車を販売店で購入するのではなく、親類などから譲り受けたり購入したりした場合、名義変更等の手続きは自分たちで行うことも多いでしょう。その場合、車の名義変更と自動車保険の名義変更はどちらを先に行うのがよいのでしょうか?
もくじ
車の名義変更を先にするのがスムーズ
車の名義変更と自動車保険の名義変更の両方を行う必要がある場合、車の名義変更を先に行う方がスムーズでしょう。自動車保険は実態としての車の所有者が重視されるので車の名義変更前でも契約が可能な場合が多いですが、所有の実態の確認が必要である場合もあります。
また、車の名義変更は道路運送車両法により15日以内に行わなければならないとされています。場合によっては準備に時間がかかる書類もあるため、早めに手続きを進める意味でも車の名義変更を先に進めるのがよいでしょう。
車の名義変更が間に合わない場合は?
保険の契約内容変更日に車の名義変更が間に合わない場合は保険会社にその旨を相談して対応方法を確認してみましょう。車検証上の持ち主ではなく実態としての持ち主を車の所有者として手続きを進められることが多いと思います。
なお、保険始期日時点(あるいは変更日時点)で前の持ち主がまだ車を管理していたり処分できたりする場合は前の持ち主が実態としての持ち主と判断される可能性があります。そうした場合で車の所有者と契約者が親族でない場合、保険会社によっては手続きを進められない場合がありますのでご注意ください。
自動車保険の「名義」についておさらい
この記事上でも「自動車保険の名義」という記載をしていますが、自動車保険には「名義」が3つあります。それぞれ「契約者」、「記名被保険者」、「車両所有者」です。前段落では基本的に車両所有者について説明していましたが、誤解が生まれないよう3つの名義についておさらいしておきましょう。
契約者とは?
「契約者」とは、保険会社に自動車保険の契約の申し込みをして保険料を支払う人のことをいいます。契約者には、保険契約時の告知義務や契約内容の変更があった場合の通知義務があり、また、契約の変更・解約などを行う権利があります。事故などを起こして保険金を請求する際には、原則として契約者の同意が必要となります。
記名被保険者とは?
「記名被保険者」とは、契約の車を主に運転する人のことをいいます。自動車保険の補償の中心となる人で、補償範囲の中心となったり、記名被保険者の年齢や免許証の色などで保険料が決まったりします。等級を持っているのも記名被保険者です。契約者と同じように告知や通知の義務がありますが、契約者と同一である必要はありません。
自動車保険の「記名被保険者」とは?契約者とは違う?
自動車保険の契約時などに「記名被保険者」という言葉に出くわすことがあります。普段の生活ではなじみのない言葉だと思いますが、記名被保険者は自動車保険の契約において非常に重要な要素の一つです。記名被保険者 ...
車両所有者とは?
「車両所有者」とは、文字通り契約の車を所有している人のことです。車検証(自動車検査証)に記載されている所有者が基本ですが、ローンで車を購入した場合などで、所有者がディーラーやローン会社、リース会社となっていることがあります。そうした場合は、使用者を自動車保険の車両所有者とします。保険会社によっては契約者と車両所有者との関係性で契約を制限されることがあります。
他人名義の車で自動車保険に加入はできる?
車の元の所有者が親など近しい関係性の場合、車の名義変更はせずにそのまま使わせてもらうという場合もあると思います。そうした場合でも自動車保険の加入はできるのでしょうか?
その答えは、契約する保険会社や車両所有者と契約者の関係によって変わってきます。
車の所有者が配偶者・親族の場合
車の所有者が配偶者や親族の場合は問題なく契約できることが多いです。ただし、保険会社によっては別居の親族だと契約できないことがあります。契約する保険会社に確認してみましょう。もし契約できない場合は、車の名義変更を行う、契約する保険会社を変えるなどの手が考えられます。
車の所有者が友人・知人などの場合
車の所有者が友人・知人など、配偶者・親族以外の場合、保険会社によっては自動車保険の契約ができない場合があります。特にダイレクト型(ネット型)の自動車保険では契約できないことが多いです。
自動車税の支払いや速度超過の違反をオービスで検知された場合などは車の所有者に通知が行きますので、基本的には車の所有者を実態に合わせて変更しておくことをお勧めします。
自動車保険の等級も一緒に譲ってもらうことはできる?
自動車保険の等級は契約者や車両保有者、車両自体ではなく「記名被保険者」(=車の主な運転者)に紐づいています。そのため、自動車保険の等級も一緒に譲ってもらうということはできません。
ただし、元の主な運転者が配偶者・同居親族である場合は等級を引き継ぐことが可能です。同居の親から等級を引き継ぐケースが多いです。同居している必要があるので、進学・就職等で別居している場合には引き継げません。
自動車保険で「親の等級をもらう」とはどういうこと?
初めて免許を取得したら車でいろんなところに出かけたいと思うものです。子供が免許を取得したら万が一の事故の備えのために家族が所有する車の自動車保険の補償範囲を見直しておく必要があります。 さらに、子供が ...
まとめ
車を譲り受けたり個人間で売買したりした場合、車の名義変更を自分たちで行うことも多いです。そうした場合、車の名義変更と保険の名義変更の順序は車の名義変更が先にできるとその後の手続きがスムーズです。ただし、自動車保険では所有の実態が重視されるので、名義変更が遅れた場合も契約はできることが多いです。保険会社に相談してみましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。