仕事や進学のため別の場所で暮らしている家族(親族)が一時的に帰省した際、家にある車を運転することもあるかもしれません。しかし、帰省して乗った家の車で事故に遭う可能性もあり、その場合には自動車保険の補償が受けられないことも考えられます。
では、別居している親族が帰省時に運転しても自動車保険の補償を受けられるようにするには、どのような方法があるのでしょうか。年末年始やお盆の親族の帰省前に、加入している自動車保険の契約内容について一度見直しておきたいところです。
この記事では、別居の親族で自動車保険の補償が適用されるケースと補償を受ける方法のほか、自動車保険における別居・同居や親族の定義・範囲について解説します。
もくじ
自動車保険における別居・同居の定義
自動車保険において、別々の家で暮らす「別居」といっしょの家で暮らす「同居」の違いは、保険契約に関わる重要な要素です。
自動車保険における別居・同居の定義は、保険会社によって異なる場合があるものの、概ね下記のとおりです。
<自動車保険における別居・同居の定義>
- 別居:建物内でお互いに行き来できない別々の住居で生活している
- 同居:建物内でお互いに行き来できる同一の住居で生活している
自動車保険で別居・同居を判断する際には、生計の同一性や住民票記載の有無のほか、扶養関係の有無は影響しません。自動車保険における別居・同居の定義で大きな特徴は、「生活の本拠」として判断する点でしょう。もし、同じ敷地内に建てられた別の住居で主に暮らしていたとしても、それが風呂などの生活用設備を持たない勉強部屋や離れである場合、同居として取り扱うのです。
一方で、二世帯住宅ではあるものの、玄関・トイレ・風呂などの生活用設備を共有しておらず、行き来するためにいったん外に出る必要がある場合には、別居として扱われます。
また、単身赴任だったり、通学のために平日は下宿していたりする場合には、たとえ住民票を移していなくても、別居として扱われます。
ただし、建物の構造、あるいは保険会社によっては、別居・同居の判断が分かれる場合もあるので、加入時に必ず確認するようにしてください。
自動車保険における親族の範囲
自動車保険において「親族」とは、下記の範囲を指します。
<自動車保険における親族の範囲>
- 配偶者
- 6親等内の血族
- 3親等内の姻族
配偶者は、事実上婚姻関係にある方、すなわち内縁状態の方も含みます。ただし、保険会社への確認が必要です。また、近年では、保険会社によって同性のパートナーが配偶者として認められる場合もあります。この場合、電話や書類による関係性の確認を求められるので注意してください。
血族とは、主に運転する「記名被保険者」本人の血縁関係にある親族で、姻族とは配偶者の血縁関係にある親族のことです。具体的には、下図のようになっています。
■6親等内の血族と3親等内の姻族の範囲
血族は記名被保険者本人を起点として算定し、姻族は配偶者を起点として算定します。親等数は本人をゼロとし、世代を経るごとに1つ足していく仕組みです。
自動車保険における同居の親族の詳細については、下記の記事で紹介しています。ぜひご確認ください。
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別居の親族で自動車保険の補償が適用されるケース
別居の親族が運転しても自動車保険の補償が適用されるのは、保険契約の内容において、運転者の範囲を限定していないケースです。具体的には、下記のような契約内容の場合です。
<別居の親族でも自動車保険の補償対象となる契約内容>
- 運転者本人限定特約をセットしていない
- 運転者本人・配偶者限定特約をセットしていない
一般的に、自動車保険は運転する人の範囲を限定すると、保険料が安くなります。
例えば、「運転者本人限定特約」とは、運転者を記名被保険者(車を主に運転する人)のみに限定する特約のことです。「運転者本人・配偶者限定特約」は、これに配偶者を加えた特約を指します。
これらをセットせず、自動車保険の補償対象となる運転者を「限定なし」とすれば、別居している親族が一時帰省中に運転しても、自動車保険の補償を受けることが可能です。
本人限定特約の詳細については、下記の記事で紹介しています。ぜひご確認ください。
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別居の親族が自動車保険の補償を受けるには?
別居の親族のうち、例えば大学生や社会人の子供が、年末年始やお盆に帰省して実家の車を運転する際には、いくつかの方法をとることで、万が一の際も自動車保険による補償を受けられます。
ここからは、別居の親族が自動車保険の補償を受ける方法について、詳しく見ていきましょう。
運転者限定特約を一時的に外す
前述のとおり、運転者限定で本人限定や本人・配偶者限定をセットしている車は、別居している親族が運転しても自動車保険の補償が適用されません。しかし、運転者限定特約を一時的に外すことで、別居している親族も保険適用対象となるのです。
特約を一時的に外す手続きは、保険期間中でも可能です。手続きは、保険会社のウェブサイトや保険代理店への電話連絡などで行うことができます。
家族限定特約をセットする
廃止されている会社も多いですが、運転者限定特約の中に「家族限定」が残っている会社もあります。家族限定が残っている場合、家族限定も、別居の親族が実家の車を運転する際に有効です。家族限定特約は、運転者の範囲を記名被保険者本人とその家族に限定したものです。ここでいう家族は、下記の範囲を指します。
<運転者家族限定特約における家族の範囲>
- 記名被保険者の配偶者
- 記名被保険者または配偶者の同居の親族
- 記名被保険者または配偶者の別居の未婚の子供
別居の子供で注意したいのは、「未婚(婚姻歴がないこと)」に限られることでしょう。子供が一度でも結婚していたら、その配偶者と離婚や死別などをしていても家族限定の範囲には含まれなくなります。
保険会社各社は近年、運転者家族限定特約を廃止する傾向にあります。利用を検討する場合は、加入する保険会社に特約の有無を確認するようにしてください。
1日自動車保険に加入する
「1日自動車保険」に加入してもらうことによって、帰省中の親族が実家の車で事故に遭っても、自動車保険の補償を受けることが可能です。
1日自動車保険とは1日単位で補償が受けられる保険で、運転する必要が生じたタイミングで加入できます。加入申込みは、スマートフォンやコンビニで気軽に行うことも可能となっています。
なお、1日自動車保険は、自分自身や配偶者の所有車では加入できず、他人の車を運転する場合にしか加入できないので注意してください。
1日自動車保険の詳細については、下記の記事で紹介しています。ぜひご確認ください。
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ドライバー保険に加入する
別居している親族が実家の車を頻繁に運転する際には、「ドライバー保険」に加入してもらうのもひとつの方法です。ドライバー保険は1日自動車保険と異なり、保険期間は1年単位となっています。また、等級制度があることや車両への補償がない点も、1日自動車保険との違いです。
例えば、車をもっていない別居の子供が実家に頻繁に帰省し、親の車を継続的に運転する機会がある場合には、ドライバー保険に加入することをおすすめします。
別居の親族も補償を受けられる自動車保険や特約を、比較・検討しよう
単身赴任中の家族や遠方の大学に進学した子供が、帰省時に家の車を安心して運転できるようにするには、自動車保険における「運転者の範囲」を確認しておく必要があります。
運転者限定特約などを設定している場合は一時的に外したり、運転者家族限定特約をセットしたり、あるいは1日自動車保険やドライバー保険を利用することをおすすめします。年末年始やお盆などで帰省した家族が運転しても補償が受けられるよう、自動車保険の契約内容をしっかり確認しておきたいところです。
ちなみに、自動車保険の補償内容や保険料は、保険会社によって異なります。自動車保険や特約の加入・更新を行う場合は、複数の保険会社に見積もりを依頼して、比較・検討するようにしてください。
ただし、各保険会社のウェブサイトで見積もり依頼はできるものの、手間や時間がかかります。そこで、一括見積もりサービスを利用して、手軽に見積もり依頼をするとよいです。
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