車が火災に巻き込まれて燃えてしまった、電気の配線から出火した、放火されてしまったなど事故以外でも自分の車が火災による被害を受けてしまうことがあります。もし自分の車が燃えてしまった場合、車両保険で補償を受けられるのでしょうか。
火災による損害は車両保険で補償される
もらい火や電気配線からの発火、放火など偶発的に起こった火災によって車両に損害が発生した場合は車両保険で補償を受けられます。車両保険には一般型とエコノミー型の2種類がありますが、火災の場合はどちらの種類の車両保険でも補償対象となります。
一般 | エコノミー | |
---|---|---|
車やバイクとの事故 (相手が判明している場合) | ○ | ○ |
自転車との衝突・接触 | ○ | × |
電柱・建物などとの衝突や接触 (単独事故) | ○ | × |
当て逃げ | ○ | △※ |
転覆・墜落 | ○ | × |
火災・爆発・台風・洪水・高潮など | ○ | ○ |
盗難・いたずら・落書き | ○ | ○ |
窓ガラスの損害・飛び石による損害 | ○ | ○ |
地震(津波や地震起因の火災含む)・噴火 | × | × |
※当て逃げについて、保険会社によってエコノミー型でも補償対象となる場合とならない場合とに分かれています。
火災による損害で車両保険を使った場合は翌年に1等級ダウンとなり、事故有係数適用期間が1年加算されます。ただし、他車との衝突や電柱などへの衝突、転覆または墜落によって火災が生じたというような場合は3等級ダウン、事故有係数適用期間の3年加算となります。
火災の場合は修理額も大きくなるので保険を使うべきか迷うケースも少ないかと思いますが、もらい火などの自分に非がないような場合でも1等級ダウンで翌年の保険料が上がってしまうので注意しましょう。
車両保険で補償されない場合もある
火災による損害は概ね車両保険で補償されますが、原因によっては車両保険で補償されない場合もあります。補償されないのは以下のような場合です。
※以下で紹介したもの以外でも補償されない場合があります。詳しくは契約する保険会社の約款などでご確認ください。
故意または重大な過失の場合
契約者や被保険者、保険金の受取人などによる故意または重大な過失によって車両火災となった場合には保険金は支払われません。
故意による火災はわかりやすいと思います。自分で車に火をつけたというようなケースでは車両保険の保険金は受け取れません。もう片方の重大な過失はわかりにくいかもしれません。重大な過失が認められるのはほとんど故意に近い著しい注意欠如のケースです。個別のケースに応じて判断されますが、わずかな注意をしていれば車両火災を防げたというような場合では重大な過失として保険金が支払われない可能性があります。
たばこの火による車両火災は?
たばこによって車両火災に至ることもあります。この場合に補償対象となるかは個別の場合によります。通常考えられる注意をしていたのにもかかわらず、たばこの火が残っていて火災に至ったというような場合では補償対象となるケースが多いと思われますが、車内でシートを倒して寝たばこをしていたというような場合では重大な過失が認められて保険金が支払われないこともありそうです。
実際は個別のケースに応じて判断されるので「この場合は重大な過失」と断言することはできませんが、常識的に考えて火災になりそうな行為は行わないようにしましょう。
地震・噴火またはこれらによる津波の場合
地震や噴火またはこれらによって起きた津波によって車両火災が起きたというような場合は車両保険では補償されません。地震・噴火・津波による損害は幅広い範囲で大きな損害が発生する可能性があり、保険会社が適切な保険料設定ができないために各社とも補償の対象外としています。
なお、一部の保険会社では地震・噴火、これらによる津波で車両が全損した場合に一時金が支払われる特約を提供しています。受け取れるのは一時金で車両保険金額ではない、全損している必要があるというような制限はありますが、被災後に少しでも足しにしたいと思うのであればこうした特約がある保険会社と契約するのもよいでしょう。
地震による損害でも自動車保険は使える?
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車両火災の原因は?
総務省消防庁「令和3年(1 月~12月)における火災の状況(概数) 」によると、令和3年中に車両火災は3,494件あり、最も多い原因は排気管で523件(15.0%)でした。上位5位までの原因は以下の通りです。
原因 | 件数 | 構成比 |
---|---|---|
排気管 | 523 | 15.0% |
交通機関内配線 | 305 | 8.7% |
電気機器 | 254 | 7.3% |
放火 | 156 | 4.5% |
たばこ | 151 | 4.3% |
車両火災は燃料漏れやオイル漏れ、バッテリーのターミナルがゆるんでショートする、エンジンルーム内に可燃物を置き忘れるといったことで起きることが多いです。また、数は多くはないですが、車内の直射日光が当たる場所にライターやスプレー缶を放置する、水を入れたペットボトルやフロントガラスにつけた吸盤がレンズの役割をしてシートが高温になり発火するというようなケースもあります。
車両火災を防ぐためには、車内に必要なものは持ち込まずにライターやスプレー缶などを放置しないようにしましょう。また、電源が必要な機器は正しく接続されていることを定期的に確認してショートしてしまわないように気を付けましょう。車両火災を防ぐには日ごろのメンテナンスやちょっとした注意が重要になります。
まとめ
火災により車に損害が発生した場合、基本的には車両保険で補償を受けることができます。補償範囲が狭いエコノミー型でも補償対象となるのが一般的です。車両保険を使った場合、翌年の等級が1等級ダウンし、事故有係数適用期間が1年加算されます(車との衝突が原因の火災や転覆が原因の火災などは3等級ダウン、事故有係数適用期間の3年加算)。
故意や重大な過失があるとき、地震・噴火・津波により車両火災が発生したときなどは車両保険で補償を受けることができません。重大な過失についてはきちんと注意を払っておけばよいですが、注意を払いようがない地震等への備えが欲しいという場合は、地震等で車両が全損した場合に一時金を受け取れる特約を用意している保険会社もあります。地震や噴火が心配であるならこうした特約があるかを自動車保険の選択基準の一つとしてもよいでしょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。