自動車保険は1年単位での契約です。また、自分の車で契約することはできませんが、1日単位で加入できる1日自動車保険もあります。しかし、1年以内に自動車を手放すことが決まっている、大学生が夏季休暇中に帰省して1か月間だけ車に乗るなど月単位で加入したいということもあると思います。そうした場合、自動車保険の契約はどうすればよいのでしょうか。他人の車を借りて乗る場合と自分の車に乗る場合とに分けて説明します。
他人の車を借りる場合
運転するときごとに1日自動車保険を契約する
1日自動車保険とは、車を借りて運転する場合に1日単位で加入できる自動車保険です。スマホやコンビニから即日加入することも可能です。
1日自動車保険は1回の申し込みで契約できるのは最長連続7日間なので、まるまる1か月間や数か月間契約するということはできません。しかし、車を運転する頻度がそれほど高いのではなければその都度1日自動車保険を契約するというのも有効な手段でしょう。
1日自動車保険の注意点
1日自動車保険は車を借りて運転するときのためのものなので、本人や配偶者が所有する車は対象外となります。また、車を借りる場合であってもレンタカーは対象外とです。レンタカーに関しては借りるときに業者が用意する保険に加入することになるので、そちらを使いましょう。
車の所有者の制限のほかに、車種の制限もあります。1日自動車保険は自家用普通乗用車・自家用小型乗用車・自家用軽四輪乗用車(自家用の3ナンバー、5ナンバー、7ナンバーの車)のみが申し込み可能です。軽トラックなどは対象の車種に含まれていないので注意してください。借りる車が1日自動車保険の対象となるのか事前に確認しておくとよいでしょう。
最後に、借りた車の車両に対する補償が必要な場合は8日以上前に事前登録が必要なことも注意が必要です。車両に対する補償が不要であればその日から補償を開始できるのですが、借りた車を事故で傷つけてしまった場合が心配なのであれば事前に登録を行うようにしましょう。
1日自動車保険はどんな保険?補償内容は?
1日だけあるいは数日だけ友人や実家の車を借りて運転したいというときに便利なのが1日自動車保険です。ここ数年で多く名前を聞くようになってきましたが、どのような保険なのでしょうか。1日自動車保険の基礎知識 ...
ドライバー保険を契約する
車を頻繁に借りて運転するという場合はドライバー保険の契約を検討するのもよいでしょう。ドライバー保険は他人の車を借りて運転中に起こった事故について補償する自動車保険です。保険会社によっては1か月だけ加入できるところもありますが、基本は通常の自動車保険と同様に1年単位での契約となります。1年契約しかできない保険会社を選ぶ場合は不要になったら解約することになります。
ドライバー保険と1日自動車保険の違い
ドライバー保険と先ほど紹介した1日自動車保険との違いがよく分からないという方もいるかと思います。両者の主な違いについて表にまとめました。
1日自動車保険 | ドライバー保険 | |
---|---|---|
契約期間 | 1日単位 (最長連続7日) | 1年間 (1か月だけ加入できる保険会社もある) |
等級制度 | なし | あり (通常の自動車保険との引継ぎは不可) |
年齢 | 保険料に影響なし | 保険料に影響あり |
車両補償 | 契約プランによる | なし |
対象車種 | ・自家用普通乗用車 ・自家用小型乗用車 ・自家用軽四輪乗用車 | ・自家用普通乗用車 ・自家用小型乗用車 ・自家用軽四輪乗用車 ・自家用小型貨物車 ・自家用軽四輪貨物車 ・自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン以下) ・自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン超2トン以下) ・特種用途自動車(キャンピング車) ・二輪自動車・原動機付自転車 |
ドライバー保険は等級制度があるなど長期の契約を意識した内容となっています。また、対象車種も1日自動車保険より広いです。ただし、車両補償はありませんので、その点の注意は必要となります。
車の持ち主が加入する自動車保険を利用させてもらう
あまりおすすめしない方法ですが、車の持ち主が加入している自動車保険を利用させてもらうという手もあります。この場合、運転者限定などで補償範囲から外れていないか車を運転する前に確認する必要があります。
限定する範囲 | 運転できる人 |
---|---|
限定なし | 誰が運転しても補償される |
家族限定 | 記名被保険者+記名被保険者の配偶者+同居の親族+別居の未婚の子 |
本人・配偶者限定 | 記名被保険者+記名被保険者の配偶者 |
本人限定 | 記名被保険者のみ |
※保険会社によって選択できる内容が異なります。近年の家族構成の変化に伴い、家族限定は廃止される傾向にあります。
また、もし事故を起こしてしまい保険を使った場合は等級が下がって翌年度以降の保険料が上がることになります。そうなってしまった場合の保険料の負担について事前に取り決めておかないと後でもめる原因となります。よく話し合っておくようにしましょう。
自分の車を運転する場合
自分の車を運転する場合は1日自動車保険やドライバー保険を契約することはできません。通常の自動車保険に加入する必要があります。しかし、通常の自動車保険は1年契約が基本であり、初めから契約期間を数か月のみにするということはできません。
車を手放す時期が決まっているけどその前に満期が来てしまったなど何らかの事情で数か月間のみ自動車保険を契約したい場合、1年契約をして途中解約することになるのですが、保険料の払い方を年払ではなく月払にすることが出費を抑えるために重要となります。
月払の保険料は年払の保険料よりも5%ほど高くなっているので、通常、保険料をできる限り抑えたい場合は年払の方を選ぶのですが、途中解約することが契約時に決まっている場合は月払にした方が出費を抑えられることが多いです。年払でも途中解約をすれば解約返戻金として支払った保険料の一部が戻ってきますが、多くの保険会社では返戻金の金額の計算に以下の表のような短期率を採用していて、残りの月数から単純計算した額よりも戻ってくる額が少なくなっています。
期間 | 7日まで | 15日まで | 1カ月まで | 2カ月まで | 3カ月まで | 4カ月まで | 5カ月まで |
---|---|---|---|---|---|---|---|
短期率 | 10% | 15% | 25% | 35% | 45% | 55% | 65% |
期間 | 6カ月まで | 7カ月まで | 8カ月まで | 9カ月まで | 10カ月まで | 11カ月まで | 12カ月まで |
短期率 | 70% | 75% | 80% | 85% | 90% | 95% | 100% |
解約返戻金=年間保険料×(1-既経過期間に対応する短期率)
例えば5か月半で解約した場合、残り半年はあるので保険料の半分くらいは戻ってくることを期待してしまいますが、上表の短期率に従って計算すると、解約返戻金として戻ってくるのは支払った保険料の30%という金額です。
このように、年払で契約して途中解約すると戻ってくる保険料がかなり少なくなります。そのため、初めから途中解約することが決まっているのであれば月払で契約した方がよいでしょう。
自動車保険を途中解約したら解約返戻金はある?デメリットは?
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中断できれば中断しておこう
車を手放すなどで途中解約する場合、中断できる条件が整っているのであれば中断証明書の発行をしておきましょう。中断証明書を発行すれば等級を10年間保存することができます。中断証明書発行の条件は以下の通りです。なお、海外渡航をする場合には別途条件が定められています。詳しくは保険会社にご確認ください。
中断証明書の発行条件(国内特則)
- 中断後の新契約の等級が7等級以上であること
(中断時に7等級以上でもその契約期間中に保険を使っていて再開後に7等級未満になる場合には発行できない) - 廃車・譲渡・返還、車検切れ、一時抹消、盗難により車が手元にない、あるいは乗ることができないこと
- 中断日(解約日または満期日)から13か月以内(保険会社によっては5年以内)に申請すること
中断証明書を使用して契約する条件(国内特則)
- 中断証明書の有効期限内であること
- 新しい車を取得してから1年以内に契約を開始すること
(1か月以内とする保険会社もあります) - 中断証明書を他の契約で使用していないこと
- 中断証明書に記載の契約車両の用途車種が自家用8車種であること
- 再開後の契約の記名被保険者が以下のいずれかであること
- 中断証明書に記載の記名被保険者
- 1.の配偶者
- 1.または2.の同居の親族
- 再開後の契約の車両所有者が以下のいずれかであること
- 中断証明書に記載の車両所有者
- 中断証明書に記載の記名被保険者
- 2.の配偶者
- 2.または3.の同居の親族
※中断証明書の発行の条件、再開の条件は保険会社によって異なる場合があります。詳細については保険会社にご確認ください。
自動車保険を中断ってできるの?中断証明書の手続きと発行について
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中断した自動車保険を再開するには?
車を手放した、あるいは海外に渡航したなどの理由で中断した自動車保険がある場合、条件を満たせばその中断証明書を使って昔の等級を引き継いで契約を再開することができます。自動車保険を再開する場合、どのように ...
まとめ
自動車保険は1年契約が基本であり、1か月間だけや数か月間だけというような契約はできません。他の人の車を短期間だけ借りるという場合は1日自動車保険やドライバー保険を活用し、自分の車に乗るという場合は途中解約することになるでしょう。契約時点から途中解約することが決まっている場合、多くのケースでは年払よりも月払の方が出費を抑えることが可能です。保険料の支払い方にも目を向けるとよいでしょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。