「新車を購入したのに事故にあって大破してしまった…、せっかくの新車だったのだから修理せずに買い換えたい」という場合、新車特約をつけていれば買い替えにかかる費用について補償を受けられます。新車特約とはどのような特約なのか、つける必要はあるのかなどについて紹介します。
もくじ
新車特約(車両新価特約)とは
新車特約(車両新価特約)とは、車両保険で補償される事故によって、契約の車が「全損」あるいは「修理費用が新車価格相当額の50%以上となった場合」に、車の再購入費用を元の車の新車価格相当額を限度に保険金として受け取れる特約です。なお、内外装・外板部品のみの損傷の場合や盗難の場合には対象とはなりません。
全損とは
- 車が物理的に修理不可能な状態
- 修理費が車両保険金額以上になること
- 車が盗難に遭い発見できない状態(新車特約では対象外)
車両保険の保険金額(保険金が支払われる上限額)は車の時価相当額で設定しますが、車の時価相当額というのは減価償却のために年々減っていきます。イメージとしては、新車時に250万円だった車の場合、250万円→200万円→160万円というような具合です。
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | |
---|---|---|---|---|---|
車両保険金額 | 250万円 | 200万円 | 160万円 | 130万円 | 100万円 |
新車を購入して2年目や3年目というとまだまだ新車同然に走ることができますが、全損したとしても車両保険で受け取れる保険金は同クラスの新車に買い換えるのに必要な費用には足りません。例えば先の250万円の車の場合、3年目に全損したとすると受け取れるのは160万円です。新車特約がついていれば元の車の新車価格相当額の250万円を上限に再購入費用を保険金として受け取れるので、安心して同クラスの新車に買い替えることができます。
新車特約を契約できる車は新車登録から一定期間内の車に限られます。「一定期間」の範囲は保険会社によって異なり、補償開始の月が車両の初度登録(検査)年月の翌月から起算して61カ月以内という保険会社が多いですが他の期間の保険会社もあります。保険会社によって特約の有無や初度登録(検査)年月からの日数は異なるので、どのような決まりになっているのかよく確認するようにしましょう。
どのような場合に役に立つ?
新車特約はどのような場合に役に立つのか具体的な場面例で紹介します。
新車を購入した年に事故で新車価格の50%以上の修理費が発生したとき
新車を購入した年に事故で大破してしまったという場合、「せっかくの新車だったのだから修理して乗るよりも買い換えたい」という気持ちもあると思います。そうした場合、車両保険は損害額(修理費)までしか出ないので、新車価格との差額は自分で出さなければなりません。
例えば、新車価格が200万円で修理費用が120万円という場合、もう一度同じ200万円の車を買うのに80万円は自腹で出す必要があります。一方で新車特約をつけていた場合では、新たに車を購入する費用(本体価格+付属品の価格+消費税)について200万円まで補償を受けることができます。
新車購入数年後に事故で大破してしまったとき
上で説明した通り、車両保険で補償を受けられる上限額は年々減少していきます。そのため、購入後数年たった後に事故で全損してしまった場合、同じクラスの車を買いなおすのに十分な保険金が支払われません。しかし、新車特約をつけていた場合では価値の減少分もカバーして補償を受けられるので、同クラスの車を買いなおすことができます。
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新車特約の注意点
新車特約について、いくつか注意しておかなければならないこともあります。特約の有無を考える際の参考にしてください。
盗難は対象外
車が盗難されて見つからなかったという場合、車両保険では全損扱いとなりますが、新車特約の対象にはなりません。盗まれてしまわないようにしっかりと自己防衛をしておく必要があります。
内外装の損傷のみの場合などは対象外
新車特約の対象となるのは事故で全損または修理費が新車価格の50%以上となった時ですが、修理費が新車価格の50%以上の方には、損傷が内外装・外板部品のみではなく車体の本質的構造部分(エンジンやフレーム等)に著しい損害が生じている、という条件が付いています。内外装や外板部品のみの損傷で修理費が新車価格の50%に達しても新車特約の対象とはなりませんので注意してください。
車両保険の対象とならない事故は対象外
車が全損や半損以上となったとしても、それが車両保険の対象とならない事故で生じたものであれば新車特約の対象外となります。例えば無免許運転や酒気帯び運転などで生じた損害や故障による損害、地震・噴火・津波による損害などです。どのような場合に補償対象となるのかはしっかりと確認しておきましょう。
元の車の新車価格は上限額
新車特約で補償されるのは、元の車の新車価格相当額を限度とした新しい車の再購入費用です。新しく買う車の再購入費用が元の車の新車価格相当額より小さければその額までしか出ません。元の車が300万円して、ローンが100万円残っているという場合でも、300万円を受け取って200万円の車を購入し、残りの100万円でローンを返すということはできないので注意してください。
3等級ダウンする
新車特約を使うと3等級ダウンして事故有係数適用期間が3年加算されます。翌年度から保険料が値上がりしてしまうということは覚えておく必要があるでしょう。
新車特約は必要?
新車特約をつけることができる場合、つける必要はあるのでしょうか?その判断基準は車両価格の大きな車を購入したか、再購入時に車のグレードを落としたり自分の持ち出しが大きくなったりしたくないかというところになるでしょう。
高級車を購入した場合、車両の時価相当額の下落額の絶対値は大衆車よりも大きくなります。つまりは2年目、3年目で同じクラスの車を買いなおす場合に新車特約がないと自分で持ち出ししなければならない金額が大きくなります。
また、事故にあったのだから車のグレードを落とすのも仕方がないと思えたり、自分の持ち出しが大きくなってもかまわないと思えたりするのであれば新車特約は必要ないでしょう。新車特約にも保険料がかかりますので、その人の価値観次第というところもあります。
まとめ
新車を購入したばかりの時期に事故にあってしまい、修理ではなく新車を買いなおしたいと思うのであれば、新車特約が役に立つかもしれません。元の車の新車価格相当額を限度に新しい車の再購入費用を保険金として受け取れます。新車特約の有無や新車特約をつけられる期間は保険会社によって異なるので、複数の保険会社を比較してみるとよいでしょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。