会社を吟味して選んでいたとしても、新しく契約する際は契約の条件が変わっているので保険料が安い保険会社も変わっている可能性があります。ぜひ一度、自動車保険の一括見積もりを利用して、保険料を比較してみてはいかがでしょうか。
一括見積もりで平均3万円保険料が安くなる!?
他社への引き継ぎもOK!乗り換える場合の等級引き継ぎ方法
家族間の等級の引き継ぎでなく、自動車保険を他社に乗り換える場合でも問題なく等級を引き継ぐことができます(一部の共済を除く)。代理店型からダイレクト型という場合やその逆でも引き継げます。また、満期日を迎えるのを機に乗り換える場合でも、契約期間の途中で解約して乗り換える場合でも等級を引き継ぐことができます。
共済との引き継ぎについて
共済の場合であっても、こくみん共済 coopやJA共済などは等級を引き継げるケースが多いです。しかし、教職員共済やトラック共済などでは引き継げないことが多いです。等級引き継ぎの可否は保険会社によって対応が異なるので、事前に等級の引き継ぎが可能か乗り換え先の保険会社に確認するようにしましょう。
また、こくみん共済 coopでは22等級までありますが、一般的な自動車保険は20等級までです。21等級や22等級で乗り換えた場合は20等級の扱いとなります。
満期日での乗り換えが有利
契約期間の途中で解約して乗り換える場合でも等級は引き継げますが、解約するまで無事故であっても等級は上がりません。等級を上げるには乗り換えてから1年間無事故である必要があります。つまり、等級が上がるのが遅くなります。
また、乗り換え前に事故を起こしていた場合、切り替えのタイミングで等級が下がってしまします。もちろん事故有係数適用期間も引き継がれます。等級のことを考えると満期日に乗り換えるのがお得です。
空白期間に注意
自動車保険を乗り換える場合、空白期間が生じないように注意してください。空白期間中に事故を起こしても補償を受けられないというだけでなく、旧契約と新契約の間が空きすぎると等級を引き継ぐことができないのです。基本的に、解約日(満期日)の翌日から7日以内に次の契約の保険始期日がないと原則として等級を引き継げません。
なお、5等級以下のいわゆるデメリット等級については8日以上空いたとしてもリセットされず、13ヵ月以内は等級を引き継ぐことになります。
自動車保険の乗り換えの最適なタイミングは?手順と注意点を解説
自動車保険の保険料を安くしたり、補償内容を今のライフスタイルにマッチさせたりするため、他社への乗り換えを考えることもあると思われます。そのとき、途中解約してすぐに乗り換えるべきなのか、満期日まで待って ...
次の契約までに期間が開いてしまう場合の等級引き継ぎ方法
車を手放す、海外に渡航するなどの理由で次の契約まで期間が開いてしまう場合は、前の契約の保険会社に連絡して「中断証明書」を取得しましょう。中断証明書の発行によって、10年間等級を保存することができます。
ただし、中断証明書の発行には以下のような条件があるのでご注意ください。(※条件については保険会社によって異なる場合があります。詳細については保険会社にご確認ください。)
- 中断する契約の次の等級が7等級以上であること(中断する契約の保険期間中に事故を起こしていた場合、事故内容によって下がる次の等級が7等級以上である必要があります。)
- 中断日(解約日または満期日)以前に以下のいずれかに該当すること
- 廃車・売却(譲渡)・リース会社への返却
- 車検切れ
- 車両入れ替えにより、他の保険契約の対象となる
- 車両の盗難
- 災害による滅失
- 中断日(解約日または満期日)の翌日から13カ月以内に中断証明書の発行の請求をすること
ただし、海外転勤等で日本を離れる場合は以下のような条件となり、車を手放す必要はありません。
- 中断する契約の次の等級が7等級以上であること(中断する契約の保険期間中に事故を起こしていた場合、事故内容によって下がる次の等級が7等級以上である必要があります。)
- 中断日(解約日または満期日)から6カ月以内に記名被保険者が出国またはその予定であること
- 中断した契約が帰国(再入国)前の最後の契約であること
- 中断日(解約日または満期日)の翌日から13カ月以内に中断証明書の発行の請求をすること
また、中断証明書を利用して自動車保険を契約する際にも、
- 中断証明書の有効期限内であること
- 中断日の翌日から10年以内に新規取得自動車に新契約を締結すること(国内特約)
- 記名被保険者の出国日の翌日から10年以内、かつ、帰国日の翌日から1年以内に新しい契約を締結すること(海外特約)
などの条件があります。こちらについても、詳細は保険会社にお確かめください。
自動車保険を中断ってできるの?中断証明書の手続きと発行について
等級の数字が大きくなるほど割引率が高くなる自動車保険。コツコツ積み上げてきた等級も自動車保険の任意保険を解約するとリセットされてしまいます。さまざまなライフイベントの中で引越しや留学、海外転勤などさま ...
初めてでも20等級でも保険料が安くなるかも!?
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。