大雪が降ると積もった雪の重みや落雪などで車に損害が発生する場合があります。また、雪道でスリップして事故を起こした、スタックして動けなくなったというようなことも考えられます。このような雪を原因とする損害で自動車保険の補償を受けることはできるのでしょうか。
もくじ
自動車保険・車両保険で補償される?
大雪による損害で自動車保険・車両保険を使えるかは損害の内容や契約内容によって変わります。基本的に車両保険をつけていれば補償対象となることが多いですが、車両保険がエコノミー型の場合は補償対象外となる事故もあります。損害に至った原因と自動車保険の補償について簡易的に表にまとめましたので参考にしてください。
車両保険 | 自動車保険 | ||
---|---|---|---|
一般型 | エコノミー型 | 対人・対物・傷害 | |
雪の重みや落雪、雪崩による損害 | 〇 | 〇 | - |
雪への衝突・雪でスリップして単独事故 | 〇 | × | 〇 |
雪でスリップして他車に衝突 | 〇 | △ | 〇 |
雪の重みや落雪、雪崩による損害
車に積もった雪の重みで車がへこんだ、カーポートが雪の重みでつぶれて車が傷ついた、屋根からの落雪で車がへこんだ、雪崩に車が巻き込まれたというような雪による車の損害は車両保険の補償対象となります。一般型でもエコノミー型でも補償対象です。車両保険を使った場合、翌年度の等級が1等級下がり、事故有係数適用期間が1年加算されます。
なお、車の損害ではなく車庫やカーポートの損害については自動車保険ではなく火災保険の出番です。火災保険を契約している保険会社に連絡して補償を受けられるか確認するとよいでしょう。
雪への衝突・雪でスリップして単独事故
降り積もった雪に衝突して損害が発生した、雪でスリップして単独事故を起こしたというような場合、自分の車の損害は車両保険が一般型であれば補償されます。エコノミー型の場合は単独事故なので補償対象外です。
単独事故により他人のものにぶつかってしまった場合、雪でスリップしたといえ基本的に賠償責任は免れないでしょう。この場合、自動車保険の対物賠償により補償を受けられます。また、自身や同乗者がケガをしたという場合は人身傷害や搭乗者傷害により補償を受けることができます。
自動車保険・車両保険を使った場合、等級は3等級ダウンし事故有係数適用期間は3年加算されます。なお、人身傷害や搭乗者傷害のみ使用した場合は等級ダウンや事故有係数適用期間の加算はありません。
雪でスリップして他人の車両に衝突
雪でスリップして他人の車両に衝突してしまったという場合、ぶつかってしまった相手の車両への補償は自動車保険の対物賠償で補償されます。乗っていた人を死傷させてしまった場合の補償についても自動車保険の対人賠償で補償されます。
自分の車にも損害が発生した場合、一般型の車両保険であれば補償対象となりますが、エコノミー型の場合は補償を受けられないケースもあります。ぶつかった相手の車の登録番号や運転者・所有者が確認できない場合ではエコノミー型では補償を受けられない場合があります。これらが確認できればエコノミー型でも補償を受けられます。また、自身や同乗者のケガについては自動車保険の人身傷害保険や搭乗者傷害険で補償を受けることができます。
自動車保険・車両保険を使った場合、等級は3等級ダウンし事故有係数適用期間は3年加算されます。なお、人身傷害や搭乗者傷害のみ使用した場合は等級ダウンや事故有係数適用期間の加算はありません。
雪にはまって動けなくなった場合、ロードサービスは使える?
雪道を走っているとスタッドレスタイヤを履いていてもスタックしてしまい車を動かせなくなってしまうことがあります。スタックとは雪道やぬかるみなどでタイヤのグリップ力が低下し、アクセルを踏んでもタイヤがその場で空転してしまう状態です。
スタックしてしまった場合、ゆっくりと車を前後に動かしてタイヤ周辺の雪を踏み固める、スコップで周辺の雪を取り除くなどの方法で脱出を図ることもできますが(参考:長岡国道事務所)、どうしても自力で動かせない場合は周りの車に救助を求めるかJAFなどのロードサービスに頼ることになります。
JAF会員ではないという場合、自動車保険のロードサービスに頼りたくなりますが、スタックはロードサービスの対象としている保険会社としていない保険会社とに分かれています。保険会社によって対応の有無が変わるので自分が契約する保険会社に確認してみるのがよいでしょう。
また、スタックに対応している場合でもノーマルタイヤの場合は対象外という会社が多いです。そもそも雪道をノーマルタイヤで走ることは避けるべき行為で法令違反となることもありますが、もしノーマルタイヤでスタックしてしまったら基本的に自動車保険ではなくJAFなどのロードサービスに頼ることになるでしょう。
まとめ
大雪による車の損害は自動車保険・車両保険で補償を受けることができるケースが多いです。ただし、自動車保険・車両保険を使うと翌年度の等級が下がってしまいます。雪の重みや落雪、雪崩などによる車の損害で車両保険を使ったら1等級ダウンで、雪でスリップするなどして単独事故を起こしたり人身・物損事故を起こしたりした場合で自動車保険・車両保険を使ったら3等級ダウンします。また、雪道でスタックしてしまったというケースでは、保険会社によってロードサービスの対象となるのか変わります。自動車保険のロードサービスを使えない場合はJAFなどに依頼することになるでしょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。