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自動車保険で修理費用が全額出ない!?役立つ特約はある?

投稿日:2019年12月16日 更新日:

事故を起こして車に修理が必要なとき、自動車保険の対物賠償車両保険だけでは修理費用全額は出ない可能性があります。対物賠償や車両保険で補償されるのは修理費用か車の時価相当額(車両保険金額)のうち低い方までなので、修理費用が車の時価相当額を超えた場合は修理費用が全額出ないことになります。事故相手などともめる原因の一つになりますが、何か役立つ特約はあるのでしょうか。

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補償は時価額まで

日本において、法律上の損害賠償責任における損害賠償額は時価額を限度としています。時価額が50万円の車で修理費用が80万円としても、法的には損害額は50万円であってそれを超える金額は法的な賠償責任は負いません。ゆえに自動車保険から支払われるのも時価額までとなります。新車のときに高いお金を出したとか思い入れのある車だからなどの個人の思いは理解できますが、それを考慮して補償額を増やすというのは難しいでしょう。

時価額を超える分の修理費用は対物賠償の対象外

時価額は何で決まる?

事故直前の車両の時価額については、「いわゆる中古車が損傷を受けた場合、当該自動車の事故当時における取引価格は、原則として、これと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得しうるに要する価額によつて定めるべきであ」るとされています(最高裁昭和49年4月15日判決)。

多くの場合、その価格はオートガイド社が毎月発行している「オートガイド自動車価格月報」(通称:レッドブック)に掲載されている価格を参考に決められています。提示された金額に納得がいかないという場合、同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車が実際に取引されている金額を示すことができれば、その金額での補償が認められることもあります。

役に立つ特約はある?

上での説明の通り、対物賠償責任保険や車両保険のみであれば補償額は時価相当額と修理費用のどちらか低い金額までとなります。しかし、加害者側や被害者側で契約している特約によっては時価額以上の修理費用が保険金として支払われる可能性があります。どのような特約があるのか紹介します。

対物差額修理費用補償特約(対物超過特約)

事故相手の車の修理費が時価額を超え、相手方が修理を望んだ場合、修理額と時価額の差額について過失割合に応じた分を相手方の車1台あたり50万円を限度に支払う特約です。

例えば、事故相手の車の時価額が50万円で修理費用が80万円の場合、過失割合が10:0でこちら側が加害者側だとしても対物賠償で支払われるのは50万円のみです。しかし、この特約を契約していれば差額の30万円分も保険金として支払われます。修理代より低い額しか賠償されないのは心情的に納得がいかないという事故相手との示談交渉を円満・迅速に解決しやすくなります。

なお、時価額との差額が支払われるのは相手が修理する場合です。事故後に廃車にするという場合は修理費用との差額は支払われません。

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車両超過修理費用特約

車両事故により修理費用が車両保険金額を上回る場合、車両保険金額に一定の金額を加えた額を限度に、実際の修理費が車両保険金として支払われます。限度額については保険会社によって異なりますが、30万円や50万円といった金額です。

この特約があれば、時価額を上回る修理費用がかかっても修理費用が一定範囲に収まれば保険金で足が出ずに修理することができます。

なお、この特約から保険金が支払われるのは実際に修理した場合です。修理をせずに買い替え費用の足しにするということはできません。また、この特約は対物差額修理費用補償特約ほどメジャーではなく、保険会社によっては存在しない場合もあります。

新車特約(車両新価特約)

新車などを購入後に事故等で車両が全損または修理費が新車価格相当額の50%以上となった場合、車を新たに買うのにかかる費用について新車価格相当額を限度に補償を受けることができます。

新車を購入して1年後や2年後の場合、「まだまだ新車同然に走るから同じクラスの新車が欲しい」という気持ちもあると思います。しかし、購入してから1年や2年走らせた車の時価相当額では同クラスの新車の購入価格には届きません。この特約があれば新車価格相当額を限度として補償を受けられます。なお、盗難の場合はこの特約の対象外となります。

新車特約を契約できる車は新車登録から一定期間内の車に限られます。「一定期間」の範囲は保険会社によって異なり、補償開始の月が車両の初度登録(検査)年月の翌月から起算して11カ月以内という保険会社もあれば61カ月以内という保険会社もあります。保険会社によって特約の有無や初度登録(検査)年月からの日数は異なるので、どのような決まりになっているのかよく確認するようにしましょう。

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車両全損時諸費用特約

契約車両が全損となった場合に、車両保険から支払われる保険金とは別に諸費用として保険金が支払われます。多くの場合、支払われる保険金は車両保険金額の10%の額(20万円限度)となっています。

自動車保険において全損とは、修理不可能なまでに壊れたという物理的全損以外に、修理費用が車両保険金額を上回る場合や車両が盗難されて発見されなかった場合も含まれます。

この特約で受け取った保険金の使い道は特に指定されていません。廃車にかかる費用に使っても新たに購入する車の登録費用などに使っても問題ありません。なお、上で紹介した新車特約(車両新価特約)を使う場合、再取得時諸費用保険金と車両全損時諸費用特約は重複して受け取ることはできませんのでご注意ください。

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まとめ

修理費用が車の時価相当額を上回っていた場合、自動車保険で補償されるのは車の時価相当額までです。それゆえ、事故相手とのトラブルに発展することもあります。

対物賠償において対物差額修理費用補償特約の契約があれば、車の時価額を超えた修理費用についても過失割合に応じて50万円を限度として支払うことが可能です。法律上の賠償責任はないものの事故相手とのトラブルを避けることができます。また、事故相手のためではなく自分の車両保険で利用できる特約を用意している保険会社もあります。各特約について、自動付帯となっている場合もありますが、そうでない場合は追加となる保険料などをもとに付帯するか否か考えてみましょう。


堀田健太

著者情報

堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。

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