万が一の事故のために加入する自動車保険ですが、自動車保険には等級制度があり、自動車保険を使うと等級が下がって保険料が高くなることから総合的な支払額を考えると自動車保険を使わない方がよい場合もあります。事故後に車を修理する場合に、保険を使うのか使わないのかどのような基準で判断すればよいのでしょうか?
もくじ
自動車保険を使うと保険料が高くなる
自動車保険の保険料を決める要素の一つに等級制度があります。契約車両の事故歴によって保険料の割増引率を適用する制度です。等級は1等級から20等級まであり、新規契約時は6等級からスタートします。1年間の契約期間中、事故で保険を使わなければ翌年度の等級が1等級上がり、事故で保険を使えば事故ごとに翌年度の等級が3等級あるいは1等級下がります(等級が下がらない事故もあります)。
また、事故で保険を使うと等級が下がるだけでなく「事故あり係数」というものが適用されます。事故あり係数が適用されている期間は無事故の場合と比べて同じ等級でも割引率が小さくなります。事故有係数適用期間は最大で6年で、3等級ダウン事故を起こしたら3年、1等級ダウン事故を起こしたら1年加算されます。そして、事故有係数適用期間は毎年1年ずつ減算されていきます。
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事故有係数適用期間とは?例をもとにわかりやすく解説
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各等級の割増引率
各等級の割増引率を紹介します。なお、保険会社によって割増引率は異なる場合があるのでご注意ください。
等級 | 無事故 | 事故有 |
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1等級 | +108% | |
2等級 | +63% | |
3等級 | +38% | |
4等級 | +7% | |
5等級 | -2% | |
6F等級 | -13% | |
7F等級 | -27% | -14% |
8等級 | -38% | -15% |
9等級 | -44% | -18% |
10等級 | -46% | -19% |
11等級 | -48% | -20% |
12等級 | -50% | -22% |
13等級 | -51% | -24% |
14等級 | -52% | -25% |
15等級 | -53% | -28% |
16等級 | -54% | -32% |
17等級 | -55% | -44% |
18等級 | -56% | -46% |
19等級 | -57% | -50% |
20等級 | -63% | -51% |
※6F等級、7F等級は前年に契約がある6等級、7等級を表している。
※1等級~6F等級は無事故契約者は含まれないので、事故なし・事故ありの区別はない。
使うか使わないかの判断基準は?
自動車保険を使うと翌年度以降の保険料が上がることから、ちょっとした修理では自動車保険を使わないということも考えられます。どのような基準で判断すればよいのでしょうか。
判断基準として考えられるのが、「元の等級に戻るまでに余分に払う保険料」と「車の修理費用」を比較して、「車の修理費用」の方が大きければ保険を使うというものです。例えば、車の修理費用が5万円で元の等級に戻るまでに10万円を余分に支払わなければならないのであれば、総合的に考えると保険は使わずに自腹で車を修理した方が得です。
保険を使わない場合 | 保険を使う場合 | |||
---|---|---|---|---|
事故年 | 無事故14等級 | 70,000円 | 無事故14等級 | 70,000円 |
1年後 | 無事故15等級 | 68,540円 | 事故有11等級 | 116,670円 |
2年後 | 無事故16等級 | 67,080円 | 事故有12等級 | 113,750円 |
3年後 | 無事故17等級 | 65,630円 | 事故有13等級 | 110,830円 |
合計 | - | 271,250円 | - | 411,250円 |
※上表は等級の割増引率から単純に計算した保険料例です。実際の保険料については保険会社にご確認ください。
こうした計算は保険会社にお願いすればシミュレーションを出してもらえます。そのシミュレーション結果をもとに自動車保険を使うのか使わないのか決めましょう。
保険を使わない場合の賠償金の支払い方法は?
事故で相手への損害賠償の支払いが発生する場合で自身の自動車保険を使わない選択をした場合、相手への賠償金の支払いはどのようにすればよいのでしょうか?
答えとしては、契約する保険会社が振込先を知らせてくれるので、そこに振込を行えばよいです。示談をまとめるときに振込先まで確認してくれます。最終的に保険を使わない判断をするにしても、示談交渉までは保険会社が行ってくれますので、事故時点で傷が軽そうでも必ず保険会社に事故連絡を行うようにしましょう。
数万円では使わないのであれば車両保険の免責金額の設定をするのもあり
こうした判断基準で自動車保険を使うか使わないか決めるとすると、車の修理費用が数万円程度であれば保険は使わないという判断をすることが多くなります。そして、数万円程度では使わないのであれば車両保険に免責金額を設定するのも一つの手です。
免責金額とは簡単に言えば自己負担金額です。免責金額として設定した金額は保険金が支払われずに自己負担する必要があります。しかし、その分は保険会社が保険金を支払わずにすむので保険料が安くなります。
なお、免責金額の設定をすると、自損事故などで大きな損害を出した場合も免責金額の分は自己負担が必要となる(例えば、免責金額5万円で修理費用50万円なら、保険金は45万円しか支払われない)のでご注意ください。
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まとめ
万が一の事故のために加入する自動車保険ですが、少額の修理費用のために保険を使うと結果的に支払額が増えてしまうことになる可能性があります。使うべきか使わないべきか迷ったときは契約している保険会社にシミュレーションを出してもらい、自動車保険を使った場合の値上がりと修理費用とでどちらが高いか比較して決めるとよいでしょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。