自動車保険には等級制度というものがあり、保険料を決めるうえで重要な役割を果たしています。事故を起こさない人の保険料が安く、事故を起こした人の保険料が高くなるようになっています。保険料を安く抑えたいのであれば知っておくべき等級制度の知識について紹介します。
もくじ
等級制度とは?
等級制度とは、保険会社各社が導入して共同で運用している、契約者の事故歴に応じた保険料の割引・割増を適用する制度です。
等級は1等級から20等級まであり、初めて契約する際には6等級から(契約条件によっては7等級から)スタートします。1年間保険を使う事故を起こさなければ次年度に等級が1つ上がり、逆に保険を使う事故を起こした場合には、次年度に等級が3つまたは1つ下がります。1等級下がるのは、台風・洪水、盗難、火災など偶然な車両事故によって生じた損害に対して保険を使用した場合です。その他で保険を使用した場合は基本的に3等級下がります。
1等級下がる場合、3等級下がる場合の詳細な条件については以下を参考にしてください。
- 1等級ダウン事故
- 前年契約にて、下記アおよびイをいずれも満たす事故があった場合
ア 下記のいずれかの事故であること - (ア)車両保険のみ
(イ)車両保険および無保険車傷害保険のみ
(ウ)車両保険および搭乗者傷害保険のみ
(エ)車両保険、無保険車傷害保険および搭乗者傷害保険のみ
イ 事故発生の原因が下記のいずれかに該当する事故であること - (ア)火災または爆発※1
(イ)盗難
(ウ)騒じょうまたは労働争議にともなう暴力行為または破壊行為
(エ)台風、竜巻、洪水、高潮
(オ)落書または窓ガラス破損※2
(カ)いたずら※3
(キ)飛来中または落下中の他物との衝突 - この場合の事故有係数適用期間には1年が追加されます。
- 3等級ダウン事故
- 1等級ダウン事故を除いた事故全般。
この場合の事故有係数適用期間には3年が追加されます。
※2 飛来中もしくは落下中の物意外の他物との衝突もしくは接触または転覆もしくは墜落によって生じた窓ガラス破損を除く。
※3 被保険自動車の運行によるものおよび被保険自動車と被保険自動車以外の自動車との衝突または接触によるものを除く。
等級ダウンの事例
等級ダウンの具体的なケースを紹介します。
3等級ダウンの事例
- 電柱やガードレールに衝突した単独事故による車の修理代での保険金の受け取り
- 車同士の衝突での車の破損修理費での保険金の受け取り
1等級ダウンの事例
- 車が盗難にあってしまった事による保険金の受け取り
- 台風や洪水などの災害による修理での保険金の受け取り
- イタズラや落書き・飛来物による傷や窓ガラス破損による保険金の受け取り

等級が上がると保険料が安くなる
無事故を続けて等級が20等級に近づくほど、保険料の割引率が高くなり、保険料が安くなります。逆に事故を起こして1等級に近づくほど、割引率が小さくなり(1~3等級は割増になります)、保険料が高くなります。

また、同じ等級であっても事故の有無で保険料が変わってきます。3等級ダウン事故を起こした場合は次年度から3年間、1等級ダウン事故を場合は次年度の1年間は無事故だった時よりも割引率が低い「事故有」の割引率が適用されます。例えば、無事故で16等級から17等級に上がった場合と20等級から事故を起こして17等級に下がった場合では、無事故の17等級の方が保険料が安くなります。
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事故有係数適用期間とは何?
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等級の割引率・割増率
各等級の割引・割増率は以下のようになっています。(保険会社によって内容が異なる場合があります。)
事故なし | 事故あり | |
---|---|---|
1等級 | +64% | |
2等級 | +28% | |
3等級 | +12% | |
4等級 | -2% | |
5等級 | -13% | |
6等級 | -19% | |
7等級 | -30% | -20% |
8等級 | -40% | -21% |
9等級 | -43% | -22% |
10等級 | -45% | -23% |
11等級 | -47% | -25% |
12等級 | -48% | -27% |
13等級 | -49% | -29% |
14等級 | -50% | -31% |
15等級 | -51% | -33% |
16等級 | -52% | -36% |
17等級 | -53% | -38% |
18等級 | -54% | -40% |
19等級 | -55% | -42% |
20等級 | -63% | -44% |
現在の等級の調べ方
新規で契約する場合は6等級か7等級でのスタートですが、既に契約していて現在の等級を忘れてしまったという場合はどこで確認すればよいのでしょうか?現在の等級は自動車保険証券に記載があるので、そこで確認することができます。保険証券を不発行にしている場合は各保険会社のマイページの中でも確認することができます。また、契約を中断中の場合は「中断証明書」で確認することができます。
等級の引き継ぎ
保険会社を乗り換えても等級は引き継がれる
等級制度は各保険会社で共同して運用されています。そのため、保険会社を乗り換えても再度6等級からスタートということにはならず、変更前の保険会社の等級が引き継がれます。等級が進んでいればそのまま大きな割引を継続して受けられますが、逆に事故を起こして等級が低くなったから保険会社を変えて再スタートということもできません。
注意が必要なのが更改のし忘れです。自動車保険を通常、補償が受けられない期間が無いように、前契約の満期日、または解約日を新契約の初日とするのが一般的ですが、満期日の翌日から起算して7日以内であれば、前契約の等級を引き継ぐことができます。ただし、この期限を超えると、たとえ前契約が20等級だったとしても6等級からやり直しとなってしまいます。
6等級未満になったら、わざと更改をし忘れたらよいのでは?と思う人もいるかもしれません。しかし、そうした考えはもちろん対策されています。保険契約を解約しても13か月間は等級の履歴は保存されています。そのため、13カ月以内に再度契約した場合には、6等級未満の等級での契約となってしまいます。6等級に戻すには、高くなった保険料を払いながら無事故を続けるか、13か月間車無しの生活を過ごす必要があります。
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家族間での等級の引き継ぎ
自動車保険の等級はいくつかの条件を満たせば家族間で引き継ぐことができます。引き継ぐことができるのは、「記名被保険者の配偶者」「記名被保険者の同居親族」「記名被保険者の配偶者の同居親族」です。等級を引き継ぐには同居している必要があるので、進学や就職、結婚等で別居となる予定が立っているのなら同居しているうちに等級の引き継ぎを行うようにしましょう。
また、等級の引き継ぎはいつでもできるというわけではありません。車両入替を利用して等級の引き継ぎを行っているからです。引き継ぎができるタイミングは、家庭で利用する車を増車するときか、契約中の自動車を廃車・譲渡・返却するタイミングです。よくある事例としては、同居の子供が免許を取って車を買ったので、親の高い等級を子供に引き継ぎ、親は新規で自動車保険に加入するというものがあります。
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長期間車に乗らない場合は中断証明書の発行をしよう
転勤や海外勤務などで長期間にわたって車を手放すときは、保険会社に「中断証明書」の発行を申請すれば、10年間にわたって、前契約の等級をそのまま引き継ぐことができます。ただし、中断証明書の発行には以下のような条件があります。(※条件については保険会社によって異なる場合があります。詳細については保険会社にご確認ください。)
- 中断する契約の次の等級が7等級以上であること(中断する契約の保険期間中に事故を起こしていた場合、事故内容によって下がる次の等級が7等級以上である必要があります。)
- 中断日(解約日または満期日)以前に以下のいずれかに該当すること
- 廃車・売却(譲渡)・リース会社への返却
- 車検切れ
- 車両入れ替えにより、他の保険契約の対象となる
- 車両の盗難
- 災害による滅失
- 中断日(解約日または満期日)の翌日から13カ月以内に中断証明書の発行の請求をすること
ただし、海外転勤等で日本を離れる場合は以下のような条件となり、車を手放す必要はありません。
- 中断する契約の次の等級が7等級以上であること(中断する契約の保険期間中に事故を起こしていた場合、事故内容によって下がる次の等級が7等級以上である必要があります。)
- 中断日(解約日または満期日)から6カ月以内に記名被保険者が出国またはその予定であること
- 中断した契約が帰国(再入国)前の最後の契約であること
- 中断日(解約日または満期日)の翌日から13カ月以内に中断証明書の発行の請求をすること
以上の条件を満たしている場合は、中断証明書を発行すれば10年間は等級を保存できます。再度自動車保険を契約する場合に、無事故で上げた等級を無駄にしなくて済むのです。積み上げた等級がある場合にはぜひとも活用を考えてみてはいかがでしょうか。
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