交通事故は誰の身にも起こるおそれがあり、いつ遭遇するかわかりません。警察庁交通局「令和4年中の交通事故の発生状況」によると、2022年の交通事故件数は約30万件となっています。では、交通事故に遭った場合は、どのように対応したらよいのでしょうか。
そこで本記事では、事故対応の流れや、自動車保険の窓口への報告方法、保険金支払いまでの手順を解説します。最後まで読んで、急な事故にも落ち着いて対応できるようにしましょう。
もくじ
事故発生した場合の6つの対応
事故が発生したら、初動で対応するべき6つの手順があります。特に、負傷者救護、危険防止措置、警察への連絡は、道路交通法第72条に定められた義務のため、必ず行いましょう。
1.負傷者の救護を行う
事故が発生したら、何よりも先に負傷した人を救護しなければなりません。まずは車を路肩に停車させ、救急車を呼びましょう。負傷者を救護しないまま事故現場から立ち去ると、いわゆる「ひき逃げ」となり、救護義務違反となります。負傷者のケガの程度が軽いと見られる場合でも、ハンカチで止血するなどして必ず救護をしましょう。
また、負傷者のケガの程度がひどい場合には、救急車を下記のように手配します。
<救急車手配の手順>
- 119番に電話する
- 電話口の担当者から「火事と救急どちらですか?」と聞かれるので、「救急です」と答える
- 名前、電話番号、事故現場の住所を伝える
緊急性が高い場合には、救急車が到着するまで電話をつなぎ続け、人工呼吸や心臓マッサージなど指示を仰いで応急処置を行います。
2.危険防止措置をとる
事故車を安全な場所に移動するなど、二次被害の発生を防ぐ危険防止措置をとります。損傷が激しく車両を移動できない場合には、後続車に事故を知らせるためハザードランプをつけるか、三角表示板・発煙筒を設置してください。
危険な場所、または渋滞が発生する場合にはロードサービスを呼び、事故車を移動させるケースもあります。ロードサービスは自動車保険に無料で付帯していることも多いため、あらかじめ加入している自動車保険のサービス内容を確認しておきましょう。
3.警察へ連絡する
道路上の安全が確保できたら、警察に連絡します。警察に連絡しない場合、「3ヵ月以下の懲役」または「5万円以下の罰金」が科されます。さらに、「交通事故証明書」や「実況見分調書」が発行されず、保険金の請求ができなかったり、過失割合の交渉で不利になったりするおそれもあります。
相手方から「警察に連絡しないで」と依頼された場合でも、必ず警察に連絡しましょう。
110番に電話したら、電話口の警察官から「事件ですか、事故ですか」と聞かれるので、「事故です」と答えます。その後、警察官からいくつか質問されるので落ち着いて答えることが大切です。一般的な質問内容は下記のとおりです。
<電話口の警察官からの質問例>
- 交通事故の発生日時と場所
- 負傷者と死傷者の人数
- 負傷者のケガの程度
- 交通事故によって損壊した物や損壊の程度
- 事故車の積載物
- すでに講じた措置
4.目撃者などの確認をする
相手方とのトラブルを防ぐために、目撃者がいれば事故状況や連絡先を確認しておくと安心です。警察も目撃者への聴取を行いますが、警察に目撃者の連絡先を聞くことはできません。事故現場では、目撃者に下記のことを聞いておくといいでしょう。
<目撃者に確認すること>
- 被害車両と加害車両の動きはどうだったか
- 信号は何色だったか
- どの場所から見ていたか
- 目撃者の氏名、連絡先
目撃者が見つからない場合でも、ドライブレコーダーに事故前後の動画が残っていると、相手方との認識を合わせやすくなります。
5.事故現場・損傷状況の確認をする
警察が到着する前に、自身でも相手方に話を聞くなどして、できるだけ情報収集しておきます。事故直後は、気が動転して相手方との会話を忘れてしまうケースもあるため、事故現場での相手方との会話はスマートフォンなどで録音しておくと安心です。また、被害車両や加害車両などの写真も撮影しておくといいでしょう。
事故現場における確認事項と撮影すべき写真は、下記のとおりです。
<事故状況の確認事項>
- 事故当時の信号の色
- 衝突位置
- 道路の形態
- 停車位置
- 標識の有無
- 路面のタイヤ痕
- 自身、相手のスピード
- 自身の車両、相手の車両の損傷具合
- ガードレール、縁石の損傷具合
<相手情報の確認事項>
- 氏名
- 住所
- 連絡先
- 車両の登録番号
- 車両の所有者
- 車両ナンバー
- 車種
- 車のボディカラー
- 相手方の運転者、同乗者のケガの有無や程度
- 自賠責保険会社、任意保険会社の情報
- 居眠りや飲酒、不注意の有無
<撮影すべき写真>
- 加害車両、被害車両の損傷状況
- 縁石やガードレールなど周囲の損傷状況
- 衝突位置
- 路面のタイヤ痕
- 現場道路の見通しや交差点の状況
- 目撃者が目撃した場所からの事故現場と信号
6.実況見分に立ち会う
警察が現場に到着すると、実況見分が行われます。実況見分とは、当事者が立ち会い、事故現場を見ながら当時の状況を確認する任意捜査のことです。当事者は、事故直前の車両のスピードや位置関係、信号の色など事故の状況について、できるだけ冷静かつ正確に答えましょう。また、わからない質問があっても、無理に答えず「わからない」と伝えることが大切です。
実況見分が終わると、警察署に移動してあらためて聞き取り調査が行われ、供述調書に記録されます。実況見分によって発行された実況見分調書と供述調書の内容を確認し、間違いがない場合にはサインをすれば現場対応と警察の対応は完了です。
実況見分だけで数十分~2時間程度、さらに聞き取り調査を含めると多くの時間がかかります。当日に急ぎの用事がある場合には、事故発生直後に関係各所に連絡しておくといいでしょう。
また、ひき逃げや飲酒運転など事件性のある交通事故の場合には、裁判所が発付した令状をもとにした現場検証(強制捜査)が行われます。ただし、令状の有無は警察が判断するため、すべてのケースがあてはまるわけではありません。
保険会社への報告から保険金支払いまでの流れ
一連の現場対応が終わった後には、保険会社への報告が必要です。自分が被害者の場合には、自分が契約している保険会社はもちろん、相手方の保険会社との交渉が発生します。
ここでは、保険会社への報告から保険金支払いまでの流れをご紹介します。
1.事故を報告
現場対応が一通り終わったら、すみやかに保険会社の事故受付窓口に一報を入れます。明らかに相手方の過失と思える事故(もらい事故)であっても、今後の対応についてアドバイスをもらえるでしょう。
多くの保険会社の窓口は、電話(フリーダイヤル)やインターネットで24時間対応です。
窓口に連絡すると、下記の内容を聞かれることが一般的です。事前に確認し、情報をまとめておくとスムーズに手続きが開始できます。
<事故対応窓口でされる質問>
- 自動車保険の証券番号
- 運転手の氏名、生年月日、連絡先、保険契約者との関係、運転免許証の記載内容
- 運転車両の登録番号
- 事故が発生した場所、日時、車両損傷の程度、ケガの有無、信号機・標識の有無など
- 相手方の氏名、住所、連絡先、車両の登録番号、車種、ボディカラー、損傷箇所、運転者や同乗者のケガの有無
- 目撃者の氏名、連絡先
窓口で事故受付が行われると、保険金の支払いに関する手続きが始まります。同時に、相手方の自賠責保険会社・任意保険会社を教えてもらうことも重要です。相手方の保険会社の確認は口頭だけでなく、可能であれば保険証券を見せてもらうとよいでしょう。さらに相手方に、事故の発生を保険会社に連絡したかどうか確認します。
2.保険会社の担当者から連絡
事故受付が完了すると、まず保険金請求に必要な書類についての案内があります。一般的に、保険金の請求には下記の書類が必要です。
<保険金請求に必要な書類>
- 交通事故証明書(各都道府県の自動車安全運転センターにて発行)
- 事故発生状況報告書(保険会社から送られてくるものに記入)
- 診断書
- 診療報酬明細書
これらの書類の提出後に、保険会社は保険金の支払い対象となるか「損害調査」を行います。その結果から、支払い可能な保険額や損害賠償の範囲が決定し、保険会社から説明があります。説明された内容をメモし、自身でも契約内容と照合して、差異がないか必ず確認しましょう。
不明点があれば、説明を受けた後でも確認できます。この時点で、不明点がないようにしておくことが重要です。
3.示談交渉の開始
保険会社によって損害賠償の範囲が決定すると、相手方または相手方の保険会社との示談交渉を行います。自身に過失がある場合には、保険会社が示談を代行するのが一般的です。保険会社から示談代行サービスを利用するか確認があるので、サービスの利用可否を伝えてから示談交渉を開始します。もし、保険会社の合意を得ずに自身で示談交渉をすると、合意した保険金の全額が支払われないケースがあるため注意しましょう。
ただし、こちらにまったく非がない「もらい事故」の場合には、保険会社は示談交渉を代行できません。そのため自身で示談交渉をするか、弁護士に代行を依頼する必要があります。
示談交渉では、事故の過失割合を決定します。過失割合によって、損害賠償金額が大きく異なるケースがあるため、慎重に交渉する必要があります。
自動車保険は弁護士への相談・依頼費用について補償を受けられる「弁護士費用特約」が特約で追加できるのが一般的です。契約している保険に弁護士費用特約が付帯しているかどうかも確認しておきましょう。
もらい事故の詳細については、下記の記事で紹介しています。ぜひご確認ください。
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4.支払額の算定
示談交渉により過失割合が決定すると、損害賠償金額が決定します。例えば、自分(被害者)の損害額が1,000万円、相手(加害者)の損害額が100万円で、過失割合が「30%:70%」に決定した場合には、下記のように算定されます。
自分(被害者)の 支払額:30% | 相手(加害者)の 支払額:70% | |
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自分(被害者)の 損害額1,000万円 | 300万円 | 700万円 |
相手(加害者)の 損害額100万円 | 30万円 | 70万円 |
合計 | 330万円 | 770万円 |
支払いには、お互いが損害賠償金を支払う「クロス払い」と、相殺して加害者のみが支払う「相殺払い」があります。一般的には相殺払いとなりますが、念のため保険会社に確認しましょう。
5.示談内容を確認
示談が成立して支払額が確定したら、加害者側の保険会社から示談書が届きます。示談書に署名・捺印をすると、基本的には示談内容の撤回や再交渉はできません。しっかり内容を確認してから、署名・捺印をしましょう。
6.保険金の支払い
示談書を保険会社に返送すると、保険金が支払われます。慰謝料や休業損害などは負傷者に支払われますが、車の修理費や治療費などは修理工場や病院に直接支払われることが一般的です。
保険金は過失割合で決定する
過失割合とは、事故の責任(過失)の割合を示したものです。前述のとおり、過失割合は警察ではなく、双方の話し合い(示談交渉)によって決定します。しかし、お互いの利害があるため示談交渉はなかなかスムーズにいかないことがあります。
過失割合は、事故に関する双方の認識をすり合わせた上で、過去の判例と事故の状況を踏まえて過失割合を決定することがほとんどです。このとき、お互いの証言だけでなく、ドライブレコーダーや目撃者の情報など客観的な証拠があると、話し合いがスムーズに進みやすくなります。
過失割合の詳細については、下記の記事で紹介しています。ぜひご確認ください。
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交通事故の過失割合とは?自動車保険の過失割合の決め方を解説
交通事故が起きたときに、重要なのが過失割合です。事故経験がない人の中には、過失割合は警察が決めると考える人が多いかもしれません。しかし、過失割合は警察が決めるのではなく、当事者双方の話し合いで決定しま ...
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事故が発生したら、まずは落ち着いて負傷者救護や危険防止措置を行うことが重要です。また、警察への連絡は義務のため、必ず行いましょう。損害賠償金額は、示談交渉で決まる過失割合によって左右されます。過失割合は当事者同士で決める必要がありますが、保険会社の代行が可能です。
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