ルームシェアをしているルームメイトに車を貸すという場合、あるいはルームメイトに車を借りるという場合、自動車保険はどのような補償内容にすればよいのでしょうか。間違った補償内容にしていると事故を起こしても補償を受けられない場合があるので注意が必要です。
運転者限定特約を要確認
車の貸し借りをして運転するという場合、その車で加入している自動車保険の運転者限定特約を確認しましょう。運転者限定特約がついていると保険料を安くすることができますが、限定した範囲外の人が車を運転した場合は補償を受けることができません。
運転者限定特約で限定できる範囲は一般に「本人限定」「本人・配偶者限定」「家族限定」の3種類があります。どの範囲で限定できるかは保険会社によりますが、最近の流れとしては家族限定が廃止されて本人限定が新設されるようになっています。
限定する範囲 | 運転できる人 | 保険料 |
---|---|---|
限定なし | 誰が運転しても補償される | |
家族限定 | 本人+本人の配偶者+同居の親族+別居の未婚の子 | |
本人・配偶者限定 | 本人+本人の配偶者 | |
本人限定 | 本人のみ |
※家族限定について、保険会社によって限定できる範囲が異なる場合があります。
※親族とは6親等以内の血族、3親等以内の姻族(配偶者の血族)を指します。
兄弟姉妹でルームシェアをしているなど親族でルームシェアをしていて運転者限定が家族限定という場合を除き、運転者限定がついている場合はルームメイトと貸し借りした車で事故を起こしても補償を受けることができません。
自動車保険は運転者の限定で安くなる
自動車保険料を節約する方法の一つに、自動車保険に「運転者限定特約」をつけることがあります。だれが運転してもよい状態から運転する人を限定することでリスクを減らし、結果として保険料を安くすることができるの ...
親族とのルームシェアなら年齢条件にも注意
兄弟姉妹など親族でルームシェアをしているという場合であれば、運転者限定特約のほかに年齢条件にも注意する必要があります。年齢条件とは、自動車保険を契約する際にあらかじめ契約対象の車を運転する人の年齢を制限する事で保険料が安くなる仕組みです。10代や20代前半などの若年層は事故率が高いという統計データがあり、そうした年齢代の人を補償対象外とすることで保険料を安くすることができるのです。
限定する範囲 | 運転する人の年齢 | 保険料 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
20歳以下 | 21歳~25歳 | 26歳~29歳 | 30歳~34歳 | 35歳以上 | ||
限定なし | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
21歳以上 | × | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
26歳以上 | × | × | 〇 | 〇 | 〇 | |
30歳以上 | × | × | × | 〇 | 〇 | |
35歳以上 | × | × | × | × | 〇 |
年齢条件が適用される範囲は記名被保険者(主に車を運転する人)と配偶者および同居の親族です。それゆえ、友人などとルームシェアをしている場合は年齢条件を気にする必要はありませんでしたが、親族とルームシェアをしている場合は年齢条件も気にする必要があります。
例えば兄や姉が26歳で年齢条件を26歳以上補償としていた場合には、双子などを除き弟や妹が運転しても自動車保険で補償を受けることができません。この場合、弟や妹の年齢に合わせて21歳以上補償や全年齢補償などに設定する必要があります。
運転者の年齢条件って何?
10代、20代は他の年代と比べて事故の当事者となる確率が高いことが統計データよりわかっています。運転者の年齢条件で自動車保険の補償の範囲に入る下限の年齢をあげることによって、事故を起こす確率が小さくな ...
自動車保険を使う場合の注意点
補償内容を見直してルームメイトで車を貸し借りしても補償を受けられるようになったとしても、実際に事故を起こしてしまって自動車保険を使う場合の注意点もあります。それは車を貸した人の自動車保険の等級が下がってしまい、翌年度以降の保険料が高くなってしまうことです。
自動車保険には等級制度というものがあり、1年間無事故で保険を使わないと等級が1等級上がり、保険料が安くなります。逆に事故を起こして保険を使うと3等級あるいは1等級下がり、保険料が高くなってしまいます。
ルームシェアの場合、金銭面のトラブルにはよく注意しておく必要があります。事故を起こしてしまったときの保険料の値上がりの負担をどうするのか事前に決めておかないと、それをきっかけとして仲がこじれてしまう可能性もあります。
問題を避けるための方法
もし事故を起こしてしまった場合にルームメイトに経済的負担がかかるのは避けたいという場合には以下のような手段が考えられます。どのような方法があるのか確認しておきましょう。
他車運転特約
ルームメイトが互いに車をもっていて、何らかの事情で一方の車を借りるという場合には他車運転特約が有効です。他車運転特約(他車運転危険補償特約) とは、契約の車以外を臨時に借りて運転中に起こしてしまった自動車事故を自分の自動車保険を利用して補償を受ける特約です。補償内容は自分の自動車保険の内容に準ずる内容になります。例えば自分の自動車保険に車両保険がついていない場合は車両保険の補償を受けることができません。
また、車をもっていないという場合でも、未婚(過去に婚姻歴がない)の場合は親の自動車保険の他車運転特約を使うことも可能です。ただし、親の車の自動車保険に本人限定や本人・配偶者限定などがついていた場合はこの方法は使えません。また、親の自動車保険を使うことになるので翌年度の親の等級が下がってしまうことになります。
他車運転特約の注意点としては、停止中の事故は補償の対象外となることです。つまりは、駐車場に止めていた車にぶつけられてしまったという場合などは補償の対象外となります。この場合は相手から賠償を受けられますが、当て逃げされて相手が分からない場合などでは他車運転特約で自分の車の車両保険を使おうと思っても使えないということになります。
「他車運転特約」とは?大勢のドライブであると安心!
行楽シーズンなどは特に、グループで出かけられる方も多いのではないでしょうか。友人同士でドライブの計画があったり、車で行楽地のキャンプ場などに出かける方も増えるでしょう。夏は海水浴、冬はスキーにと大人数 ...
1日自動車保険
ルームメイトが車をもっていないなど他車運転特約を利用できない場合や自分の車で車両保険に入っていないなどで他車運転特約以外の方法を使いたい場合では1日自動車保険という手があります。1日自動車保険では自分や配偶者以外から車を借りて乗る場合に1日単位などで加入できる自動車保険です。スマートフォンからやコンビニなどで手軽に加入することができます。
肝心の補償内容についても、対人賠償や対物賠償はしっかりと補償され、自身のケガについても搭乗者傷害や自損事故傷害による補償があります。また、借りた車の修理費用についても、7日前までなど事前に申し込む必要がありますが、補償を受けることができるプランもあります。
1日自動車保険に加入していれば万が一事故を起こしてしまったとしてもルームメイトの保険を使って等級を落とすということがありません。金銭面の負担を明確化するためにも1日自動車保険を検討するとよいでしょう。
1日自動車保険はどんな保険?補償内容は?
1日だけあるいは数日だけ友人や実家の車を借りて運転したいというときに便利なのが1日自動車保険です。ここ数年で多く名前を聞くようになってきましたが、どのような保険なのでしょうか。1日自動車保険の基礎知識 ...
ドライバー保険
自分で車をもっておらず、ルームメイトの車を頻繁に借りるという場合には1日自動車保険ではなくドライバー保険に加入するという方法もあります。ドライバー保険は契約期間が原則として1年間であること、等級制度があること、保険料が等級や年齢によって変わること、車両補償がないことといった点で1日自動車保険と違いがあります。
契約期間や等級制度があることを考えると、頻繁に継続してルームメイトの車を借りて運転する機会がある場合はドライバー保険、そうでない場合は1日自動車保険の方が向いていると言えるでしょう。ただし、ドライバー保険の場合は事故を起こしてしまったときの車両の修理費用・再購入費用をどうするのか事前に話し合っておく必要があります。
1日自動車保険 | ドライバー保険 | |
---|---|---|
契約期間 | 1日単位 (最長連続7日) | 1年間 |
等級制度 | なし | あり (通常の自動車保険との引継ぎは不可) |
年齢 | 保険料に影響なし | 保険料に影響あり |
車両補償 | 契約プランによる | なし |
まとめ
ルームメイトと車を貸し借りするという場合、運転者限定特約や年齢条件に気をつけないと事故を起こしても補償を受けられない可能性があります。運転する前に必ず補償範囲に含まれているのか確認するようにしましょう。なお、事故を起こしてルームメイトの自動車保険を使うと等級が下がって翌年度からの保険料が上がってしまいます。ルームメイトに迷惑をかけたくない、ルームメイトと細かく金銭的な取り決めを行うのは面倒という場合には、他車運転特約や1日自動車保険、ドライバー保険というような方法もあります。必要に応じてうまく活用するようにしましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。