事故などで車を廃車にしなければならなくなった場合、自動車保険はどのような手続きをすればよいのでしょうか。自賠責保険と任意保険のそれぞれについて紹介します。廃車後にすぐに新しい車に乗り換えるかしばらく車には乗らないかで対応が変わってきますのでご注意ください。
自賠責保険の対応方法
車を廃車にする場合、自賠責保険は解約します。解約の手続きには登録事項等証明書(抹消記録あり)などの廃車が確認できる公的書類が必要となりますので廃車が完了してから解約の手続きを行いましょう。廃車を確認できる書類に何が使えるかは契約している保険会社にご確認ください。
解約の手続きは郵送か保険会社の営業店の窓口で行います。自賠責保険証明書、廃車が確認できる公的書類、本人確認書類、印鑑、保険料の返還先の口座情報が必要となりますので用意したのちに手続きを行いましょう。詳細な必要書類や郵送先などの情報は自賠責保険を契約している保険会社にご確認ください。
なお、自賠責保険は車両入替の手続きも可能ですが、実務上は自動車で使うケースは少ないです。新しい車では自賠責保険の期間が車検までの日数に足りずに車検までの期間を付け足して契約することになります。そうすると保険料の面でも得にならない場合もあり、手続きが煩雑になることを考えて一度解約することが多いです。
任意保険の対応方法
任意保険については新しい車にすぐに乗り換えるか否かで対応が変わります。
すぐに乗り換える場合
新しい車にすぐに乗り換える場合には車両入替の手続きを行います。車両入替を行うことによってそれまで契約していた任意保険の契約内容や等級を引き継ぐことができます。新しい車に乗り換えたら自動的に入れ替わるのではないので、手続きを行わないと無保険で走行することになってしまいます。納車日が決まったら忘れずに手続きを行いましょう。
なお、車両入替を行うのにはいくつか条件を満たす必要があります。条件が合わなければ新規契約をすることになります。
車両入替の条件
- 入替後の車が新たに取得した車であること、または、入替前の車が廃車・譲渡・返還して他に所有する車に入れ替える場合であること
- 入替後の車の所有者が入替前の車の所有者、入替前の契約の記名被保険者、その配偶者、それらの方の同居の親族であること
- 入替前後の車の用途車種が自家用8車種であること
※保険会社によって条件が異なる場合がありますので契約する保険会社にご確認ください。
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しばらく車には乗らない場合
しばらくは車に乗らないけど、また車に乗るつもりはあるという場合には保険会社に中断証明書の発行を依頼しましょう。中断証明書を取得すれば等級を最大10年間維持することができます。解約して中断証明書を発行しなければ、再び車に乗り始めたときに6等級から契約を開始しなければなりません。高い割引率の等級があるのであれば将来のために中断証明書を発行しておくとよいでしょう。また、再開時には別の保険会社でも等級を引き継いで契約することが可能です。再開後の車や希望補償内容にあった保険会社を探してみましょう。
大変便利な中断証明書ですが、発行にはいくつか条件があります。中断証明書発行の条件は以下の通りです。なお、海外渡航をする場合には別途条件が定められています。詳しくは保険会社にご確認ください。
中断証明書の発行条件(国内特則)
- 中断後の新契約の等級が7等級以上であること
(中断時に7等級以上でもその契約期間中に保険を使っていて再開後に7等級未満になる場合には発行できない) - 廃車・譲渡・返還、車検切れ、一時抹消、盗難により車が手元にない、あるいは乗ることができないこと
- 中断日(解約日または満期日)から13か月以内(保険会社によっては5年以内)に申請すること
中断証明書を使用して契約する条件(国内特則)
- 中断証明書の有効期限内であること
- 新しい車を取得してから1年以内に契約を開始すること
(1か月以内とする保険会社もあります) - 中断証明書を他の契約で使用していないこと
- 中断証明書に記載の契約車両の用途車種が自家用8車種であること
- 再開後の契約の記名被保険者が以下のいずれかであること
- 中断証明書に記載の記名被保険者
- 1.の配偶者
- 1.または2.の同居の親族
- 再開後の契約の車両所有者が以下のいずれかであること
- 中断証明書に記載の車両所有者
- 中断証明書に記載の記名被保険者
- 2.の配偶者
- 2.または3.の同居の親族
※中断証明書の発行の条件、再開の条件は保険会社によって異なる場合があります。詳細については保険会社にご確認ください。
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今後車には乗らない場合
廃車になったのを機に今後は車に乗らないという場合は忘れないうちに解約をすすめましょう。自分から解約の連絡をしないと満期日まで保険を契約し続けることになります。また、自動継続の特約をつけていた場合は契約が自動更新されていってしまいます。解約日を指定して解約することも可能なので忘れずに解約を行いましょう。
なお、同居親族が車に乗る可能性があるという場合には中断証明書の発行を依頼しておいた方がよいでしょう。中断証明書は本人だけでなく配偶者や同居親族も使うことができます。配偶者や同居している子供や孫などが10年以内に車に乗るようになるのであれば、初めから割引率の高い等級で契約できるので保険料を節約できます。
まとめ
事故などで車を廃車にする場合、自賠責保険は解約し、任意保険についてはすぐに乗り換える場合は車両入替、そうでない場合は中断証明書の発行を行いましょう。中断証明書は配偶者や同居親族も使うことができるので、本人が乗るつもりがない場合でも配偶者や同居親族が乗る可能性がある場合には発行しておくことをおすすめします。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。