高速道路が渋滞する要因は、交通量が多いこと、交通事故、工事などがあります。高速道路上で事故を起こしてしまったら、交通量が多く、車両の速度も速い為、大きな事故に繋がる可能性があります。
そうなると賠償しなければいけない範囲も広がってしまいます。
そうならない為に、事故の発生になりやすい要因、高速道路上で注意すべきポイントを紹介します。
高速道路上での事故原因ランキング
令和2年以降で高速道路上における自動車事故が増加傾向となっています。
高速道路は高速での走行が許容されていることから、小さなミスが交通事故に繋がりやすく、また、自動車の交通量が多いことから複数台が絡む事故や重大な事故に繋がりやすいことが特徴です。
では、それらの事故はどんな原因が多いのでしょうか。
警察庁のデータによると、「前方不注意」が一番多く、次いで「静動不注視」が事故の発生原因として多くなっています。
高速道路上での事故原因ランキング
1位 前方不注意 (2,444)
2位 静動不注視 (1,314)
3位 安全不確認 (844)
4位 ブレーキ操作ミス (269)
5位 ハンドル操作ミス (229)
6位 安全速度 (59)
では、これらが原因で起こる高速道路上での事故はどのようなものがあるのでしょうか。そして、それらの過失割合はどのくらいになるのでしょうか。
事故類型別に基本の過失割合と過去の判例で実際にはどのくらいの過失割合になったかを紹介します。
出典:内閣府 第1編陸上交通 第1部道路交通 第1章道路交通事故の動向 第2節令和4年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況
出典:警察庁交通局 「令和4年中の交通事故の発生状況」
合流地点
合流車の過失が大
高速道路上において、本線車道に入ろうとする合流車は、本来本線車道に通行する本線車の走行を邪魔してはならないとされていることより、合流車の過失割合が大きいこととなり、基本の過失割合は70:30となります。
合流車が既に本線車道に接続する加速車線を走行している場合には、本線車としても合流車が本線車道に入ってくることを予測可能であり、適宜減速等の措置をとることで合流車との衝突を回避することが可能であることから、本線車にも前方注視義務違反として責任割合が課されます。
判例
東京地方裁判所 平成25年6月24日
過失割合 20 : 80
道路形態:片側2車線の国道354号線に向かい走る車線における合流地点 最高速度:40キロメートル
当時の状況:道路照明等が設けられているものの、夜間であり暗かった。
概要:A車(大型貨物車)が国道の第2車線を走行中に、右ウィンカーを点灯させながら合流車線から合流し第2車線に変更してきたB車(普通乗用車)と接触した。
争点
①A車は合流しようとしているB車を認めていたのであるから適宜速度を調整しつつ前方を注意してB車の動静を確認すべきであったが、同一の速度で直進を続けB車の確認を怠った。
②B社は合流する際、右ウィンカーを点灯させながら合流し第2車線に進入する際も点灯を継続していたため、A車はB車の進路変更を予見することは可能であり、接触回避は可能であった。
出典:伊藤秀城,「交通事故における過失割合 自動車事故及び消滅時効,評価損等の諸問題」,日本加除出版,2019年,P.337
合流地点注意エリア
合流時に事故が多い高速道路内のエリアをまとめました。以下に挙げた合流地点を走行する際は、他車に注意しましょう。
都道府県 | 道路名 | 区間名 | 位置 | 注意点 |
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宮城県 | 東北道 上り | 村田JCT~仙台南 | 仙台南ICを通過後 |
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福島県 | 東北道 下り | 郡山JCT~本宮 | 郡山JCT付近 |
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埼玉県 | 東京外環道 内 | 外環三郷西~三郷JCT | 三郷JCTの合流部付近(28.3~28.7キロポスト付近) |
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千葉県 | 京葉道路 上り | 穴川~千葉東JCT | 千葉東JCTを通過後、約1km走行した箇所(26.7~28.5キロポスト付近) |
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千葉県 | 京葉道路 下り | 宮野木JCT~穴川 | 宮野木JCT付近(21.5~22.4キロポスト付近) |
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神奈川県 | 横浜新道 下り | 保土ヶ谷~峰岡 | 第三京浜・首都高速三ツ沢線から横浜新道に合流してすぐ(0.8~1.9キロポスト付近) |
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神奈川県 | 横浜横須賀道路 上り | 新保土谷~別所 | 首都高速狩場線との合流部付近(1.0~1.7キロポスト付近) |
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神奈川県 | 横浜横須賀道路 下り | 新保土谷~狩場 | 保土ヶ谷バイパスから横浜横須賀道路に入ってすぐ(0.4~0.8キロポスト付近) |
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新潟県 | 関越道 上り | 水上~湯沢 | 谷川岳PAの分流部から合流部まで |
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新潟県 | 北陸道 下り | 西山~長岡JCT | 西山IC通過後のトンネルから大積PAの分合流部まで |
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新潟県 | 北北陸 下り | 巻潟東~黒崎PAスマート | 「黒埼PA 2km」の看板から黒埼PAの分合流部まで |
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出典:NEXCO東日本 全国の高速道路情報サイト「ドラぷら E-NEXCOドライブプラザ」
車線変更
車線変更した車の過失が大
高速道路上において進路変更をした場合に、その変更後の進路と同一の進路を後方から走行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させる可能性があるときは、進路を変更してはならないとされています。
つまり、その前車の進路変更は原則として許されておらず、過失割合は基本的に進路変更車が大きいこととなり、基本の過失割合は80:20となります。
両車の速度又は方向を急に変えさせるおそれなく進路を変更するためには、両車の速度差および車間距離並びに後続直進車Bの加速性能等を的確に判断した上で進路変更することが必要です。
したがって、追越車線を走行する後続直進車Bの速度が走行車線を走行する進路変更車Aの速度より高速であり、進路変更する自動車はより一層の注意が必要です。
なお、進路変更車Aが車間距離が十分であっても著しい低速度で進路変更した場合、車間距離が十分なのに後続直進車Bより低速度で進路変更した場合等は、事故が起こった際には不適切な車線変更として過失割合に加算されることとなります。
判例
東京地方裁判所 平成22年10月14日
過失割合 20 : 80
道路形態:緩やかな左カーブの3車線道路 制限速度:60キロメートル
概要:A車が時速90キロメートルで第2車線を走行中に、第3車線を60キロメートルで走行していたB車が、第2車線に進入してきた為、B車はA車に気付くことなく接触した。
争点
A車
・制限速度を30キロメートル超過していた。
・B車の左側から追越しを行った。
・B車の存在を認識せず直進し続けた。
B車
・ウィンカーを出さないまま第2車線に進入した。
・第2車線を走行していたA車の直進を妨げた。
・眼鏡をかけることが運転条件だったが、当時かけていなかった。
出典:伊藤秀城,「交通事故における過失割合 自動車事故及び消滅時効,評価損等の諸問題」,日本加除出版,2019年,P.303
車線変更時注意エリア
車線変更時に事故が多い高速道路内のエリアをまとめました。以下に挙げた箇所を車線変更する際は、他車との接触に注意しましょう。
都道府県 | 道路名 | 区間名 | 位置 | 注意点 |
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北海道 | 道央道 下り | 恵庭~千歳恵庭JCT | 千歳恵庭JCTの合流部付近 |
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埼玉県 | 関越道 上り | 大泉JCT~所沢 | 「新座本線料金所 500m」の標識から新座本線料金所まで(4.4~4.8キロポスト付近) |
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千葉県 | 京葉道路 | 穴川~千葉東JCT | 千葉東JCTを通過後、約1km走行した箇所(26.7~28.5キロポスト付近) |
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千葉県 | 京葉道路 下り | 船橋~花輪 | 船橋本線料金所を通過してすぐ(8.9キロポスト付近) |
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千葉県 | 京葉道路 下り | 宮野木JCT~穴川 | 宮野木JCT付近(21.5~22.4キロポスト付近) |
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神奈川県 | 横浜新道 上り | 川上~上矢部 | 「戸塚本線料金所 400m」の標識から戸塚本線料金所まで(9.0キロポスト付近) |
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新潟県 | 関越道 下り | 塩沢石打~六日町 | 塩沢石打IC合流部から下り勾配終了まで |
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出典:NEXCO東日本 全国の高速道路情報サイト「ドラぷら E-NEXCOドライブプラザ」
落下物による事故
積載物を落下させた車の過失が大
高速道路上においては、積載物転落防止義務や、積載物の転落等による事故発生を防止するための貨物の積載状態を点検する義務が課されていることから、高速道路上に積載物を落下させた責任は大きくなります。
したがって、トラックの荷台から積載物が落下して事故が発生した場合の過失割合は60:40となります。
高速道路上に高速度で走行しながら落下物の危険性の程度を即座に判断し、適切な回避措置を講ずることは困難であることから積載物を落下させた車両の過失が大きくなります。
また、落下物自体に接触していなくても、運転者が適切な回避措置ができず、結果的に事故に至ってしまうこともあります。このような非接触型であっても、落下物と事故発生に因果関係が認められる場合は、実際に接触した場合と同じように考慮されます。
高速道路上の落下物処理件数
高速道路上にはどんな物が落ちているのでしょうか。
国土交通省のデータによると、全体的にプラスティック・布・ビニール類が多く落ちていることが分かりました。
もちろん、落下させた車の責任が大きいこととなりますが、高速道路が故に踏んでしまった側にも責任が課されてしまいます。
高速道路を走行する際には、その後の二次災害等を避ける為にもこれらの落下物に注意して安全運転を心がけましょう。
出典:国土交通省 高速道路会社の落下物処理件数(令和4年度)
まとめ
高速道路は駐停車することが原則禁止されていることからも、車同士の事故が発生したら双方に責任割合が発生することが多くあります。つまり、少なからず人や物への賠償責任が発生します。
高速道路における事故の賠償範囲って・・・?!
- 高速での衝突となる為、衝撃が大きく車の損傷個所も大きくなり修理費がかさんでしまう可能性があります。
また、衝撃が大きい分相手方の怪我もひどくなったり、お亡くなりになる可能性もあります。 - 交通量が多い為、二次災害に発展したりと被害が広範囲になる可能性もあります。
- 高速道路である為、レッカー移動が長距離となりレッカー費用や代替交通費がかさんでしまいます。
「自分は大丈夫」と思っていても、上記で紹介したように高速道路上での事故の発生原因の上位は「うっかりミス」で占めており、また、落下物を踏んで事故に発展することがあることからも、誰しも事故の加害者となり得る可能性があります。
そしてこれらの責任割合ならびに賠償金額を判定するのは、保険会社の担当者です。その担当者が相手方に電話をした時、相手方も補償を受けられることで安心されます。
補償の充実した保険に加入していることが、加害者・被害者双方の為にもなります。
まずは複数保険会社ならびに保険商品を比較して充実した補償内容を見つけて、口コミなどを参考にして信頼できる保険会社に探すことをお勧めします。