警察庁の犯罪統計によると、車上荒らしの認知件数は2002年をピークに減少しているものの、2022年においても年間36,590件(車上狙いと部品狙いの合算)と数多く発生しています。もし自分が車上荒らしの被害にあってしまった場合は自動車保険で補償を受けることはできるのでしょうか。
被害にあったもので補償が異なる
車上荒らしの被害にあったものが鍵穴や窓ガラスなどの車自体の損害か車の中に置いていた身の回り品かによって補償内容が異なります。
車自体の損害
鍵穴や窓ガラスなど車自体の損害の場合は車両保険の補償対象となります。カーナビなど車に固定されたものについても車両保険の補償対象です。しかし、カーナビであっても取り外して持ち歩きができるようなポータブルタイプのものは「車両の一部」とはみなされず、車両保険の対象とはならないことが一般的です。
車両保険には一般型と補償範囲が狭い代わりに保険料が安いエコノミー型がありますが、車上荒らしの場合は一般型でもエコノミー型でも補償対象となります。まずは警察に届け出たうえで保険会社に連絡しましょう。
車内に置いていた身の回り品の損害
車内に置いていた身の回り品については「身の回り品補償特約」(保険会社によって名称は異なります)をつけていれば補償を受けられる場合があります。
身の回り品補償特約では契約車両の車内、トランク内、またはキャリアに固定された身の回り品に損害が発生した場合に補償を受けられます。ただし、通貨、有価証券、クレジットカード、ノートパソコン、貴金属、宝石、携帯電話などは補償の対象外となっています。こうしたものは車内に置きっぱなしにしないように注意しましょう。
保険を使ったら等級は下がる?
車上荒らしにあって車両保険を使った場合、等級が1等級下がり、事故有係数適用期間が1年加算されます。身の回り品補償特約については1等級ダウン事故扱いの保険会社とノーカウント事故扱いの保険会社とがありますが、車上荒らしの場合は車両保険と一緒に使うことが多く、その場合は1等級ダウンとなります。ノーカウント事故扱いの保険会社で身の回り品補償特約を単独で使うことができた場合は等級は下がりません。
車上荒らしにあってしまった場合に自動車保険を使うかは車両の修理費用や盗まれたものの損害額と等級ダウンによる保険料の値上がりを比べてみて決めましょう。翌年度の保険料がどれだけ上がるかは契約している保険会社に尋ねれば試算して教えてくれるでしょう。
車上荒らしで狙われやすいのは?
日本損害保険協会の自動車盗難事故実態調査結果より、車上荒らしで被害件数の多かった被害品、車名、時間帯、場所を紹介します。
被害品
順位 | 被害品 | 件数 | 構成比 |
---|---|---|---|
1 | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) | 29 | 18.4% |
2 | バッグ類 | 22 | 13.9% |
3 | 金銭・カード類(ETCカード除く) | 21 | 13.3% |
4 | タイヤ・ホイール | 12 | 7.6% |
5 | カーナビ | 9 | 5.7% |
出典:第22回自動車盗難事故実態調査結果(2020年11月調査)
被害品として多いのは、バンパーやドアミラーなどの外装部品、バッグ類、金銭・カードなどです。昔はカーナビが狙われることが多かったのですが、現在ではバンパーやドアミラーなどの外装部品が盗まれることが多くなっています。また、バッグ類なども多く盗まれており、面倒でも車内に置いたままにしないことが大切です。
車名
順位 | 車名 | 支払件数 | 構成比 |
---|---|---|---|
1 | プリウス | 135 | 13.9% |
2 | ハイエース | 31 | 3.2% |
3 | アルファード | 28 | 2.9% |
4 | ランドクルーザー | 26 | 2.7% |
アクア | 26 | 2.7% |
出典:第24回自動車盗難事故実態調査結果(2022年調査)
車上荒らしは基本的に盗んだものを売るために行われるので、人気が高く需要のある車が狙われやすいと言えます。また、販売台数が多いので率ではなく被害件数でみると多くなるというのもあるでしょう。
時間帯
時間帯 | 支払件数 | 構成比 |
---|---|---|
日中(9~17時) | 308 | 31.7% |
夜間(17~22時) | 98 | 10.1% |
深夜~朝(22~9時) | 500 | 51.5% |
不明 | 65 | 6.7% |
出典:第24回自動車盗難事故実態調査結果(2022年調査)
時間帯でいうとやはり深夜~朝の22~9時が多くなっています。しかし、3割は日中に被害にあっており、日中であっても気を抜いてはいけないことが分かります。
場所
順位 | 発生場所 | 支払件数 | 構成比 |
---|---|---|---|
1 | 自宅(屋外) | 45 | 37.2% |
2 | 契約駐車場(屋外) | 29 | 24.0% |
3 | 通勤先駐車場 | 10 | 8.3% |
4 | コンビニ・スーパー駐車場 | 6 | 5.0% |
5 | 自宅(屋内) | 5 | 4.1% |
出典:第22回自動車盗難事故実態調査結果(2020年11月調査)
多くは屋外の自宅や契約駐車場で発生しています。深夜に行われることが多いことや人の目につきにくいこと、監視カメラなどのセキュリティが甘いことが多いことなどが要因だと思われます。
車上荒らしにあわないためには
自動車保険で車上荒らしに備えておくのもよいですが、大切なことは車上荒らしの被害にあわないように対策を行うことです。
まず基本として車の窓や鍵はしっかりと閉じておくようにしましょう。犯行に時間がかからないと狙われる確率が高くなります。また、車内に物を置いたまま車を離れないようにしましょう。外から見て金目のものが置いてあることが分かれば対象として狙われやすくなります。
最新の車種では充実したセキュリティ機能がついていることがありますが、そうした機能がついていなければ市販の防犯グッズを使うのもよいでしょう。警戒していることが分かれば心理的に盗みづらくなります。アラームや光で犯人を威嚇したり窓ガラスにフィルを張って割れにくくして犯行に時間がかかるようにしたりします。
また、可能であれば車を停める場所を選びましょう。なるべく人目があって明るい場所がよいです。しかし、現実的に車上荒らし対策として駐車場を変更するのは難しいという場合は他の対策をより気を付けて行うようにしましょう。
まとめ
車上荒らしの被害にあった場合、車自体の損害については車両保険で車に載せてあった身の回り品の被害については身の回り品補償特約で補償を受けることができます。被害にあったらまずは警察に届け出て、その後保険会社に連絡を行うようにしましょう。また、一番は車上荒らしの被害に遭わないことなので、日ごろからセキュリティには気を付けるようにしましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。