「外車は自動車保険料が高い」というイメージがありますが実際のところどうなのでしょうか。外車は国産車と比べて自動車保険料が高いというのは本当か、税金など他の維持費についてはどうなのか、といった疑問に対して答えます。また、外車でも自動車保険料を安くする方法について紹介します。
もくじ
外車だから保険料が高い?
外車は自動車保険料が高いイメージがあると思います。また、そのイメージはある程度は正しいです。しかし、間違えてはいけないのは、外車だからという理由で自動車保険料が高くなっているのではないということです。
自動車保険料は国産車でも外車でも変わらず、車の型式ごとの事故実績に基づいた「型式別料率クラス」によって決められています。事故の統計データから、事故が多く保険金が多く支払われる車は保険料が高く、逆に保険金があまり支払われない車は保険料が安くなるようになっているのです。型式別料率クラスは1~17の17クラス(2020年1月1日以降始期、それまでは1~9の9クラス)に分かれていて、リスクが低い車ほど料率クラスの数字が小さく、保険料が安くなっています。
外車の場合、国産大衆車と比べて車両保険の料率クラスが高い傾向にあります。そのため、自動車保険に車両保険をつけた場合、「外車は自動車保険料が高い」というイメージ通りになります。また、国産車であってもいわゆる「スポーツカー」などは、外車と同じく車両保険の料率クラスが高くなっています。
プリウス(ZVW50)との比較
外車の車両保険の料率クラスが実際に高いのか、トヨタのプリウス(ZVW50)と比較してみましょう。型式別料率クラスは損害保険料率算出機構によるものを使います。なお、各保険会社は損害保険料率算出機構が提供する料率クラスをそのまま使うとは限りません。実際に適用される料率クラスは契約する保険会社にご確認ください。
トヨタ プリウス (ZVW50) | BMW 1シリーズ (1A16) | フォルクスワーゲン up! (AACHY) | |
---|---|---|---|
対人賠償責任保険 | 13 | 4 | 3 |
対物賠償責任保険 | 8 | 6 | 4 |
人身傷害保険 | 11 | 5 | 8 |
車両保険 | 9 | 12 | 7 |
上表の通り、BMW1シリーズ(1A16)の車両保険の料率クラスはプリウス(ZVW50)よりも大きくなっています。ただし、その他の補償内容についてはBMW1シリーズ(1A16)の方が料率クラスが小さいです。また、フォルクスワーゲンのup!(AACHY)は普通車と小型車の違いはありますが、車両保険の料率クラスもプリウスより小さい7となっています。車両保険の料率クラス7というのは、トヨタのアクア(NHP10)と同じクラスです。このことから、「外車=保険料が高い」とはならないことが分かると思います。
車両保険の料率クラスが高くなる理由
外車は車両保険の料率クラスが高い傾向にあります。これは、修理費用が高いことに理由があります。外車の場合、国産車と比べて日本での流通量が少なく、海外から部品を輸入しなければならないので部品代が高くなります。日本へと輸出される車が比較的高価なモデルで、それに伴い部品も高くなることも原因です。
また、工賃についても高くなる傾向にあります。外車は流通量が少ないため、修理ができる業者も少なくなります。また、正規のディーラーに修理を依頼することも多く、その分修理費用も高くなりやすいです。
こうした理由から、外車の車両保険の料率クラスは高くなる傾向にあります。
他の維持費は高い?
外車の自動車保険以外の維持費は国産車と比べて高いのでしょうか。各維持費について紹介します。
税金
車の維持費としてかかる税金には自動車税と自動車重量税があります(ガソリン関係などを除く)。自動車税は総排気量によって、自動車重量税は車両重量によって税額が変わるようになっているので、外車だからといって税金が高くなるということはありません。
外車は税金が高いというイメージを持っている人がいるかもしれませんが、それは外車といって思い浮かべるのがベンツやBMWなどの排気量や重量が大きい車だからです。外車であっても小型車であれば排気量が少なく重量が小さいので税金は多くはかかりません。
車検代
車検代は国産車と比べて高くなる場合があります。車検にかかる費用のうち、自賠責保険料、検査登録印紙代は国産車でも外車でも金額は変わりません。また、自動車重量税は上で紹介したとおりです。重量が大きい車であれば税金が高く、小さい車であれば安くなります。外車だから高くなるということはありません。
しかし、整備が必要となった場合、外車は国産車よりも高額となってきます。車両保険の料率クラスが高くなる理由と同じように、部品が国産車よりも高くつくために整備代が高くなってしまいます。結果として、車検時に支払う税金や自賠責保険は変わらなくても車検代が高くなってしまうのです。
燃料代
外車はすべて国産車よりもガソリン代が高くつく、というわけではありませんが、高い傾向にはあります。理由としては、外車は基本的にレギュラーではなくハイオク指定だからです。なぜハイオクかというと、ヨーロッパで主に使われるガソリンのオクタン価が日本のレギュラーガソリンのオクタン価よりも高いからです。
オクタン価が低いガソリンを入れてしまうとノッキングの原因となったり、エンジン本来のパワーを出しにくくなったりします。そのため、オクタン価が高いハイオク指定となっており、外車のガソリン代が高くなる原因となっています。
外車でも自動車保険料を安くする方法
外車の場合、国産大衆車と比べて車両保険の料率クラスが高い傾向にあるため、保険料が高くなることや、税金や車検などのその他の維持費も排気量や重量が大きい車という理由から維持費も高くなる傾向にあるということを紹介しました。
外車の維持費が高くなる理屈が分かりましたが、工夫することで高くなりがちな自動車保険料を安く抑える事も可能です。下記点に注意して見直してみるとよいでしょう。
運転者の範囲・年齢条件は適切に設定する
運転者限定や年齢条件を厳しくすることで保険料を安くすることができます。運転者限定は記名被保険者(契約車両を主に運転する人)を中心とした補償される人の範囲で、本人限定や本人・配偶者限定などがあります。自分一人しか運転しないのであれば本人限定などの厳しい条件にすることで保険料を安くすることができます。
また、年齢条件で補償される年齢を限定することでも保険料を安くできます。全年齢補償よりも21歳以上補償、21歳以上補償よりも26歳以上補償が安くなりますので、運転する同居親族で一番若い人の年齢に合わせて適宜年齢条件を見直していきましょう。年齢条件の対象となるのは記名被保険者と配偶者および同居の親族のみです。別居している子供が帰省時に運転するという場合でも年齢条件を設定する際には考える必要はありません。
なお、いずれも条件から外れた人が運転しているときに起きた事故については補償対象外となります。運転する人が補償範囲から漏れないように気をつけましょう。
保険会社を比較する
自動車保険は同じ条件であっても保険会社によって保険料が異なります。現在保険代理店を介して契約する代理店型自動車保険に契約しているのであれば、主にインターネットで契約するダイレクト型自動車保険(ネット型自動車保険、通販型自動車保険)に変更するだけで保険料を安くできるかもしれません。ダイレクト型自動車保険は間に代理店を挟まないので、代理店手数料がかからない分、保険料を安くすることができるのです。
ダイレクト型の自動車保険会社でも外車の受付を行っている保険会社が多くあります。自分の車が見積もり可能か一度試してみてみるとよいでしょう。
まとめ
外車の自動車保険料は高い、というのは車両保険の料率クラスが高い傾向にあるためです。しかし、料率クラスは型式ごとに統計データから算出しているので、外車だから高いということはありません。外車でも国産車並みの保険料である場合もありますし、逆に国産車でも保険料がかなり高くなることもあります。
その他維持費についても国産車と比べてすべて高いというわけではありませんが、修理代や燃料代など高くついてしまうものがあります。維持費を安く抑えたいのであれば、自動車保険を複数社比較して安いところと契約するなどの工夫をするとよいでしょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。